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と、そこで、
「あ、あの、キャゼリーヌさん。そういう役目は同性のわたしが代わりに……」
ユリィが俺たちのところにやってきた。珍しいこともあるもんだ。普段は人の会話に割り込んできたりなんて、しないやつなのに。
「おお、そうだな。こういうことは、同じ女同士のほうがわかりやすいものだろう」
と、キャゼリーヌはすぐに俺の手をはなし、ユリィの手をつかんだ。そして、さっきまでの俺と同じようにその手を自分の胸に押し付けた。
「どうだろうか、ユリィどの? この乳房がカラクリでないことは理解してもらえただろうか?」
「はい。それはよく……わかります……」
ユリィは恥ずかしそうに目をパチパチさせながらうなずいた。同性とはいえ、いきなりおっぱい触らされちゃ、戸惑うのも無理はないか。
「ふむ。しかし、この検証法はよくよく考えると片手落ちというものだな?」
キャゼリーヌはふと、ユリィの胸元をまじまじと見つめながら言った。
「同じ女同士なのだし、やはりここは、お互いの部位の感触をお互いの手で直接確かめ合うほうがよいだろう」
と、言うやいなや、今度はいきなりユリィのおっぱいをわしづかみにするキャゼリーヌだった!
「きゃっ!」
「ほほう、これが人間の女の、本物の乳房の感触というものか」
もみもみっ! 片手落ちがどうとかとか言ってたくせに、思いっきり両手でユリィの左右のおっぱいを揉みしだく女だった!
な、なんというけしからん光景……。
俺は瞬間、かっと体が熱くなった。勇者は激怒した! 必ず、目の前のセクハラ行為を除かなければならぬと決意した。勇者には女というものがわからぬ。勇者は童貞である。前世はひたすらモンスターを倒し、生まれ変わってからはひたすらゲームアニメで遊んで暮して来た。けれども性的な事案に対しては、人一倍に敏感であった――って、ようするに俺は今「走れメロス」の冒頭ぐらい、キレた! このぽっと出のメカ女、俺のユリィに何してくれてやがるんじゃい、ボケッ!みたいな気持ち?
しかし、熱くこみあげてくるのは純粋な怒りばかりではなかった。そう、怒りと同じくらい幸せな気持ちもあった。だって、キャゼリーヌに不意打ちでおっぱいを揉みしだかれているユリィときたら……すごくエロかわいいんだもの!
「あっ、や……キャゼリーヌさん、そんなに力を入れちゃ、だめ……」
ユリィはキャゼリーヌに乳をもまれながら、顔を赤らめ、身をくねくねさせている。おお……ユリィのやつ、なんていやらしい顔をしているんだろう! 乳を責められると、そんな顔になっちゃうのか、お前は!
乳をもんでいるのが俺ではないのが非常に残念だが、これはこれで眼福で、素晴らしい眺めのような気がしてきた。こんなエロいユリィを間近で見られる俺は、きっと特別な存在なのだと感じました……えへへ。
「ゆ、勇者様、俺たちはあれをどんな気持ちで見ればいいんだぜ?」
と、気が付くと、ザックが俺の隣に来ていて、落ち着きなさそうにユリィたちの様子を見ている。
「いいから、お前は黙ってろ。あいつらは今、ハートで通じ合ってんだよ」
「ハートで……そ、そうか! あれが
イキリチビは俺の適当な答えに、何か深く納得したようだった。急に襟を正すように、その場に正座し、ユリィたちの様子を真剣な目で見つめ始めた。
俺もどうせウォチするなら姿勢を正したほうがいいかなと思い、正座した。そんな俺たちの前ではユリィがキャゼリーヌに乳を揉まれながら、あえいでいた。
なお、ヤギは焚火の前で寝ているだけだった……。
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