2.

 それは水泳の授業のとき、聞く音に似ている。水に濡れた裸足の人が固い地面を歩くときの音だ。一人分の、足音で、それはゆっくりと歩いているようだった。

 ペタリ……ペタリ……。

 その音は僕の左側から聞こえる。傘で視界が狭くて、視線を動かすだけじゃ音の正体を確認できない。でも動くのは怖い。動いたら……。

 自然と傘を持つ手に入る力が強くなる。ふと視線を下ろすと七分袖のシャツから出た腕には鳥肌が広がっていた。天気が悪くて寒いからじゃない。つい最近学校で聞いたウワサを思いだしたからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る