終章 俺と私で……
大きな欠伸をかましながら歩くいつもの通学路。ついつい二度寝しちまったせいで、
肩で風切り余裕しゃくしゃくで歩いていると、後ろから自転車の車輪音。道を開けようと右側によると、それは俺の左側で止まった。
「お、おはよう。
「ああ、
自転車に乗っていたのは
「ああ、って。挨拶くらいきちんとしなさい」
「下級生に礼儀で叱られるとはな。ついこの間まで目上の俺に失礼な態度取ってたのは誰だったっけか」
「それは……ふん」
そんな軽口を叩くと、
あの日見事に接客して見せた
「で、何か用事か?」
「用事がなくちゃいけないのかしら。まぁ聞きたいことはあるのだけれどね」
「聞きたいこと?」
俺がオウム返しすると、
「すっかり聞きそびれてしまっていたけれど……あなたは結局、どうした私のためにここまでしてくれたの?」
「そりゃ……そっちの想像に任せるよ」
答えにくい質問をこんな風にかわしてしまうのは、ちょっとダサかっただろうか? まぁでも答えにくいもんは答えにくいんだからしょうがない。と脳内言い訳をしていると、
「じゃ、じゃあ、私は自分の想像を、信じてしまって……いいの?」
「? そりゃ構わんが……どうした?」
急に焦ったように歯切れが悪くなった
「私の想像……外れていたら、とても恥ずかしいのだけれど」
そしてやや上気した頬を見て、
「……知るか」
「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」
いつもとは逆に、俺の方がツイっとそっぽを向いて先を行くと、
「ねぇ、あの
「何だよ急に」
「だって、永遠に理解し合えないなんて寂しいじゃない。だからたとえ無理だとしても、理解し合うことを諦めちゃダメだと思うの」
「……まぁ、確かにそうかもしれないな。それに、諦めちゃダメってところ、
「ふふ、ありがとう」
前だったら罵倒されそうだったところ、こんな反応を返されると困ってしまう。ほんと、たった数日で関係性が大きく変わったもんだな。
「そ、それでその……あなたを理解するために一生懸命考えて、さっきの想像に至ったのだけれど……本当に、違うのかしら」
「その話に戻るなよ……。つーかどんな想像だよ」
「いい言わせないでよバカ……。わかってるくせに」
「……自分でそう思ったんなら、信じてみりゃあいいだろ」
こっ恥ずかしくてどうしようもなくなった俺が乱暴に頭をかくと、その反応で
「そう、じゃあ信じるわ」
と自転車にまたがり、俺に向き直る。
「それじゃあまた学校で会いましょうね」
カラララっと軽快に自転車をこいで
それにしても
いや、焦る必要はないか。これからも
すでに
きっといつか、俺と私で彼女と分かり合えることを信じて。
俺と私で 遥原春 @harubaruharu703
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