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「で、あの扉の向こうにある遊具とやらは、どうやって遊ぶものなんだよ? ルールを教えてくれよ」
「ああ、ルールは極めてシンプルだ。扉に入ったら、ただまっすぐゴールまで突き進めばいい。五分以内にゴールできればクリアだ」
「五分か。ゴールとやらはちゃんとわかりやすく設置されているのか?」
「それはもちろん。ただ、これはパーティーゲーム用なので、必ず四人が同時に、かつ別々の扉に入らなくてはいけない」
「なるほど。だから四つの扉があるんだな」
そこに俺たちが一斉に入って、それぞれ五分以内にゴールに到着すればクリアか。やっぱ簡単だな、こりゃ。
「なお、遊具そのものを故意に破壊する行為は反則だ。その時点で失格となり、クリアの権利を失う」
「わかってるさ、それぐらい。ルールとマナーを守って楽しくデュエル! ダイレクトアタックはNGだぜ!」
そうそう、あくまで遊具なんだからな。楽しく遊ばなきゃだめだよね。
「よーし、そうと決まれば、早く行こうぜ!」
俺は他の三人に呼びかけ、言われた通りそれぞれ別の扉に、同時に入った――ら、いきなり真下に落ちてしまった!
「ほ、ほわああああっ!」
いきなり床がなくなって落とし穴になっているとか、しょっぱなからなんというベタな罠。俺は間抜けな叫び声を上げながら、そのまま真っ逆さまに穴の下に落ちていく。そして、底にまるで剣山のように設置されている槍の上に落ちて串刺しに――、
「なるわけはないか」
まあ、普通にその上につま先を立てて着地したわけだった。足先がほんのりチクチクする程度の微ダメージだ。
「ほう、この高さから落ちてまったくの無傷とは、お主やるのう」
と、上から亀妖精も降りてきた。
「お前、何で一緒に来たんだよ。来る必要ねえだろ」
「なーに。四人の中でお主が一番、こういう障害物競争が苦手なようじゃからの。助言くらいはしてやろうと思っての」
「そんなの別にいらねえし! つか、なんで俺が一番できない子みたいになってるんだよ!」
「実際、お主は今、穴の底まで落ちたじゃろ?」
「そうだが?」
「お主以外は穴の底まで落ちんかったのじゃ」
「え」
「お主以外はみんな自力で飛べるようでのう。すぐに穴から脱出して先に進んでしまったのじゃ」
「なん……だと……!」
そういえばそうだった。あの四人の中で、空を飛べないのは俺だけだという事実!
「おそらくお主は、殴る蹴る斬る突く叩く投げ飛ばす潰す射るなどの戦闘能力は極めて高いのじゃろ。ぶっちゃけそれしか取り柄がないのじゃろ? じゃが、ここではそういう破壊行為は禁止じゃ。つまり、四人の中では、お主が最も不利な状況じゃろう」
「く……」
反論したいが、その通り過ぎて何も言葉が出てこない。ああ、そうだよ。どうせ、俺は戦うことしか能のない脳筋だよ!
「うっせーな! 俺の身体能力の高さを甘く見るなよ!」
すぐにそこから近くの壁にジャンプし、さらにGK若島津君みたいに三角跳びしながら穴の外に出た。そこは狭い通路のようになっていた。
「うおおおっ、一番にゴールするのはこの俺だ!」
そして、そのまま扉とは反対方向、ゴールと思われるほうに走った。他の三人、特に、ヒューヴとリュクサンドールにだけは負けてたまるかっ!
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