たまたま助けたその子は幽霊だった!?(仮)
あまた らいか
プロローグ
緊急サイレンが鳴ったと同時に、もふっと柔らかなものに包まれ、更なる深みにあとほんの2秒程で連れて行かれそうになっていた時、極楽を切り裂く地獄の刃が俺の皮膚に当たったところで、俺は、目を覚ました。
目を開けると俺の前には飼い猫のもるこがちょこんとお腹の上に乗っていた。
あくびをしながら時計にチラリと目線を向けると、そこには午前5時と表示されていた。
なぜ、俺はこんなに早起きしたかと説明するなら、今日から高校学園青春ライフがスタートするからという理由だけにとどまらない。
唐突すぎるのだが、俺には趣味がある。それは、写真撮影をすることだ。特に、少し霧がかった早朝の空が好きな俺は、記念すべき高校生活スタート記念写真に、その空と学校を撮ることを決めていたから、早起きした。それが本当の理由さ。
俺は外の景色をみて霧がかかっていることを確認し、天気予報を信じて良かったなどと思いながら、着慣れない制服を着て、持ち慣れないカバンと持ち慣れすぎたカメラを持って、リビングへ向かった。
リビングで、俺は昨日買っておいたメロンパンの袋を開けて、そいつを口に咥えながら家を飛び出し、自転車に跨った。
俺は、食パンの方が食べやすかったかもなどと考えながら、できるだけ急いで目的地へ向かっていた。
山までの道のりは細い道が多くて大変で面倒くさいと思ったが、俺がこれから通う東野原高校の通学路でもあるし、写真も絶対に撮りたいと思っていたから無理にでも進んだ。
蛇のようにクネクネした道を抜けたところに大きな山があった。
ここが目的地か?にしても俺が調べた時に出てきた画像とやけに雰囲気が暗いし、ホントに大丈夫なのか心配になる。
が、時間も時間だったため行くことにした。
「張り切って行こう!!」
俺はいま、体内にある恐怖心をどんな景色が広がっているのか知りたい!!という好奇心に無理やり変換して山に一歩、足を踏み入れた。
山の中は、けもの道が一本、上の方に続いているだけなのだが、霧のせいもあってか妙に薄暗い。
俺は、少し怖くなって小走りで山を上がって行った。もう一度言うが”少し”だけだから。
今どこにいるのか、全く分からなくなってきた頃、光が微かだが見えた。
助けを神様に求めるように、俺はその光に向かって走り出した。
しかしそこは、期待してたより残念な景色が広がっていた。が、ここまできた達成感のお陰なのか今までで、1番綺麗な景色だと思った。
霧が微かに漂う中、淡いオレンジ色と悲しそうな青色が上手い具合にグラデーションしている。その空の下には、長年いますけどと言わんばかり古くなった高校の校舎が見える。
なんか、まだ入学式も始まっていないし、ましてや学校にも着いていないのに凄く緊張してきた俺はまだ時間は大丈夫だろうけど念の為と、時計を見て驚いた。時刻はもう6時を指そうとしていた。
この空の色がいつもの色になる前に、急いで連射撮影をした。そしてその写真を1枚確認してみる。ピントがあっていなかったり、校舎と空が写っていなかったりなどのことはなく、SNSなんかに投稿したらすぐに何万いいねぐらい来そうな写真がそこにはあった。何万いいねはかなり盛ったが。
後に、俺は何で1枚しか確認しなかったんだろうと後悔することになる。
今の俺にそんなことが細胞内の染色体並に分かる訳もなく俺は山を下って、学校をのんびりと目指すことにした。
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