第5.5話『琥亜の憂鬱』
仕事を終え、家に帰るとどうやって入ったのか、珍しく今日は会わなかった琥亜と先ほどあったハイネがリビングのソファーにいた。
「おかえり」
「あ、あぁただいま、え、どうやって入った?」
拍子抜けているオレをよそに二人は勝手に紅茶まで飲んでくつろいでいる。しかもオレの言葉を無視して、だ。
「討伐に出るって聞いたから、いつからかなーって」
カップを口に運びながら軽い口調で言うとオレを見る。情報を漏らしたのはハイネだとすぐに分かった。
ある程度、準備が終わったら話すつもりだった。なのに今か……と肩を落とす。しかも少々機嫌が悪いらしい。
「三日後、期間は三日ほどを予定している」
こうなってしまっては仕方がないと半場あきらめて説明すると琥亜はカレンダーを見た。
「え、でもクロナ四日後は……」
「すまない、これから城下の少し外れに行かなければいけないんだ」
「え?」
琥亜の言葉をさえぎって言葉を綴ると表紙抜けた声が返ってくる。申し訳ないと思いつつも待ち合わせも兼ねているので正直ゆっくりとしている暇はなかった。
二人の腰を上げさせて共に部屋を出る。しっかりと施錠したことを確認すると二人を連れて賑わう町に出た。
少し歩いたところに従者がいて、その従者に話しかけると二人を馬車に乗せて背を向けた。
*****
クロナが去ったあと、馬車はクロナが向かった方角とは違う方に進んでいく。ため息を付きながら背もたれに背中をくっつけると正面に座っていたハイネが口を開いた。
「忘れているようですね」
「みたいね」
深いため息と共に肩を落とす。ここ最近確かに多忙そうだった。藤野と言う夫婦に出会い小隊に入ったことでいつも出来ているはずの事が見えていないのだろう。
私だけじゃなく目の前に座るハイネもまたそれは心配しているようだ。
「如何しますか?」
表情を変えることなくそう言われて考える。正直どうするべきかわからない。困っている村を放っておくことも出来ないし、だからと言ってクロナのこともほっとけない。
「何も起きないといいけど、」
そんな私のつぶやきとため息は賑わう城下の空気に消えていった——……。
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