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その後、俺たちは懸賞金受け取りの手続きなどを済ませると、警察署を出て、シャンテリーデの館に向かった。ベルガドの祝福について話をしてくれるのだというし、俺としてはその招待を断る理由はなかった。
館は、クルードの街のはずれの林の中にあった。スーパースターの住まいというだけあって、大きく立派なお屋敷だった。
また、その屋敷の使用人はすべて、シャンテリーデと同じように四枚のカラフルな翼をもつ
「さあ、こちらへどうぞ、勇者様。ジーグ様」
屋敷に入ると、シャンテリーデは俺たちをすぐに客間と思われる広々とした部屋に案内した。屋敷の内装は、外観同様に立派できらびやかだった。
「じゃあ、さっそくベルガドの祝福について聞かせてもらおうか」
シャンテリーデと向かい合ってソファに座ったところで、俺は単刀直入に切り出したが、
「そのお話の前に、まずはわたくしとジーグ様の関係についてお話しておいたほうがいいと思いますわ」
シャンテリーデは自分の隣に座ったヒューヴにもたれかかりながらこう言うのだった。そのおっぱいを胸板に押し付けられて、ヒューヴは相変わらずニヤニヤしている。
「関係ってなんだよ? あんたら、実は親戚とかか?」
「……だとしたら大変光栄なお話ですが、残念ながらそうではありませんわ」
「残念、か?」
いや、こんなバカ種族と同じ血が流れてないのはむしろ喜ぶべきことだろ。
「実は、わたくしの先祖が、三百年前、ジーグ様に大変お世話になったそうなのです」
「へえ、シャンテちゃんの先祖がオレにねえ」
と、ヒューヴは他人事のように言った。この感じじゃ、その件に関しては何一つ覚えてなさそうだ。
「ジーグ様はまさにわたくしの先祖の命の恩人だと聞いております。ですから、わたくし、もしジーグ様がまだご健在でいらっしゃるのでしたら、ぜひお会いしてお礼をしたいと常々思っておりました」
「そっかあ。シャンテちゃんはそれで、オレをホシャク?ってやつで助けてくれたんだあ」
「いいえ、あれぐらい、あなた様をお助けしたうちには入りませんわ」
シャンテリーデは優美に笑って言う。確か、ヒューヴ保釈金の額は二千万ゴンスだったはずだが、そんな大金をポンと出しておきながら「助けたうちには入らない」ですって。筋金入りの金持ちか、この女?
「で、オレ、シャンテちゃんのご先祖に何したの?」
「ジーグ様はわたくしの先祖の命をお救いしたそうですわ」
「命の恩人かあ。やっぱすごいなあ、オレ。シャンテちゃんのご先祖だし、きっとシャンテちゃんと同じくらいきれいな女の子だったんだろうなあ。そんなの助けるしかないよなあ。えへへ」
ヒューヴはすっかりデレデレになっている。その顔は整ってはいるが、最高に知能が低そうだ……。
「なあ、あんたはきっと、ずっと前から伝説のジーグ様ってやつにあこがれてたんだろうけど、その実物がこんなやつでよかったのか?」
と、思わずシャンテリーデに尋ねずにはいられない俺だったが、
「はい。実際お会いしてみて、ジーグ様はやはり素晴らしいお方だったと改めて思いましたわ」
シャンテリーデはバカ全開の男に、とても満足しているようだ。
「……勇者様、ああいう男って意外とモテるらしいぜ?」
と、そこでザックが俺に耳打ちしてきた。
「ああいう男ってなんだよ。あんなのただのバカだろ?」
「いや、女の目から見ると、あれぐらい頭がユルい男のほうが母性本能をくすぐられるらしい」
「ぼ、母性本能だとう……」
マジか! そんなモテテクニックがあったのか!
「逆に、頭が良すぎてなんでも理屈っぽい男は、女から嫌われるらしいぜ?」
「あ、それはなんとなくわかる」
いわゆるロジハラ男ってやつだな。女は常にふわっとした感情で生きてるもんだから、その矛盾を正論で指摘すると嫌われるという。
「そういや、あいつ、昔から女と遊んでばかりいたな。顔がいいから女にモテているだけだと思っていたが、もしかしてバカなのもモテる要素だったのか?」
「当たり前だろ。イケメンの陽キャのバカなんて、女受け最高に決まってるぜ?」
「さ、最高なのか……」
ぐぬぬ。俺は残念ながらイケメンでバカでもないから、その高みには到達できない。くやしい!
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