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「そこをなんとか! どうかお願いします、ベルガド様!」
俺は亀妖精に土下座して必死に頼み込んだ。もはやなりふり構っていられない。こいつだけが俺の最後の希望だったのだ。
「そうじゃのう……。お主たちの働きによっては、なんとかならんこともないかのう?」
「マジか!」
土下座してみるもんだな、おい!
「じゃあ、俺たちは何をすればいいんだよ? なんでも言ってくれ! なんでもするから!」
「まあ、落ち着け。ようは、ワシが少しばかり現役時代の力を取り戻せば済む話じゃ」
「はあ」
現役時代、ねえ? スポーツ選手か何かかよ。
「よいか、お主たちはこれから、このベルガド中央にあるガウラ山に向かうのじゃ。その中腹にある『咆哮の滝』で、ワシは待っとるでの」
「滝? そこに行くだけでいいのか?」
「ああ。しかし、条件がある。そこでの用をすませるためには、四人のツワモノが必要じゃ」
「四人か」
俺はふと、周りの仲間たちを見回した。ユリィはさすがにツワモノとは言えないが、他はみんなそれなりに強いはずだし、四人以上いるし、このメンバーでそのまま行っても問題なさそうだった。
「……では、ワシは一足先に『咆哮の滝』に行くでのー」
と、亀妖精は上に舞い上がった。
だが、そこで俺はとても重要なことを確認しておかなくてはと気づき、「待ってくれ!」と、あわてて亀妖精を呼び止めた。
「なんじゃ? まだ何かあるのかのう?」
「ああ。あんたが人間に与える祝福ってやつのことだよ。その効果について詳しく聞きたいんだ」
そう、それが本当に俺の呪いを解けるものなのかどうか、俺にとってはとてつもなく重要なことだった。
だが、亀妖精のやつは、
「すまんのう。それについては何も答えられない決まりになっておるのじゃ」
としか言わなかった。
「いや、そこをなんとか! お願いします!」
「まあ、ワシとてお主の事情はわからんでもないが……。さっき見させてもらった他の者たちの記憶によると、お主は、たちの悪い呪いを解くために、ワシの祝福をあてにしてるんじゃろ?」
「そうです! まさにその通りでございます!」
「じゃが、それでも言えんのじゃ。ワシの祝福がお主の呪いを解けるかどうかは」
「なんでだよ!」
「祝福の効果について誰彼構わず詳しく説明すれば、やがて多くの人々がワシに祝福を与えてほしいと集まってくるじゃろ? そんなのめんどくさいだけじゃろ? だから、ワシ、昔から祝福の効果について、誰にも話さんようにしとるんじゃよ。祝福を与えた人間にも固く口止めしてのう」
「な、なるほど……」
説得力しかない答えだ。
「じゃが、一つだけ確かなのは、それぐらいワシの祝福は効果絶大で強力なものだということじゃ! あとは、自分で判断するんじゃな! 粗暴で礼儀を知らぬ男、トモキとやら!」
亀妖精はそう言うと、夜空の彼方に飛んで行ってしまった。
「自分で判断しろ、か……。ようはあいつの祝福の効果を信じるかどうかってことか」
俺は少しの間、やつが飛び去って行った夜空をじっと見た。
「まあいい。今の俺は前に進むしかないんだ。他にあてもないし、すぐに『咆哮の滝』ってところに行くぜ!」
俺はみんなを見回し叫んだ。みんなも、そんな俺に大きくうなずいた。
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