第1話
学校を目指して道を歩いている時、ふと顔をあげると空はすっかりいつもの鮮やかな青色になっていて、何故だか妙に切ない気持ちが込み上げてきた。てゆうかこの道であっているのか、不安になってきた。何故なら俺は道をよく間違えてしまう、いわゆる方向音痴なのである。それに気づいたのは小学生の時に行った水道局でのことであった。
俺は友達とはぐれてしまって渋々、リュクサックの中から地図を出そうとしたが見つからない。仕方ないので、自力でみんなと合流しようと考えるのはあたりまえだろう。大した脳みそじゃなかったのが、入口まで戻れば先生に会うことができるだろうと考えた俺は、来た道を戻った。しかし来た道を戻ることができなかったらしく、その代わりに関係者以外立ち入り禁止区域に入っていたらしい。それを見つけた若い男の人に助けられ、無事に戻ることができた。その事を帰ったあと、母に話すと方向音痴だったんだね。とバカにされた。
そんな事を思い出しながら、うる覚えな道を進んでいくと途中で同じ制服をきた男子グループを見つけ、さも道を完璧に理解してますよと言わんばかりに堂々とした態度で彼らについて行った。
その人たちのお陰で時間は丁度いい頃合の着席時間15分前ぐらいに正門を通過することができた。
ホントに感謝します。ありがとう。
校舎に入って、自分のクラスを確認する。15分前だと言うのに凄い数の生徒達が、壁に貼られている大きな紙を覗き込んでいた。俺は人の間を無理やり割って自分のクラスを探す。そしてやっと、2組だと確認できた俺は1年エリアの3階までソワソワと進んだ。
教室の黒板には自分の座席と出席番号が記されていた。俺はその紙を念入りに確認し、理解したのち、窓側に近い列の1番後ろという、授業中、たんぽぽのような明るい眼差しを受けて、夢の世界に行きそうな席に座った。
それから少したった頃、がっちりした男の先生が教室に入ってきた。
その先生はどうやら村田という野球部の顧問であり、これから1年間お世話になる担任だそうだ。 身長は160cm半ば程なのだが、腕や足、胸とまぁスーツを着ていても至る所の筋肉が浮き出ていて、どれだけ野球に人生を注いだかが伺える。
先生の自己紹介兼、だらだらと続く熱血野球部説明会が終わった後、学校初日のビックイベントが始まった。
真面目に話す人、ウケを狙う人、何を言っているのか聞き取れない人と他にも色々な個性があった。俺?もちろん、適当に自己紹介した。正直たった1回の自己紹介で、名前を覚えることも覚えられることもないと思っているからなー。
その後、新1年生全員は中学とは比べ物にならない程大きな体育館に集まって、入学式が開式された。俺は、無理やり背筋を伸ばして緊張で足が震えながら入学式に参加していた。何を言っているのか俺には理解できないし、例え理解したとしてもなんも役に立たない校長先生のお言葉が終わり、新入生が1人ずつ呼ばれ、呼ばれた生徒が返事をする。あの地獄のイベントが始まってしまった。俺の番まではまだ1組以上もあるのに、変な汗をかいてきた。このままじゃ返事する事さえ失敗すると思った俺を誰が責めよう。緊張をほぐすためにダンディーな声なんかで、Heyって言ってる人いたら面白いのになぁなんて脳内をフル回転させて考えていると、
「福田優杜」と渋い声で。
俺は慌てて席から起立して、返事をする。
「ハイ。」とダンディーな声で日本語より英語よりな発音で。
し、しまったー。やばいやばい。その声を聞いたと思われる生徒と保護者、そして先生とまぁ老若男女問わず、クスクスと口に手を当てて俺の方をを見る者、下を向いて笑いを堪える者と色々いた。
とにかく今、俺は死にたい。
俺は冷静を装いながら、何も音を立てずに着席した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます