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その後、ユリィはもう一度謎の光の玉を出したが、その直後に寝落ちしてしまった。まあ、慣れないことしたからしょうがないか。俺は寝ているユリィをかかえて、自室を出て、ユリィの部屋に運んだ。そして、自分の部屋に戻り、眠った。
やがて翌朝になり、俺たちはさっそくワンダートレントとやらを探しに行くことになった。
……のはいいんだが、
「なーなー、アル。オレも連れて行けよ。絶対役に立つからさー」
と、鳥人間のバカが約一名、俺にまとわりついてきてうざかった。
「ヒューヴ、気持ちはありがたいが、お前はここに残ってろよ。まだ保釈中の身なんだから」
そうそう、足手まといになる予感しかない世紀末バカについてこられても困る。
だが、
「あ、そのオレのホシャクってやつなら、シャンテちゃんが何とかしてくれたからもうナシになったらしいぜ?」
「え?」
たった一日で? 意味が分からんぞ!
「それはいったいどういう……」
「なんかさー、シャンテちゃん、魔法の通信でヒガイシャってやつに連絡とって、お金払って、コクソってやつを全部取り下げてもらったらしいぜ?」
「金で被害者全員の示談を成立させたのか」
一晩でか。ジェバンニもびっくりの早業だ。
「で、なんかオレ、フキソショブンってやつになって、無罪になったっぽい?」
「いや、不起訴処分は無罪とは違うぞ、確か?」
「細けーことはどうでもいいじゃん? オレ、もう捕まらなくなったんだから、ラッキーじゃん!」
「まあ、確かにラッキーだな」
頭の中も実におめでたい感じだしな。
「というわけで、オレはもう自由なんだぜ? お前がオレと一緒に行きたくないって言っても、オレは勝手についていくぜ? なんせ、自由なんだからなあ」
「わ、わかったよ! お前と一緒に行ってやるよ!」
ここまで言われちゃ、さすがに断り切れなかった。このバカ、身体能力だけは無駄に高いから、俺一人ならともかく他の三人と一緒の状態で追跡を撒けるとは思えんし。
「おー、そうか。さすがアル。話がわかるー。他のみんなも、これからオレのことよろしくな!」
テレレッテテー♪ ヒューヴが仲間に加わった!(ゲームの加入イベント風)
その後、俺たちはすぐに準備を整え北東の森に出発した。さあ、楽しいタケノコ狩りの始まりだ……じゃねえか。
だが、その道中、キャゼリーヌはふとこう言うのだった。
「実は、ワンダートレントの生息地と思われる場所までには、とある不吉な名前の谷があってな」
「不吉な名前の谷? なんだよ?」
「その名も、『ヤギ殺しの谷』という」
「へ、へえ……」
やべえ。なんかもう、名前聞いただけでどういう谷か半分わかっちゃったんですけど、俺。
「一応聞くが、やっぱりそれって、ヤギでも登れずに落ちて死んじゃうほど厳しい谷っていう意味なのか?」
「ああ。さすが勇者どのだ」
「どうも……」
やっぱりそれで当たってた。俺、思考が軽くヤギナイズ?されてるのかなって。
で、そんなヤギナイズ俺の考えだと、当然俺たちと一緒にいる野獣は……。
「『ヤギ殺しの谷』とは、なんという傲岸不遜極まりない名前の谷なのだろう! ぜひ俺の蹄で踏破し、命名者のおごり高ぶりを粉砕したいものだ!」
などと、鼻息を荒くしている。
「いや、谷なんだから登らなくていいだろ。飛び越えればいいだろ」
「何をたわけたことを言っている、トモキ。谷だろうと崖だろうと岩山だろうと伝説の勇者だろうと、目の前に力強く屹立しているものがあれば、登るのが礼儀だろう!」
「だから、谷なんだから、『目の前』には登る壁はないだろ!」
礼儀ってのもよくわからんし。どさくさに俺を崖その他と同列に語るし。
「おお、そうだ。登るといえば、忘れていた」
と、そこでヤギはそこで俺の頭の上にひょいと飛び乗った。
「ヒューヴ、俺はこのように、俺が力強いと認めたものにはとりあえず登るようにしている。登ってみれば、蹄ごしにその本当の実力がわかるからな」
「へえ、ヤギを頭にのせると強いってことになるのかー」
と、、野獣とバカは微妙にかみ合わない会話をしている。
「お前も相当な手練れだろう。ぜひ、俺の蹄を受け入れ、それを証明してほしい!」
「ああ、いいぜ。オレ一度、ヤギを頭にのせてみたいって思ってたしなあ」
と、また謎会話しながらも、ヤギは俺の頭からヒューヴの頭に飛び移った。
そして、
「おお、確かに、この蹄からお前の力強さを感じるぞ!」
ヒューヴの頭の上で足踏みしながら、何やら上機嫌のヤギだ。
「なーなー、アル。これ、めちゃくちゃ重いんだけど、やっぱこいつ食うべきじゃね?」
「これは俺たちの仲間になるための儀式みたいなもんだ。ちょっとぐらい我慢しろ」
一方、ヤギの頭の下では、こうささやきあう俺たちだった。
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