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さて、キモいイケメンが消えてようやく当初の狙い通りユリィと二人きりになったわけだったが、
「すごいですね、トモキ様。あんなに熱心に慕っている方がいらっしゃるなんて」
世間知らずのユリィは、アレの異常さに気づいてない様子だった。この子、ピュアすぎるのもどうかと思うの。
まあいい、あいつはもう消えたんだし、あとは二人きりの時間を楽しむだけ……。
「あ、そういえば、さっき急にあちらのほうからいらっしゃいましたけど、トモキ様はもしかして、わたしに何か用があったんですか?」
「え」
用? 急に用事って言われても……特にそんなのは……。
「い、いやあの、さ、最近調子はどうかなって」
とりあえず適当に返事をした。
「調子? あ、わたしの魔法のことですか?」
「そ、そうそう! 魔法のことエリーに色々教わってるんだろ? そっちの調子はどうだ?」
「どうって、すごくいいですよ。理事長のおかげで、わたし、少しずつですがレベルアップしてるみたいです!」
ユリィはとたんに得意げな笑顔になった。
「レベルアップか。何か新しい魔法が使えるようになったのか?」
「いえ、そこまでは……」
「じゃあ、何がレベルアップしたんだよ?」
「火が出る早さです」
「火?」
「はい。理事長のご指導のおかげで、わたし前より短い時間で発火の魔法が使えるようになったんです! すごいでしょう!」
「ああ、そういえば、魔法で火を出すのにけっこう時間かかってたな、お前」
なるほど。魔法の発動までの時間が短縮されたのか。確かにレベルアップだな。
「じゃあもう、十秒くらいで火が出せるのか?」
「え、えーっと、もうちょっとかかる感じです」
「じゃあ、二十秒」
「……もう一声、お願いします」
「なんだそれ」
オークションの入札じゃねえんだぞ。俺は笑った。
「まあ、なんにせよ、たった数日でそういう進歩が見られるってのはすごいことだと思うぜ。がんばれば、他の魔法もすぐに使えるようになるんじゃねえか?」
「そ、そうでしょうか」
「そうだよ! お前はなんせ、この俺の命の恩人の大魔法使いだからな!」
「……ありがとうございます」
と、ユリィは照れながらも、とてもうれしそうに笑った。相変わらずこの手のヨイショには抜群に弱いらしい。はは、ちょろいやつめっ!
ただ、以前とは違い、今の言葉はまんざらお世辞でもない俺だった。俺は実際こいつの魔法、
そして、だからこそ、それがこいつの中で秘められたままでいるのは気になるところだった。やはり昔の記憶をなくしていることと関係があるのだろうか……。
「トモキ様、わたし本当にこの学院に編入してよかったと思います」
と、ユリィはなんだかあらたまったように俺に言った。
「前にトモキ様がわたしにお話ししてくれた通りでした。この学院には素晴らしい先生がいて、わたしを丁寧に教え導いてくださいます。そのご指導のおかげで、わたしはほんの少しですが成長することができたんです。これも、トモキ様がこの学院に編入することを勧めてくださったおかげです。本当にありがとうございます!」
「い、いや、俺は別にたいしたことは……」
なんでこいつは毎回ド直球で俺に感謝するんだろう。そんなキラキラした目でまっすぐ見つめられると、恥ずかしくて顔が熱くなっちまうじゃねえか。
まあ、もちろん、ユリィにそう言われることは俺にとってもうれしいことだった。ベルガドにすぐ行かなくてよかった。ユリィにとってはこの学園生活はすごく大事みたいだし。
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