第9話
絶望に変わった高校生2日目。俺は、昨日覚えた道を南川を肩に乗せ、自転車のペダルを自己最大出力で動かしていた。
「ごめんね。わざわざ家に居させてくれているのに何も役立たなくて。」としょぼん。
「過ぎ去った事は、いいさ。別に俺もお願いした訳じゃないし、むしろ俺が睡眠を邪魔するなって言っちゃたしさ。」と慰める。
「で、でもこれじゃあ学校遅刻しちゃうし、優杜の大事なカメラも返して貰えなくなっちゃう、、、」と、目に水を貯めながら。
そう。俺は今、絶賛遅刻中なのである。あ~昨日南川に起こしてーって一言かけとくべきだった。いやいや、これは俺の問題だ。南川のせいにするじゃないよ。コノヤロー!
それから何十分だったかは知らないが、1時間目が終わる頃に学校に着いた。俺は怒られながら殴られた後、廊下にバケツを3時間持たせられても学校へ行くのを挫けない強い心の持ち主だ!と何度も心に言い聞かせながら、今まで出したことのないほどのスピードで、階段を駆け上がり、廊下を走り抜け、教室の扉を勢いよく横にスライドした。
そして大きな声で「遅刻してすみません!!」
と言ってみた。
クラスの全員がこっちを向いく。今日は晴天で気温も27度を超えている。しかし、この部屋の空気は冷房もついてないのに関わらず何故だか肌寒いと感じた。だが、昨日のおかげなのかは知ないけど、この空気感に慣れつつある。だけどまだ、
た、耐えられねぇ。くそぉぉぉおぉー。別にギャグでもなんでもないのに、どうしてだよ!
ただ一人、南川だけが笑っていた。南川から1度も聞いた事のない声でお腹を抑えながら大爆笑している。ふざけるなよ、やっぱ高校生なんか辞めようかな。いや、まじで。てかさっき泣きそうだったのはなんなの?
「君は、福田くんかい?次は遅れちゃだめだよ。」と眠くなるゆっくりとした落ち着きのある声を出しながら理科担当?のかなり歳をとった先生が注意だけしてくれた。
すみません。と、一言謝って自分の席へ向かう。俺が、席についてもう終了を迎える一時間目の理科の教科書やらなんやらを取り出していると隣に座っていた奴がシャーペンの頭で俺の脇腹をつんつんとしてきた。無意識にビクッとなりながらかそいつの方を向く。つんつんしてきた奴はなんと女子だった。てっきり、意地悪な男子かと思ったから、正直驚いた。まぁ意地悪かもしれないけど。けれど、その子は何も言わずに一切れの紙を渡してきた。俺は、内心色んな意味でドキドキしながら紙を受け取り、そこに書いてあった文字を心の中でゆっくりと読んでいく。
そこにはこう記されていた。
貴方のカメラは私が持っているわ。返して欲しかったら放課後、屋上に来て。
お前、超意地悪じゃねーかよ。
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