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 その後、宿屋の廊下で体育座りで絶望していると、部屋の中からユリィが出てきた。すでにちゃんと、いつものローブ姿に着替えている。髪もポニテだ。


「あ、あの、さっきは驚かせてしまったみたいで、すみませんでした……」


 ユリィは俺のことをまるで怒っていないようだった。ノックもせず部屋に入った俺のほうが悪いに決まっている案件にも関わらず、申し訳なさそうな、同時にとても恥ずかしそうな顔をしているばかりだ。そんなユリィを見ていると、俺はいろんな意味で感情を揺さぶられる気がした。恥ずかしそうに顔を赤くしてモジモジしている姿は、相変わらず、か、かわいいし、ここは俺を責めてもいいのよ!みたいな、罪悪感もわいてくるし……。


「い、いや! さっきのは俺のほうが悪かったんだ! お前は何も気にするな!」


 顔が熱くなるのを感じながら、早口で言った。


「そうですか。ありがとうございます……」


 ユリィはそんな俺の言葉に、瞬間、とてもほっとしたようだった。


 しかし、直後、また何かを思い出したようで、恥ずかしそうな顔をしてうつむいた。


「あ、あの、ところでトモキ様は、どう思いました?」

「どうって何が?」

「わたしの、下着――」

「え」


 な、何をいきなり尋ねてくるの、この子! 感想なんて、一つしかないじゃん! とってもマーヴェラスだったに決まってるじゃん! 思い出すだけで幸せな気持ちで胸がいっぱいになるよ!


 って、まあ、そんなこと口にできるわけはなく……、


「べ、べべつに、ふ、普通だったと思うぜ?」


 せいいっぱいクールぶってこう答えるしかできないのであった。


「そ、そうですか。変じゃなかったですか。なら、よかったです……」


 と、ユリィは顔を上げたが、しかし、言葉とは裏腹にまだ全然恥ずかしそうな感じだ。


「実は、わたしが今身に着けている下着は、レーナを出る前に、お師匠様にいただいたものなんです」


 なんだと! あの痴女のセレクションかよ!


「わたしは正直、ちょっと趣味ではないというか、派手すぎるかなと思っていたんですけど、お師匠様は、トモキ様と二人きりで旅をするならこれぐらいがいいとおっしゃって……」


 おおおっ! どおりで、清楚で控えめなユリィらしからぬセクシーな下着だったわけだ! ありがとうサキ様! あんた本当にいい痴女だよ……。


「ま、まあ、そうだな。お前も、もう子供って歳でもないんだから、ああいう大人っぽい下着だって全然着こなせるってことだろうな」

「ああ、なるほど。そうですね! これからは一人の大人の女性として生きていきなさいという、お師匠様なりのメッセージだったってことですね!」


 と、俺のテキトーな言葉に自分なりに納得のいく答えを見つけたのか、ユリィはとたんに笑顔になった。


「ありがとうございます。トモキ様はやっぱりすごいです。今までわたしが気づかなかったお師匠様のお気持ちを、こうもあっさり見抜いて、教えてくださるなんて」


 ユリィは何やら尊敬の念で目をきらきら輝かせながら俺を見ている。うう……かわいい。やっぱこいつ、めっちゃかわいい!


「い、いや、俺、別に全然すごくねーから!」


 そんな目で俺を見るな! 俺、幸せ過ぎてバッドエンドしちまうだろうが! あわてて、ユリィから目をそらした。


 そして、


「俺、ちょっとそのへん散歩してくるから!」


 気まずいんだが、恥ずかしいんだか、甘々なんだかよくわからん空気に耐えられなくなり、俺はそのまま一人で宿を飛び出してしまった。

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