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それから俺たちは思う存分飲んだり遊んだりして、おっパブ「ももいろネクタル」で過ごす夜を楽しんだ。そのあいだ、俺は学者先生に何度かヒューヴと会ったときのことを尋ねたが、記憶はやはり戻らないようで、何の情報も得られなかった。
やがて俺たちは店を出て、宿に戻った。
そして翌朝から、再びヒューヴ捜索を再開した俺たちだったが、今度向かったのはクルードの街のあちこちにある代筆屋や古書店などだった。そう、俺なりにこう考えたのだ。
「いいか、あいつは金欠らしいし、お宝目当てで古文書を盗んだのは間違いない。ただ、あいつは相当なバカだ。ギリギリ読み書きできる程度のバカだ。そんなやつが三百年前の古文書を自力で解読できるはずがない。おそらく、どこかの誰かに頼って古文書を解読してもらおうと考えるはず――」
というわけで、それっぽいところを回って、そこにヒューヴが現れたかどうか確認した俺たちだった。
が……、
「ヒューヴのやつ、いったいどこに行ったんだ!」
結局、半日探し回ってその足取りは一切つかめず、往来の真ん中でこう叫ぶことになった俺だった。古書店などのほか、図書館にまで聞き込みに行ったというのに。
「他に、古文書解読ができそうな場所は、大学ぐらいしかねえぜ?」
と、ザックが俺に言う。
「まあ確かに、大学なら可能だろうが、あいつがいくらバカでもさすがに盗みに入った場所に戻るとは思えん……」
なんせ、あいつは半分動物みたいなもんだからな。やばそうな場所には本能的に近づかないだろう。野生の勘ってやつで。
「じゃあ、ヒューヴさんという人は、自力で古文書を解読できたのではないでしょうか?」
「うーん、それもどうかなあ?」
ユリィの言葉に首を振る俺だった。人並みの知性と教養のある男に対してはそう考えることもできるが、よりによって相手はアレだしな。
「俺が知っているあいつは、底抜けのバカなんだよ。それがお宝のありかを記した古文書を手に入れて、なおかつそれが読めないとなると……意外とすぐにそのことを忘れて、なかったことにするかもな?」
「えっ、あれだけ派手に盗みに入ったのに?」
と、ユリィは俺の言葉にびっくりしたようだったが、
「それが底抜けのバカってことだよ。俺の知っているヒューヴはそういうふうに考えてもおかしくない男だった」
と、俺はうなずいた。そう、バカゆえにすべての判断が浅く軽く、短絡的、近視眼的。ゆえに時に、常人では考えられないような行動に出るのだ。
「ただ、例の古文書のことを忘れたとして、あいつはいったいどこに行ったんだ?」
と、俺がなかば独り言のように疑問を口にすると、
「やつは金がなくて困っているのだろう。だとしたら、行きそうな場所は限られるのではないか?」
と、ヤギが答えた。
「なるほど、またどこかに盗みに入るってわけか?」
「いや、今日俺たちが街を回った限りでは、有翼人の男が金品を盗んだという事件は起きてなかっただろう。それに、これはあくまで俺の勘だが、あの男は積極的に悪事に手を染めるタイプではない気がする」
「いや、あいつ極悪人だろ。手配書だって出回ってるし」
「トモキ、お前とて、かつては手配書が出回っていたのではないか?」
「う」
「トモキ、お前は極悪人か?」
「う、うっせーな! わかったよ! 確かに、俺の知っているあいつはそう悪いやつじゃなかったよ!」
底抜けのバカゆえに、話が通じないことがたびたびあったけどな。
「……では、もしかするとやつは今、犯罪以外のまっとうなやり方で金を手に入れようとしているのではだろうか?」
と、今度はキャゼリーヌが言った。
「いや、そんなすぐに金が手に入る方法なんてあるはずが……って、あったよ、一つだけ!」
俺はぽんと手を叩いた。
「あいつはバカだが射撃の腕はピカイチだ。ザレの村に行ってトレハンやれば、すぐに金は稼げるだろう」
「ああ、なるほど!」
俺の言葉に俺以外のみんなはうなずいた。そもそもハンターなんて荒くれ稼業、金に困っているやつのする仕事だしな。
俺たちはすぐにクルードの街を出て、ザレの村に行った。そして、例のトレジャーハンター協会に駆け込んだ。
するとそこには、
「新規登録の方はこちらに必要事項の記入をお願いします」
「はいはい。ここね」
と、受付の女に言われるがまま、書類に何か書いている有翼人のバカ、ヒューヴの姿があった……。
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