第4話

 帰り道、そこでまたしても悲劇が俺を襲ってきた。

 それは、俺が横断歩道の信号を待っている時に起きた。


 信号まだ青になっていない。無論、自動車やバイクが俺の前を何台も通過している。俺の隣には俺と同じ高校の制服をきた女子がいた。長く艶のある黒色のきめ細かい髪をよく分からん止め方をしていて、これまたぱっちりしていてクリっとした瞳がついている綺麗な目で向こう側の歩道にいる猫をずっと見ている。暇だし、まぁ顔も可愛いし話しとくのもアリかなーなんて思って俺は話しかけてしまった。

「あのー、猫好きなんですか?」


「えっ?私に聞いてるの?」と動揺。


「うん。だって君しか俺の周りにいないじゃん。」と笑いながら質問を返す。


「私の事、嫌いじゃないの?」と俯きながら。


 ん?よく分からないが、この子と俺はどっかで会ったことあるのか?と頭を巡らせたが、全然思い出せない。と言うかもし、仮に俺がこの子と会っていたならばこんな可愛い子を絶対に忘れられない自信がある。


「どっかで会ったことあるっけ?」


「もう忘れたの?まぁそうだよね。」


「へ?」と思わず声を出してしまう。

 そこで信号は赤から青に変わってた。

「じゃあ。」と彼女はそれだけ言い残して横断歩道をおぼつかない足取りで渡り始めた。


 そんな時だった。赤信号にも関わらずバイクが猛スピードで、彼女に向かっていく。

 俺は反射的に持っていたバックと隣にいた相棒を弾き飛ばし、彼女に向かって飛びこんでしまった。

とてもゆっくりに感じる。まるでスローモーションのようだ。そんな中、バイクが俺と彼女を避けようと必死にブレーキをかけながら避けようとしているのがチラリと見えた。俺は彼女を出来るだけ遠くに飛ばそうとする。俺はもう死ぬのかな。俺は今更怖くなって瞼に力を入れる。でも、走馬灯とやらはまだ見えていない。


知らないうちにスローモーションな世界は終わっていて、どうやら彼女を助ける事ができたようだ。良かった良かった。だが、バイクの方も俺たちに気付かずにいたら間違いなく怪我じゃ済まない程の痛みが待っていただろう。まぁ助けられたならそれでよし。てか、バイクに乗っていた人は怪我をしてないだろうか心配だ。まぁ自業自得なのだが。



 が、ここで問題がさらに起きた。彼女の命を救ったことはホントに素晴らしいことなのだが、横断歩道のど真ん中で彼女に、覆い被さるような体勢で、俺の両手は彼女の2つのマシュマロの上に乗っていた。


 俺は、この幸せな感触を人生初、体験したのだがこんな場面ではちっとも嬉しくないし、むしろ人生が終わったとホントのほんとに思ったね。もしこれが愛し合っている人同士だったらどれ程体験してみたいことか。いやいや、そんな事を考えるな。この変態。


 彼女の方を見ると、やはり何が起こったのか理解できていないのだろう。しかも、こんな事をされれているしな。彼女は大きな目をさらに大きくして、頬を淡い赤色に染めて、こちらを見てすぐに逸らした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る