第5話
「ごめん!!」
俺は慌てて手を離して、立ち上がる。
彼女は、俺が立ち上がってすぐにこう一言怒鳴った。
「私なんかより自分の心配してよ!」
怒鳴った後、身軽く立ち上がり目を潤わせながら後ろに向いて走っていった。
はい?いやいや確かに俺は不可抗力にしても酷いことをしたよ?だけどあの言い方は気に食わん。君の命の恩人になったし、大好きだった戦隊ヒーローになった気分だったのに。まぁこっちの心配してくれるのは嬉しいが、あいつの方が危なかったんだよ。
なんかムカついた俺は、あいつについて行くことにした。
しかし、あいつのあとをこのままついていって、引き止めて俺は何を言いたいんだ?お前ウザイ。助けてやったのにお礼もなしか?なんて言いたいわけではない。けどなんか一言、言ってやりたい。俺はそんなよく分からない感情に乗って行動してしまった。そういえば昔もこんな事あったな。あれは確か保育園に通っていた頃だったけか、俺はよく感情のままに行動して、友達を心身共に傷つけてしまったりした。それから、そんな事がないようにと注意をしながら小学生から、やってきたつもりだったのだが、きっとその努力は報われずその頃とあまり変われていないのかもしれない。いや、努力の仕方がなってなかったのかもしれない。だから、友達も指で余裕に数えられる数しかいない。だけど、俺だって男だ!男はいつだって我武者羅に進んで、人を助けるんだ。と言うか、俺はそれしかできないのかもしれない。要は不器用ってことさ。
俺はそんな事を思い出しながらあいつに向かって走っていた。だけど意外とあいつ走るの早くね?普通こういうのってさ男の方がすぐに追いついて、ごめんな。って言いながら抱きしめたりする、ドラマとかでよくある場面だよね?あれ?違うっけ?しかも顔を手を当てている。まさか本気で泣いているのか?だったらなおさら、いや、まさかな。俺はさっきよりスピードをあげて走った。
もう少しで追いつく辺りで、あいつは俺の方に振り返った。
「なんで追ってくるの?」と泣きながら。
その顔を見て、俺はなんだか凄く心配になった。
「あ、いや ただ気になって、その、」と息切れで、苦しくなりながら。てか、今の俺すっごいダサいんですけど。
しかも俺はなんて言えばいいのか、分からなかった。頭が全然回らない。だけど、彼女には泣いて欲しくないとは思った。
「さっきのことちゃんと話してなかったから、あのー、誤解とか色々あると思うし、なんか、どっかの公園とかでさ話さない?」と、まだ息が切れながら。あー。日頃から運動しとくべきだった。
何をどう話していいのか後のことなんて考え無しに、その場の思いつきで提案してしまったが、彼女は少し頬を赤に染めながら返事をした。
「わ、わかったよ。」
それが今後の人生を狂わす引き金になってしまったんだなと思う。
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