第8話

 あー、すごく違和感。よく俺には理解できないが、幽霊にも体力の概念があるらしい。

 その体力がゼロに近づけば近づく程、動きにくくなるそうだ。それで、さっき走ったせいで体力パラメータが残り僅かになったから、という理由で彼女、いや南川は俺の肩にのってる。もう、勘弁してくれよ。このもゆもゆした感じ、妙に歩きにくい。あと、俺もそろそろ体力パラメータが底を尽きる。


「おーい?起きてるか?もうすぐ家着くぞ。」


 返事がないただのしかばねのようだ。

 まぁ南川いわく死んでいるらしいが、まだ完全に納得した訳ではないんだよな、俺。


 それから、自転車と共に歩きながら交差点を通り過ぎやっとの事で家に着いた。


 え?お前、南川を助けた辺りから自転車なんて相棒とか言っときながら投げ飛ばして、そのまんまじゃんって?あぁ、それはとても苦労した話があってな、南川が疲れたー。とか言って俺の肩に無理矢理乗ってから、もう1回あの事故現場に引き返して、バックと自転車を拾ってきたんだよ。俺の相棒がいなくなって無くて安心したが、今日は本当に色々と情報量が多すぎて、今にも頭が大爆発しそうだ。


 しかし、その後に気づいちゃうんだよな、もう1つの相棒を無くしたことを。もう最悪。


 それは午後八時を過ぎた頃だった。

 ご飯を食べ終わり、なんとか南川を気持ち良さそうな眠りに終止符を打って、お風呂に入り終えた後我が部屋に戻って明日の支度をしていたころ。


「俺のカメラがなーい!!」


 バックの中を隅から隅まで3回探しても見つからない。俺が小さい頃おばあちゃんは、物を無くしたら無くしたと思う場所を3回探せば絶対に見つかると言っていたのに、どうしてもない。


 そして俺は理解した。長い間考えて。相棒は、学校に没収されたのだと。


 俺は、それから深夜までずっとどう言い訳をして、学校側から返してもらうか考えていた。


 南川はというと、ずっと俺の家をグルグルと巡回?探検?をしていたそうだ。あまり騒いでほしくはないのだけど、注意する気力も残っていない。


 南川が、もるこをおびき寄せながら俺の部屋に帰ってきたので聞きたかったことを聞いてみた。


「南川、お前どこで寝るの?そして、服着替えなくていいの?」


「え?寝ないよ。夜は夜更かしするんだ。だって私、幽霊だから。あと服着替えるの面倒臭いしー。」


「え、汗とかかかないの?」とデリカシーのないことを聞いてしまった。


「かかないかかない。だって体の中身、空だもん。だけど自分の意思で物に触ったり、触らなかったりはできるんだ!凄い便利だよし優杜も1回死んでみる?」

どうやら、気にしてないらしい。


「へー便利だなぁ。けどよ、地味に俺を道ずれにするなよ。」と呆れながら。


「バレた?」と上目遣いで。可愛くしてもダメだぞ。


「あー、もう好きにしろよ。だけど、約束は守れよ?」もう眠たい。


「了解しました!」と背筋を伸ばして、もやしのような手を片方頭につけた。もやしのようなって失礼か、でも凄い細い指だなー。


 てか俺、明日も学校で笑いものにされるんだろうな。あぁ凄く、もの凄く憂鬱だ。そう思いながら部屋の明かりを無にした。




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