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その後、俺たちはすぐにクルードの街をはなれ、すぐ近くのザレという村に向かった。ベルガドについてそれなりに下調べしてきた俺は、そこをしばらくは活動の拠点にするつもりだった。
そう、そこには、ベルガドトレジャーハンター協会とやらがあるらしいのだ。
「トレジャーハンター協会? そこでいったい何をするつもりですか?」
ザレへ向かう道中、その計画を話すと、当然のようにユリィは尋ねてきた。
「そんなの決まってるだろ。新規にハンター登録して、素材集めて金稼ぐんだよ」
「え? ただお仕事するだけなんですか?」
「そりゃもちろん、金は大事だからな。これから何をするにせよ、あればあるだけいいに決まっている」
ドノヴォン国立学院に編入するのにかなり使っちまったからな。あのカロンとかいう女にも何気にいっぱい金巻き上げられていたし。リュクサンドールのツケをなぜ俺が払わなくちゃいけないのか。まあ、そのお礼のように、「カロンより」とメッセージカードが添えられた小さな貯金箱がプレゼントされていたけれども。銀行の粗品かよ。
「それに、トレハンって響きが素晴らしいだろう。なんかこう、男のロマンをくすぐるような?」
そう、かつて冒険者としてブイブイ言わせてきた(死語)俺の腕が鳴るってもんよ! 久しぶりだし、いっぱいクエスト受注しちゃうもんねー。
やがて、目的地のザレの村についた。クルードと同じく湖沿いにあり、けっこうでかい漁村だった。なお、ベルガドで一番栄えているクルードの港町にトレハン協会がないらしいのは、治安維持のためらしい。おそらくベルガドの正面玄関にあたるような町に、冒険者崩れのならず者たちが集まるのは困るのだろう。
ただ、今は入国制限されているせいか、トレハン稼業をやっていそうな者たちは、ザレの村にはそこまで多くなさそうだった。これはお仕事も期待できそうですぞ。すぐに村の中央にある「ベルガドトレジャーハンター協会」と看板が出ている建物の中に入った。
入ってみると、そこはほぼほぼ冒険者ギルドと同じ作り、システムになっているようだった。
そう、受付係のいる窓口が一つあって、それ以外のスペースは待合室のようなものになっており、そこらの壁や衝立には、依頼の内容が書かれた紙が貼ってある。これらの中から好きな仕事を選んで受注する仕組みか。
まあ、まずは新規会員登録だな。俺たちはまっすぐ受付に行って、受付係の女に声をかけた。眼鏡をかけた地味な女だった。
「うわあ、お客さん新規登録ですか。すごい久しぶりー!」
受付係の女は、俺たちを普通に歓迎してくれたようだった。よかった、誰かの紹介とか必要なさそうで。
「たぶんもう知ってると思うんですけど、一応簡単に説明しておきますね。このベルガドトレジャーハンター協会っていうのは、他の国のいろんな商工ギルドと契約していて、そこにベルガドでしか採れない素材を提供するための場所なんです。ここで買取りをしている素材は随時変わりますけど、そこらに貼ってあるので、値段と一緒に確認してくださいね。あ、もちろん買取の値段も随時変わります。依頼も基本的に早い者勝ちなんで、そこんとこよろしくお願いします」
「はーい」
俺たちは書類に必要事項を書きながら、適当にうなずいた。やはり冒険者ギルドと同じくわかりやすいシンプルなシステムのようだ。まあ、あくまで素材買取の場所であって、討伐クエストみたいなのはなさそうだが。
新規登録はすぐ終わった。身分証のようなものは必要はなく、スーパーのポイントカードを新規に発行するぐらいの手軽さだった。よし、これで今日から俺たち、ハンターだ! うひょー、稼ぎまくるぞー!
「あ、あと、言い忘れてましたけど、ここで買取している素材は基本、危険なモンスターが生息する場所にしかないです。なので、新人ハンターさんたちは帰らぬ人になることが多いんで、トモキさんたちも気を付けてくださいね」
「おうよ!」
俺は新人用のマニュアル(わりと分厚い)を受け取りながら、威勢よくうなずいた。ここにはまだ危険なモンスターがうじゃうじゃしてるんですって! ますます腕が鳴るじゃないか!
「それで、まずはどのへんに採取に行きますか? 新人さんなら、ここから少し離れた場所にある沼への採取が比較的安全でおすすめ――」
「とりあえず、ここに貼ってあるクエスト全部受注で!」
「え」
「あ、もちろん地図もつけてくれよ。俺、ベルガドのことよく知らないからな」
「は、はあ」
受付係の女は、大丈夫かなあという顔をしながらも、俺の言うとおりにしてくれた。すぐにここで買取をしている全ての素材のリストとその採取場所、それに近隣の地図を俺に手渡した。
「よーし、行くぜ! ガンガン稼ぐぜ!」
俺たちはそのまま外に飛び出した。
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