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 結論から言うと、その長らく氷漬けにされてたヴィンテージモンスターたちはたいした強さではなく、俺たちにとっては楽勝の相手だった。たぶん、俺たちというか、俺一人でも楽勝っぽかった。


 まあ、それはいいんだが……、


「リュクサンドール先生、今こそ先生の始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスを使うときですよ! 一発ドカンとかましちゃまいましょうよ!」


 と、戦闘中、俺はひたすら近くの邪悪な呪術師を煽るはめになった。だって、こうでも言っておかないと、こいつ他の呪術使うもん。始原の観測者アビスゲイザー・ケイオス以外の呪術だと、間違いなく俺も巻き添えくらうもん!


「そうですかね? みなさん氷漬けにされていたんですから、まずは火葬の編み細工ウィッカーマンでこの場の空気をあたためて――」

「いや、そんな前座の漫才師みたいな気遣い無用っすよ! この場の空気をあっためるのは俺がやるんで、先生は素晴らしい完成度の術、始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスだけを使い続けてください!」

「そうですね。始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスが素晴らしい術であることには違いありません。ただ、ここは敵の数が多いですから、死蝕の幻影タナトスサイトで一網打尽にするのもよさそうな――」

「ちょ、だめだから! その術はここ向きじゃないから! 使うのやめようよ!」


 あれ、直撃したらマジきつかったんだが! 術を使っている間の姿を見なきゃいいんだけど、今までのパターンからして、こいつ絶対俺の視界内であのグロ術使うだろ! やめてえ!


「あ、そうだ。この敵が密集した状況でレティスを使うのも面白い――」

「いや、面白くないから! あんな狂った術使うな! 頼むから始原の観測者アビスゲイザー・ケイオス一本に絞ってくれ!」


 向かってくる敵を蹴散らしながら、俺はやつに土下座して頼み込んだ。器用だな、俺。


「では、冥府の番犬セルベロスはどうですか? 僕、今夜こそは色違いのレア個体が出そうな気がするんですよねー」

「まあ、犬を出すぐらいなら……」


 あいつらは基本的に敵しか襲わないみたいだからな。基本的にな。


「わかりました! ここは百戦錬磨のトモキ君の意見を尊重し、始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスときどき冥府の番犬セルベロスで戦っていくことにしましょう!」


 というわけで、俺は暗黒レーザーと三つ頭の犬が乱舞するなか、モンスターたちをゴミ魔剣で倒していったのだった。


 やがて、そんなこんなで敵はすべて片付いた。近くに動くものは一体もいなくなった。最初は俺とリュクサンドール以外も攻撃していたが、途中から俺たち二人だけの戦いになったようだった。


「お前ら、いくら敵が弱いからってさぼってんじゃねえよ」


 後ろで座り込んでいる変態女とクソバカ鳥男に振り返り、文句を言ったが、


「二人とも戦うのがすごく楽しそうだったし、邪魔しちゃ悪いかなって思ったのよ」

「オレも一応、ここでサキちゃんのおっぱい見ながら応援してたし?」


 と、ふざけた答えが返ってきた。なお、変態女は今は冥府の番犬セルベロスのレア個体のチワワ(通常色)を抱きかかえている。結局、レアは出たが色違いは出なかったみたいだな。というか、凶暴な性格のはずだが、この女にはよくなついているようだ。


「それにさあ、オレって弓使うじゃん? 弓って矢がいるじゃん? でも、矢って数に限りがあるじゃん? だから、なるべく使わないほうがいいに決まってるじゃん?」

「そうね、ヒューヴ。あなたの攻撃手段は数に限りがあるんだから、ここは無限の筋力と魔力を持つ人たちに任せて正解よ」

「だなあ。オレマジ頭よすぎかー」


 バカはにへらーと、バカっぽさ全開の笑みを浮かべた。まあ、理屈はわからんでもないが、やっぱむかつくなあ。


「……まあいい。敵は全部倒したんだから、とっとと先に進もうぜ」


 俺は近くの亀妖精に言った……が、


「それがのう。まだ一人残っておるみたいでのう」


 と、何やら困惑したように亀妖精は言った。


「まだ一人? ここの氷漬けにされてたモンスターは全部片づけたはずだろ?」

「残っているのは、それを作った術師だと思うわよ」


 と、変態女が大氷結の間の隅を指さし、そっちに照明魔法の光を向けた。


 するとそこには、確かに一人の人影があった。若い女のようだった。


「……彼らを瞬殺するとは、あなたたち、たいした強さの持ち主のようね」


 謎の女はゆっくりとこっちに近づいてきた。

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