3.

 そのウワサを聞いた日は、今日と同じ、どしゃぶりの雨の日だった。せっかくの昼休みなのに校庭で遊べなくて、なんとなくモヤモヤの残る日だった気がする。

 掃除の時間もみんなやる気が出なくて、ホウキや雑巾を持ってはいるけど、力無く同じところを行ったり来たりしてるだけだった。

 その日の僕のグループの掃除当番は一階の美術室で、雨が地面に叩きつけられる音がよく聞こえていた。

 薄暗い美術室で、そのウワサを最初に口にしたのはトモくんだ。


「そういえば、エイちゃんは赤足の傘女って知ってっか?」


 エイちゃんっていうのは、僕のことだ。僕のヒデオって名前のヒデの部分の漢字を違う読み方にして、エイちゃん。ヒデオの"オ"は、僕がかっこ悪くて嫌いだって言うから、友達はみんなオをつけずに僕を呼んでくれる。


「なにそれ」


 僕が首を傾げると、トモくんは誇らしげに鼻の下を擦った。

 赤足の傘女、それはみんなにとっても聞き慣れない単語だったようで、僕以外のメンバーも手を止めてトモくんに注目している。


「なんだ、みんな知らないのか? じゃ、話してやるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る