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「おい、そこの謎メカ。勝手にデタラメな変形してないで、少しはこっちの話を聞け――って、うわっ」
ガガガガッ! 突然謎メカが機銃を発砲してきたので、俺はあわててそれをよけた。さっきまでただのツルツルの円盤だったくせに、いつのまにそんな物騒なもん出してんだ、コイツ。変形で大きさも五倍ぐらいになってるし。自由過ぎかよ。
「シンニュウシャハ、スミヤカニ、ハイジョシマス……」
と、再び謎メカは機銃を発砲してきた。当然、俺も再びそれをよけ……ようとしたが、その直前で近くにユリィたちがいることに気づき、やめた。俺がよけたらユリィに当たるかもしれないからな。
ただ、機銃からの銃弾を柔道の受け身で受けてもそれなりに痛そうなので、ゴミ魔剣を素早く動かし、弾を全部はじき落とした。
「お前、メカのくせにいきなり人間を攻撃するとか、どういう了見だよ。ロボット三原則って知ってるか?」
「シンニュウシャハ、スミヤカニ、ハイジョ――」
「あー、はいはい、わかったよもう。この世界にアシモフ先生いなかったよな、そういえば」
考えてみれば、メカ相手に説得とかあほらし。俺は直後、その謎メカに近づき、ボディにゴミ魔剣を振り下ろした。こんなコミュ障のポンコツはとっとと壊すに限る。
だが、その俺の斬撃は謎メカのボディを両断することはできなかった。刀身がボディに当たる直前に、うっすら光る透明の壁のようなものが現れ、俺の攻撃を防いだのだ。まるでバリアだ。
「なんだこれ?」
とっさに謎メカから離れてすぐに体勢を立て直した俺だったが、わけがわからなかった。この感じはまるでレジェンドの物理障壁だ。いやでも、今目の前にいるのは明らかにレジェンド・モンスターではなく、謎の機械……。
と、そこで、
「『ナンダコレ?』トハ、タダイマキドウシタ、アンチフィジカルバリア、へノ、シツモンデショウカ?」
謎メカが何か言い始めた。
「コノ、オルトロスBF-N98、ヒトニヤサシク、セカイニヤサシクヲ、モットーニセッケイサレテオリマス。ドンナカタカラヘノ、シツモンモ、シンシニウケタマリマス」
あれ? なんか解説してくれるらしいぞ?
「じゃあ、そのアンチフィジカルバリアってのは何なのか、教えてくれよ」
「ハイ。ソレハモチロン、アンチナ、フィジカルナ、バリアデゴザイマス」
「答えになってないんだが……」
やはりこの謎メカ、コミュ障か。
『マスター、アンチフィジカルって名称からして、物理攻撃をはじくバリアなんじゃないですかネー?』
と、ゴミ魔剣が言った。なるほどなるほど……って、
「お前、何のん気に解説してんだよ! 魔剣のくせに、なんでそんなバリアに攻撃防がれてんだよ!」
そうそう、こいつは無駄に多機能だが、本来は敵のバリアを破るためのものだったはず。
『イヤイヤ? ワタシはあくまでレジェンド・モンスターの物理障壁を破るためのモノですヨ? 規格の違う、それ以外のバリアには対応してませんので?』
「似たようなもんだろうがよ」
こいつ、本当肝心な時に役に立たねえな。何が規格が違う、だよ。それぐらい気合でなんとかしろや。
「……ホカニ、シツモンガ、ゴザイマセンヨウデシタラ、シンニュウシャハイジョサギョウヲ、サイカイシマス」
と、謎メカは今度はボディから太い砲身を出してきた。そして、そこからレーザー光線をこっちに飛ばしてきた!
「わ!」
俺はともかく、このままでは近くにいるユリィが危ない! とっさに、そばに立っていた不死族の男をつかんで盾にし、それでレーザーを防いだ。ふう、危ない危ない。
「何するんですか、いきなり! 熱いじゃないですか!」
一瞬黒焦げになったものの、即座に元通りに復活し、文句を垂れる盾だった。
「うっせーな。急に攻撃されたんだから、しょうがないだろ。文句ならあのポンコツに言えよ――」
と、そこでまた謎メカからレーザーが発射されてきたので、俺はすかさずその男の影に隠れた。遮蔽物があるって便利だな、はは。耳障りな断末魔の悲鳴が聞こえてくるのがちょっとアレだが。
「おーい、そこのオルトロスとかいうポンコツ! 攻撃ばっかりしてないで、少しは自分のことを説明したらどうだ?」
一応まだ言葉は通じるようなので、盾の後ろからダメもとで呼び掛けてみた。
「お前はいったい何なんだよ?」
「『イッタイナンナンダヨ』トハ、コノ、オルトロスBF-N98ヘノ、シツモンデショウカ?」
と、謎メカはまた攻撃を中断して解説モードに移行したようだった。
「コノ、オルトロスBF-N98、ヒトニヤサシク、セカイニヤサシクヲ、モットーニセッケイサレテオリマス。ドンナカタカラヘノ、シツモンモ、シンシニウケタマリマス」
「いや、それはもう聞いたから! お前、アンチフィジカルバリアってので物理攻撃には強いんだよな? 他の属性の攻撃はどうだ? 魔法攻撃にも強いのか?」
「コノ、オルトロスBF-N98ハ、マホウテキナ、ナンヤカンヤフシギパワーガ、イリミダレルバショデノシヨウヲ、ソウテイシテツクラレテハ、オリマセン」
「魔法に対応してない?」
「ハイ。コノ、オルトロスBF-N98ハ、ブツリテキナコウゲキニハ、メッポウツヨク、ツクラレテオリマスガ、マホウコウゲキニハ、テンデヨワイ。デンキニヨワイ、ホノオニヨワイ、ミズニヨワイ、ツメタイノニモヨワイ、アツイノモニガテ、ユアツヒクメデ、チョッピリアサモヨワイ」
「弱点だらけじゃねえか……」
しかもなぜそれを教えてくれるんだ。親切かよ。
「ハイ。コノ、オルトロスBF-N98ハ、ブツリテキナコウゲキニタイシテノミ、ボウギョセイノウヲ、トッカシテツクラレテイルノデ、ソレイガイノコウゲキニハ、タイオウシテオリマセン。シタガッテ、ブツリテキナコウゲキイガイニヨル、ハソンハ、ホショウキカンナイデアッテモ、ムリョウデ、シュウリヲウケタマワルコトハ、デキマセン。ゴリカイクダサイ」
「修理受け付けてるサポートセンターとかあるのかよ、お前」
ますますわからんメカだ。
「つまり、物理攻撃以外の攻撃手段なら、このポンコツはサクッと倒せるのか」
「そうですね、トモキ君。僕の
と、気が付くと、物欲しげに目を輝かせて俺を見ている盾だった。
「さあ、遠慮なく僕に頼んでください、
顔をずいずいと近づけて、これでもかとアピールしてくる男だった。うぜえ。確かに今はこいつの魔法に頼るほうがよさそうだが……うぜえ!
「いや、今はいい」
あまりにもうざいので、そう言うしかなかった。
「え、なんでですか! あのカラクリ、自分から魔法に弱いってバラしてたじゃないですか! だったら――」
「いいんだよ、あんなクソポンコツ、俺一人でなんとかならぁ!」
そうだ、こんなやつの力なんて、借りてたまるか。もちろん、ヤギとかルーシアとか他のやつの魔法もだ。たとえ物理攻撃に対して防御リソース全振りだとしても、あんなポンコツ、俺一人で、余裕で倒せるに決まってるだろうがよ!
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