4.
――赤足の傘女のウワサ――
赤足の傘女っていうのは、最近この辺りに出てくるオバケのことだ。
なんだよカズキ、びびってんのか? そんな顔してこっち見んなよ。心配すんな。オバケなんて存在してるわけないんだ。でも、暇つぶしの話としては面白いだろ? 反応的に誰も知らない話みたいだしな。
こっから本題に入るぜ。
赤足の傘女は決まって雨の日に現れる。そう、今日みたいな雨の日だ。強い雨が降ってて、下校時間になっても止みそうにないなら、お前らも気をつけた方がいいかもな。
どしゃぶりの雨の日に傘を差していると雨の音に混じって、ペタリペタリって音が聞こえるんだそうだ。それが赤足の傘女がその場に現れた証拠さ。
その音を追って視線をやると、そこには、ずぶ濡れなのに、真っ赤な血に濡れた裸足の女が立ってる。
こっちを白い部分のない真っ黒な目で見て、こう言うんだ。
「中に、入れてくれませんか?」
傘の中に入れてやらないと、その場でズタズタに引き裂かれるとか、道端で溺死するとか言われてるぜ。
エイちゃん、今ホッとしただろ。傘の中に入れるくらいだったら余裕でできる、とか思っただろ。けど、赤足の傘女を傘の中に入れてやるのって、案外勇気いるぞ。
だって、そいつはどう見ても普通の人間じゃないからな。土や葉がついて汚れたワンピースに、崩れた三つ編み、血管の浮き出た青白い肌、青紫の唇、血塗れの足。おまけに布越しに触れた肌は氷みたいに冷たいって話だ。触れた瞬間に思わず声が出そうだよな。
お前ら、そんな奴と肩くっつけて歩けるか? 相合い傘の状態で、自分の家まで帰らないといけないらしいぜ。しかも途中で赤足の傘女の気に触れるようなことをしたら死ぬって話だ。これで具体的にどんなことをしたら死ぬのかは分かんねえっていうんだから怖いよな。もし『冷たっっ!』って大声出しただけで死ぬんだとしたら? いやぁ、怖い怖い。
これでオレの話は終わり。え、赤足の傘女に会ったら、結局どうしたらいいって? それ言わなきゃダメか? たかが暇つぶしの話だぞ。実際にいるわけのない……わかったわかった。
でもこれ、やれるヤツいないと思うけどな。赤足の傘女を傘に入れて、気に触れるようなことをせずに自分の家まで行く、んで最後に、赤足の傘女はあることをねだる。それは……。
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