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翌日、さっそく俺たちは支給された制服を着て、ドノヴォン国立学院の門をくぐった。
ただ、いきなり教室に案内されたわけではなかった。編入にあたって、まずは簡単に学校について説明をするということで、俺たちは校舎一階の広めの部屋に呼ばれたのだ。
俺たちが入ると、そこには二人の知らないおっさんがいた。ともに、リュクサンドールと同じ、赤いコートを着ていた。この学校の教師の制服らしかった。
部屋には、四角く配置された長いテーブルと、椅子が置かれていた。さながら、会議室のようだった。おっさんたちは、二人並んで入り口とは反対側に座っていたので、俺たち三人はその向かい側に座った。
「さて、ではさっそく、始めましょうか」
おっさん教師二人は、俺たちが着席すると、すぐに目配せしあった。そして、その一人が立ち上がり、近くに置いていたプリントを手に取って、俺たちそれぞれに渡し始めた。見るとそれは「一年生二学期中期 魔術理論学力考査問題用紙」と、あった……って、あれ?
「あの、これから簡単な説明をするんじゃ?」
「もちろん。試験が終わった後に、する予定だよ」
おっさん二人はにっこり笑って言う――って、試験ってなんだよ?
「いや、あの、試験なんて話は聞いてないんだが?」
「はは、心配いらないよ。これはあくまで、君たちの学力をはかるもので、結果が悪くても不合格で編入が認められないということはないからね」
「はあ?」
なら別にいいか。問題用紙が明らかに使いまわしなのが気になるが。
「ただ、君、言葉遣いはもう少し丁寧なほうがいいね。我々は一応、君たちの教師にあたるわけだし」
「そ、そうですね。気をつけます」
一瞬いらっと来たが、教師にタメ口は日本の学校でも普通にアカンかったし、注意されて当然だった。変にイキって目をつけられても、困るしな。マジで気を付けようと思った。一か月おとなしくしてればいいだけの話だし。
それから俺たちは、さらにおっさん教師の一人に解答用紙をもらい、試験にのぞんだ。といっても、俺はしょせん、日本の学生であり、さらに前世は物理攻撃特化型の勇者であり、魔術理論なんてちんぷんかんぷんで、ほとんどの問題がわからなかったわけだが。
まずい、このままだと0点だ……。
いくら試験結果が直接編入には関係ないとしても、0点は恥ずかしすぎる。俺はそこで、左手の肘にこっそり口を近づけ、小声で尋ねた。
「おい、ネム。お前なら、だいたいの答えわかるだろ。教えろよ」
そう、ゴミ魔剣は、今は薄手の
と、思いきや、
『マスター、ワタシはカンニングの道具ではありませんヨ?』
なんか、拒否られたんですけど!
「いいから、教えろよ」
『ノンノン。いかんですネー、これはあくまで、マスター自身のためのテストなのですヨ? マスター自身が真の実力を発揮しなくて何がテストですかー』
「く……」
正論すぎる答えだが、よりによってこんなやつに言われるのもむかつく。お前確か、ジオルゥの体を最初に乗っ取った時も、そんなノリだったよなあ。ちくしょうめ。
『どーせ、一か月でオサラバの学校なのデス。素直に0点取って、こんなオバカさんもいたなあ、ウププwと、みなさんの記憶に残るほうに全力出したほうがいいんじゃないですかネー?』
「くそ! もういい! お前には何も頼まん!」
結局、俺はそのまま自力で問題を解くしかなかった。まあ、ほとんどの問題の答えはわからなかったわけで、適当に解答用紙を埋めただけだったが。
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