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「これ、もしかして、ユリィとフィーオのぶんか?」
「はい。お友達も一緒のほうが学園生活も楽しいでしょう」
リュクサンドールはにっこり笑って言う――が、書類をよく見ると、
「入学金二百五十万ゴンスってあるんだが?」(※2ゴンス=1円の計算でヨロ)
「はい。ちゃんと払ってくださいね」
「ほかに寄宿舎使用料とか、教科書代とか、もろもろあわせると追加で二百万近いんだが?」
「はい。一年分、まとめて一括でお支払いくださいね」
「ちょ、待てい!」
いくらなんでも高すぎる! たった一か月、生徒になりすますだけなのに!
「いくらなんでも、ボッタクリすぎだろ! 国立のくせに、なんでこんなに高いんだよ!」
「うちは名門校ですからねー」
「いやでも、この額は――」
「安心してください。学費が高いからといって、別に教師の給料がいいわけではないのです。ここだけの話、僕の毎月の手取りは四十万ゴンスもないのですよ」
「や、やす……」
安心はできないが、同情はできそうな安月給だ。
「まあ、学費が払えないのなら、正規の手続きでベルガドの入国審査が終わるのを待つしかありませんね」
「う……」
そう言われると返す言葉がなかった。三か月も待たされるのは辛すぎるし、何より、その厳格な入国審査とやらで俺がうっかりハリセン仮面だとバレてしまったら、やばすぎる。できれば、そういうのはスルーで、なるべく早くベルガドに行きたい。
「わ、わかった。裏技みたいなもんだし、入学金とかはちゃんと払う」
「お友達のぶんはどうしますか?」
「うーん……」
どうしよっかな。痛い出費には違いないが、俺だけ入学するのもなー。
「まあ、こういうことはお友達と話し合って決めるといいでしょう」
「そうだな」
とりあえず、俺はその日は、三人分の編入手続き書類をたずさえ、宿に帰った。
俺が戻った時、ユリィとフィーオはすでに街から宿に帰ってきていた。俺はさっそく、宿の部屋の中で、二人にドノヴォン国立学院編入の話をした。
「学校? 行く行く! トモちんと一緒なんでしょー?」
フィーオの答えは予想通りだった。高額な入学金のことなど何も考えてないようだった。まあいい。こいつを野放しにしておくと、俺がハリセン仮面だとどこかで漏らしてしまう可能性がある。痛い出費だが、監視のためにはやむをえないだろう。
問題はユリィだが……、
「わたしは遠慮しておきます。たった一か月なら、お金がもったいないですし」
こちらも、予想通りの答えだった。
だが、俺は大いに納得できないのだった。
「いいから、お前も編入しちまえよ。お前から預かった金を使えば、学費はなんとか足りるだろ」
「そんな、無駄遣いはよくないですよ」
「無駄じゃない!」
俺は叫ばずにはいられなかった。
そう、リュクサンドールに学費のことを説明されたときは、一瞬鼻白んだものだったが、よく考えれば、これは、俺がこちらの世界に呼び戻されることで失った「花の学園生活」を取り戻すことができる、またとないイベントなのだ。そして、それにはもちろん、かわいい同級生の女の子が不可欠だ! そう、俺の目の前にいるような……。
「ユリィ、ほら、この学校のパンフレットを見ろよ。ここは魔法教育に特に力を入れてるらしいぞ」
「魔法教育に……」
ユリィは興味をひかれたようで、俺が差し出したパンフレットに目を落とした。
「お前の魔法のウデを磨くには絶好のチャンスじゃないか!」
「いえ、わたしなんか、今さら何をやっても――」
「何言ってるんだ。ここは名門校らしいんだぞ。それなりにすごい先生がたくさんいるに決まってるだろ。お前の眠っている魔法の才能を開花させてくれるような」
「……そんな素晴らしい先生に巡り会えるんでしょうか」
瞬間、ユリィは目をきらきらさせた。俺の言葉に、強くときめいちゃったようだった。相変わらず、この子、ちょろすぎぃ! 「会えるに決まってるだろ!」と、さらに念を押した。
「金のことは心配するな。ベルガドについた後で、また稼げばいいんだからな。だから、ユリィ、俺と一緒にこの学校に編入しちまおうぜ!」
「は、はい……」
ややためらいがちではあったが、ユリィは俺の言葉にうなずいた。やった!
「よし、これから一か月、悔いのない学園生活を過ごすぞ!」
「わーい!」
「はい、トモキ様!」
俺たち三人は手を重ね、誓い合った。俺はやはりうれしさで胸がいっぱいだった。だって、これから一か月、おそろいの制服姿でユリィと一緒に学校に通えるんだぞ。それで、一緒に授業の内容を勉強しあったり、一緒に校舎裏でお昼ご飯食べたり、一緒に下校してみんなに噂されて恥ずかしがったりするんだぞ? そんなの、楽しみに決まってるじゃんよ!
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