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それから、俺たちは本当の意味でその場で休憩することにした。今までの乳をまさぐる、じゃなかった、乳をめぐるやり取りはいったい何だったのか。いやまあ、今も俺の目の前にあるわけですけどね、たわわなおっぱい!
「……そういえば、この島ってベルガドっていうレジェンド・モンスターなんですよね」
苔の上に腰を落としながら、ふと、そのたわわなおっぱいの主のユリィが言った。
「話には聞いてましたけど、なんだか信じられない気持ちです。船から見たときは、ここが一つの生き物の背中だなんて、とてもそんなふうには見えなかったのに」
「確かになあ」
俺も船から見たときには、ここはただの南国風の島にしか見えなかった。実際上陸してみてもそうとしか思えない。それが実は巨大なモンスターだなんて、言われなきゃわからないぜ。
「本当に、ベルガドの祝福というのは見つかるんでしょうか?」
ユリィはふかふかの苔をさすりながら言う。
「あのあと、わたしも図書館の本を読んだりして調べてみたんですけど、確かにそう呼ばれるものは存在するみたいなんです。でも、それがどういうものかは、やっぱりよくわかってないみたいで」
「まあ、それが俺の呪いに効くかどうかはわからんよな」
思えば、そんな適当な話を信じて、よくここまでやってきたもんだ、俺たちは。はは。
「ただ、今のところ、頼れそうなのはそれしかないんだ。もうここまで来ちまったんだし、今はそれを信じるしかないぜ」
「そうですね……」
と、ユリィはそこで何か言いたげな顔で俺をじっと見つめ始めた。
「なんだよ、ユリィ?」
「その……。トモキ様はやはり、そろそろ学院のみなさんとはお別れされるおつもりなのかな、と」
「ああ、そうだな。修学旅行の予定だと、明日はまる一日自由行動みたいだから、そのときに抜け出して、もう戻らないつもりだ。とりあえず、ベルガドの祝福とやらについて情報収集しないとな」
「明日にはもう……」
ユリィは寝耳に水というリアクションだった。
「あ、悪い。お前には、こういうことはもっと早めに言っておくべきだったな」
「いえ、いいんです。ただ、できればその……わたしもその調査に同行させてもらえれば、と……」
「え、何言ってんだ? お前まさか俺と一緒に来ないつもりだったのかよ?」
「え?」
「そうかー。修学旅行楽しいもんなー。抜け出すのいやになったのか。わかるわー」
「え? え?」
ユリィはとたんにおろおろしはじめた。俺は笑った。
「バカだな。俺は最初からお前を連れて行くつもりだったのに、なんで今さら、一緒に連れて行ってほしいなんて頼むんだよ。お前、何のために俺たちがここに来たのか、さっき話してたじゃねえか」
「い、いや、だって……よく考えたら、わたしはトモキ様の調査活動の足手まといにしかならないですし、同行してお役に立てるとはとても思えない――」
「何言ってんだ、お前、俺の命の恩人だろ。忘れたのかよ、お前の魔法のおかげで俺はこうして生きていられてるんだぞ」
俺はまた卑屈モードになっているユリィの背中を叩き、そのいじけた感情を吹き飛ばすように力強く言った。はずみで乳がまた揺れるが、それは見なかったことにする。(いや、しっかり見てるけど!)
「お前は役に立つ優秀な魔法使いだし、一緒に来てもらわないと困るんだ。お願いだ、ユリィ。修学旅行が楽しいのはわかるが、俺のためにそれはあきらめてくれ。俺について来てくれ!」
「は、はい!」
ユリィはとたんに満面の笑顔になった。優秀な魔法使いって言われたのがそんなにうれしいか、はは、相変わらずちょろいやつめ! 俺も笑った。
「あ、そうだ、フィーオさんはどうしましょう?」
「あいつか……」
あれはあれで役に立ちそうな人材(いや竜人族材?)だが、アホだしな。
それに何より、
「あいつ、編入したときの記憶がまだ戻ってないみたいなんだよな」
「そうですね。結局そのまま学院になじんでしまった感じで……」
なので、本人的には学園生活を続けたい気持ちしかないんじゃないかと思う。
「やっぱあいつ記憶がないし、無理に連れていく必要はないか」
「一応、話はしてみたらどうでしょう?」
「うーん、そうだな……」
編入時の話をして記憶が戻られても困るんだが、まあ、あいつ自身のことだし、しゃーないか。秘密同盟を守る気はかろうじてあったみたいだしな。
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