第11話

『私の正体は魔王だ。魔王レイネル。それが私の真の名前だ』

『…………は?』

 丸太に座るマナにそっと耳元でそう囁くレイ。思わず口をポカンと開けるマナだったが、レイはつかさず話を続ける。

『私は元々、魔物を束ねる王だった。魔物は本来、人間とは平和的に共存していた。だがしかし、我らの一族の中で裏切者が現れた』

『ちょ、ちょっとストップ!』

『む?』

『む? じゃなくて! え、あなた勇者じゃないんですか?』

『うむ。勇者だが?』

『え、でも今魔王って……レイネルって』

『うむ。魔王レイネルだが?』

『ええ……』

『マナ殿。魔王だって、勇者に憧れる時くらいあるのだ。魔王が勇者になれないという決まりはあるのか?』

『それは……な、ないですけど。でも、普通に考えて……。ええ……』

『そして、その裏切者というのは……私だ』

『え、ええ……』

 困惑の更に困惑を重ね、マナの表情は固まっている。そんなマナに追い打ちをかけるかのように、レイは耳元で囁き続ける。

『仮にも私は、偉大な力を持つ魔王。その気になれば世界など自由にできる。ならば、魔王であるならば、もっと魔王らしくあらねばと考えた私は、魔物を従えて人間に宣戦布告をした。今後、貴様らの持つ食後のデザート特にプリンを全て我ら魔族に寄越せとな』

『随分小さい宣戦布告ですね……』

『それで人間と魔物は喧嘩になった』

『け、喧嘩。争いではなく?』

『うむ。文字通り、ボコスカと殴るだけの喧嘩だ』

『ええ……』

『最終的には一騎打ち。魔族軍代表の私こと魔王レイネル。そして、人間代表がこの聖なる剣を手にしていた後の伝説の勇者。我々は殴り合いの喧嘩の末、私は敗北した。結果的に、我々の食後のデザートは全て人間に献上する事になった』

『は、はあ……』

『マナ殿がよく知る勇者の伝説。アレの真相がコレだ』

『あ……え、あ……』

 次々と明かされる衝撃的な事実。マナは顔を引きつらせて、言葉が詰まっている様子。

『だが、その後で事件は起こった。ある一人の人間が、邪な心を宿し、魔物を次々と殺していった。ソヤツは心のリミッターが外れてしまい、闘いの衝動に駆られたのだ』

『え……』

『同時期。魔物も邪な心を宿し、人々を襲うようになった。ほぼ同時期に、二つの種族が本能の赴くままに行動を起こすようになったのだ』

『ちょ、ちょっと待って!』

 耳元でそっと話をするレイだったが、マナは一度離れた。

 額から汗を流し、マナは激しく動揺している。

『まって。私、そんな話聞いたこと……』

『マナ殿。一旦落ち着くのだ。誰に聞かれているか分からぬ。ここは今一度私に身体を寄せてほしい』

『…………』

 マナは深呼吸をし、心を落ち着かせる。

『分かりました。話を聞かせて下さい』

 マナは再び丸太に腰を掛け、レイに身体を寄せた。

『後に勇者と呼ばれるようになった男は、本能に従うようになった獣と化した魔物。つまり、魔獣を討伐していった。方や私は、邪な心を抱き、見境なく人や魔物を襲うようになった一部の人間を始末していった』

『そんな話聞いたことがない……』

『うむ。長い歴史の間に、恐らく何者かに史実をもみ消されたとしか』

『わ、私達人間が歴史を誤魔化しているってことですか?』

『その可能性が高い。現に、マナ殿は我々の誇り高き戦い、デザートの乱を知らないでいた』

『うん、それは知らなくてよかったです』

『あと、勇者がブレイブ王国を建国したとあるが、あれも嘘だ』

『んな!?』

『ブレイブ王国は元々存在した。アイツが建国したわけではない』

『嘘……』

 ブレイブ王国は勇者が建国した由緒正しき国だとマナは信じていたし、教わっていた。だが、レイの話が本当ならば、それすらも嘘という事になる。

『呼吸が乱れているな。大丈夫か? マナ殿』

『大丈夫です……。ちょっと、心臓の鼓動がすごいですけど』

 深く深呼吸して、マナは落ち着かせる。

『すみません。続けて下さい。それで、どうなったのですか?』

『ふむ。して、結果的にはその騒動は収まった。人間の方はな』

『人間の方はって、まさか……!? では、今この世界に蔓延っている魔獣と言うのは』

『そう。本能に飲み込まれ、暴走してしまった我が配下たちだ』

『なっ……』

 つまり、レイは元々配下だったはずの元魔物を倒して回っていた。そうなる。魔獣の事実とレイの行動にマナは戦慄する。

『何故このような事態になったのか、私にもわからない。だが、いずれこのままでは私も暴走してしまうかもしれない。私はその気になれば世界を自由にできるほどの力を持つ魔王。暴走すればどうなるか分からない。だから私は勇者に頼んだのだ。私を殺せと』

『そう……だったのですか……』

『だが、アイツは……優しい奴でな。私を殺さずに封印したのだ。この剣に。かの地に』

 そう言いながら、レイはそっと剣を見る。剣は相変わらず台座に突き刺さったまま。その剣を見るレイの表情は……どことなく寂しげだった。

『魔獣を倒すことを浄化と呼ぶのも、元は悪しき心を浄化する。という意味からだ。あの剣にはそれを一撃でなすだけの力がある。私がこの剣を取り、かつての配下を斬るのも、浄化して元に戻ってほしい。そんな思いがあってこそだ』

『…………』

 その話を聞くマナもまた、寂しそうに目を伏せる。だが、話はまだ終わっていないようで、話が脱線したすまないと、レイは話を続ける。

『月日が経ち、我々の時代が伝説となり、この国が魔物の存在も忘れかけた頃、封印は薄まり、そして私は舞い戻った。だが、私は感じたのだ』

『何を……ですか?』

『あの時、私達を殺し合わせた憎き存在。心を邪なものへと変貌させる、悪しき何かの存在を。悪しき魔法の存在を』

『魔法……なのですか!?』

『腐っても私は魔王。その感覚くらいは分かる』

『では一体誰が?』

『そこまでは分からぬ。はっきりと言えることが一つ。その魔法は今この国に蔓延している。そう、マナ殿の住まうブレイブ王国に』

『…………っ!』

『ここまで言えばわかるだろう、マナ殿。私がこの手に剣を取った理由が。私の目的が。そして、この国に起きているであろう異常が。それは、あの魔法によるものだ』

 聞いたことのない事実が、マナの頭を雪崩のように襲い掛かる。だが、それを信じてしまうだけの事実と経験はマナの頭の中には存在した。

『ある日お父様は突然変わられてしまった。まるで、何かに取り付かれたかのように。私を追放し、国のシステムを変え、この国は地獄になりました。その原因がその魔法なんだとしたら……。ならば、だとしたらお父様は……』

 父親の単語を出すマナ。マナの父親は突然とマナを王家から追放し、そして差別的な政を始めた。市民が苦しんでいるのに静観している。怠惰且つ傲慢な政。それは人間の持つ欲が制御できていない可能性が高い。

『正直な話、王都に直接入ってみない事には分からぬ。しかし、国には厳重な結界が仕込まれている。情けない話、あの厳重な結界がある以上、魔族である私は王都に入ることが出来ないのだ』

『それで、結界を何とかしたい。そう言うわけですね』

『うむ。それに、あのような魔法だ。使ったものは、きわめて自分の欲に正直且つ、この時代でも私の正体を知っている者である可能性が高い』

『それはどういうことですか?』

『あの時と魔力が同じなのだ。つまり、発動者は同一人物である可能性が高い。それにその魔法は私がいた時代に初めて発動した魔法。使い手が、何らかの形で未だに生き残っているのかもしれぬ』

 なるほど。と、首を頷かせるマナ。

『とにかく、それらを暴くためにも、私は王都に入る必要がある』

『では、結界を失くして王都に入る。それがあなたの目的なのですね』

『うむ。そこに入り、あの魔法を操る者……真の魔王をこの手で葬る。マナ殿は結界を各地に貼り、市民を守りたい。そして、私は王都の結界を薄くしたい。お互いの思惑は一致している。だが、貴殿がやろうとしている事は焼け石に水だ』

『それでは、私はどうすれば……』

『レンガロの町。あそこに、魔族であるにもかかわらず正体を隠して魔法使いとして過ごしている者がいる。ソヤツは今でも例の魔法の研究をしているはずだ』

『レンガロの町……』

 それがメルニの村でレイがマナにこっそりと明かしていた事実。

「馬鹿な。ならばお前は既に知って、知ったうえで行動していたのか!?」

 事実を知り、戦慄するジクス。ジクスの問いにマナは首をゆっくりと縦に振った。

「じゃ、じゃあ、ミルの事とっくに知っていて……。マナどのはその上で……?」

 涙目でマナを見上げるミル。そんなミルに対してまたは優しく頭を撫でた。

「種族が何であろうと、ミルちゃんは……仲間だよ」

「マナどの……マナどのーーーーー!」

 ミルは泣きながらマナに抱き着いた。そんなミルの頭を撫でながら、マナはジクスを睨みつける。同時に、レイもまたジクスに視線を送る。

 過去と現在。例の魔法を使ったかもしれない黒幕。欲に正直で、且つ、レイの正体を知る人物は、今、3人の目の前にいる。

「まて、まてまてマナちゃんよぉ。そんなウソ話を、お前は信じるってのか!!?」

「今王都で起きている状況を考えると、色々納得がいきます。それに、あの聖域からこの者は剣を持ち去った。それも台座ごと。そんなの、並大抵の人間には不可能です。つまり……」

「そう。すなわち、私が勇者の素質あってこそ」

「この者が魔王だから、それができた。だから聖域で嵐が起こった」

「う、うむ……」

 レイのセリフを無視するマナに、レイは思わず項垂れる。

「勇者によって剣に封じられていたはずの魔王が、今度はこの剣を抜きに来た。恐らくあの嵐は、その聖なる剣と、剣を守る聖域が引き起こした防衛本能です」

「で、でたらめだ! そこにいるのは邪悪なる魔王! すべては魔王の仕業なのだ!」

 あくまでも否定するジクスだが、ジクスは重大な墓穴を掘っていた。

「では、聞きますが、なぜあなたはこの者が魔王だと知っていたのですか? なぜここが魔王の城だと知っていたのですか? なぜここに来られたのですか?」

「ぐ、ぬぬ……」

 それを指摘され、ジクスは項垂れている。

 魔王レイネルの正体がレイだという事を知っているのは、レイ自身と、妹のミル。そして、自らそれを明かしたマナの三人だけ。にもかかわらず、その正体をどういうわけかジクスは知っている。更には魔王の城についてまで知っていた。

「さて、観念するのだ。そろそろ正体を明かしてもらおうか。ジクスとやら」

 台座付きの伝説の剣を両手で持ち上げ、レイはそれをジクスに差し向ける。

「く、くくく……」

 ジクスは再び壊れたかのように笑いだした。

「マナ。お前の身体は最高だ。ああ、しゃぶりつくしてえ~」

「…………っ!」

 下衆な事を言われて、マナは身体に虫唾を走らせる。

「だが、てめえは知ってしまった。知らなくていい事実に。だから、もうシメえだ」

 ジクスは目を閉じ、何かを唱えはじめる。すると、ジクスの身体は赤黒い禍々しい光に包まれて変貌していく。

 顔は崩れ落ち、その代わりに頭が二つ生えてくる。凶悪な狐と狼のような二つの顔に。身体は赤い鱗に包まれ、手足は鋭い爪を宿した屈強なモノへと変貌させる。

「なっ……」

 その姿を見て、マナは思わず身体を震わせる。でも今度は、ミルがマナを励ますかのように、マナの手をぎゅっと握った。

「アタシが付いているの。マナどの。だいじょうぶだいじょうぶなの」

「ミルちゃん……」

「これは古代魔法。姿を魔獣へと変える過去に存在した魔法なの」

「古代魔法……?」

「アタシが使うようなものも古代魔法なの。この時代には存在しないの。使える者がいるとしたら、それは普通の人間ではないの」

「じゃあ、やはりこいつが……お父様を」

 確信に至ったのか、マナは身体を震わせるのをやめ、魔獣へと変貌したジクスを睨みつける。

「ケケケ、楽しかったぜぇこの国はよぉ! たった一人の権力者の欲望をむき出しにさせるだけで、俺たちの思うが儘なんだからよぉ!」

「ジクス……!」

 どうやら、ジクスはもう隠すのをやめたらしい。という事は、ジクスが人の心の欲望のリミッターを外す例の魔法を使った張本人の可能性が極めて高い。

 マナは激しくジクスを睨みつける。

「クク、いい表情だなぁ。お前みたいに気高い女は色々いたっけなぁ。いろんな女を食らってきた。国をまともにしようと事を起こす真面目な女をなぁ。だが、ことあるごとに理不尽を押し付け、支配し、女を食らい続けた。気持ちかったぜぇ、メス共のナカはよぉ~~!!」

「この……下衆がっ!!」

「今度はてめぇの番だマナァ~~! そこの魔王と、小娘を葬った後、好き放題しゃぶりまくりで快楽のソコに突き堕として調教して腰を振る雌豚にしてやっからよぉ~~!」

「…………っ!!!」

 マナは杖を掲げ、頭上に光の球体を作り出す。その球体からは光り輝く光線が放出される。

 光の光線が魔獣となったジクス目掛けて直進する。

「トロいんだよぉ、じらしプレイかぁ!?」

 ジクスは上に高く飛び掛かり、その光線を回避する。だが。

「トロいのは貴殿の方だったな」

「なに!?」

 マナが放った光の光線は進路を変えて、円を描くかのようにグニャグニャと曲がり吸収されていく。吸収先は、レイが持つ銀色の剣だった。

「マナ殿! 武器屋で武器買っておいて正解だったようだ! 流石マナ殿だ!」

「いいから早くそれを放って!」

「わかっている」

 竜を倒した時のように、レイはマナの魔法を銀色の剣に吸収し、剣を光り輝かせる。

 マナの魔法の色と同じ色のオーラを纏った銀色の剣をレイは頭上にいるジクス目掛けて振り下ろした。

 光り輝く斬撃波がジクスに襲い掛かる。

「無駄だぁ! その安っぽい鈍じゃこの俺はイかねえぜ!」

 ジクスは鋭い爪を振り下ろし、その斬撃波をいとも簡単に相殺させる。

 そして、ジクスはその真下へと着地する。

「そ、そんな……。あの技をいとも簡単に……」

 落胆するマナだったが、レイはまだ諦めてはいない。

「ミル!」

「今やってますの! うぁああああ!」

 一方のミルは頭上に両手を掲げて、目を閉じている。

 禍々しい紫色の光が、ジクスの身体を包み込んだ。

「ほう? 即死の古代魔法か。だが、無駄なんだよぉ!」

 ジクスはおぞましい雄たけびを上げると、その紫色の光は消えてなくなる。

「アタシの魔法が、効かないの……」

「ハッハッハ! 古代魔法の前では古代魔法は無力! 所詮はガキ! 知識が浅いぃ!」

「くっ、研究不足……でしたの……」

「ハハハハハ! こっちの番だぁ!!」

 ジクスは狼の顔と狐の顔の両方の口を大きく上げ、そこから雄たけびを上げる。

「きゃぁあああ!! なに……これ……」

「体が……吹き飛ばされますの……いやぁあああ!」

「くっ……ぐあああああ!」

「「きゃぁああああああっ!!!」」

 ジクスの雄たけびは、大気を揺らし、そして三人を吹き飛ばす。マナもミルも、更にはレイまでもが、壁に思いっ切り叩きつけられる。

「くっ……うぅ……」

「ち……」

 その場にいる全員を吹き飛ばす圧倒的な強さ。三人とも膝をつかせ、大きく疲弊している。そんな三人を嘲笑うかのように、ジクスはそれを見せつける。

「これ、なーにかなぁ?? ケケケケケ」

「そ、それは……!」

 マナは目を大きく見開く。ジクスが手にしているのは、レイが大切に持ち歩いていた伝説の剣。銀の剣を使い、更にはその後吹き飛ばされたレイ。どうやら、伝説の剣を手放してしまっていたようだ。

 だが、驚くべきなのは、誰にもまともに持つことが出来なかった伝説の剣を、よりにもよってジクスが、しかも片手で、いとも簡単に持っているという点だ。

「魔王にこんなものは似合わねえ!」

「ぬう……」

「魔王であるお前が、勇者様の大切な武器を持ち歩くぅ!? 笑わせるなぁ! 本当に魔王が勇者になれるとでも思っていたのかぁ!!?」

「くっ……」

 屈強な身体に変貌しているとはいえ、自分ではまともに持てなかった伝説の剣を、目の前にいる下衆野郎がいとも簡単に持っている。その事実が、レイの心に重くのしかかる。

「魔王である貴様が勇者になどなれるわけがないのだ! 馬鹿みたいな野望は捨てることだぁ!! 魔王は魔王らしく剣に封印でもされていろぉ!!!」

「…………」

「レイさん……」

 顔を歪ませ、唇を噛むレイ。今までの図太さはどこへやら、今のレイはただただ身体を震わせていた。

「所詮私は魔王……か」

 ふ、とレイは鼻で笑う。

「アイツのように、剣を身に付け、人々から慕われる。そのような輝かしい存在に私はなりたかった。だが、私は魔王。その気になれば世界を壊すほどの力さえある」

 そう言いながら、レイはゆっくりと立ち上がる。

「ミル。マナ殿。勇者ごっこに付き合わせてすまなかった」

「兄さま?」

「レイ……さん?」

 静かな笑みを浮かべながら、レイはこう続ける。

「せめて、コヤツは倒す。だが、その後は、私の事をどうか殺してくれ。二人とも」

 レイは目を閉じ、拳をぎゅっと握る。すると、レイの身体全身から禍々しい黒いドロドロとしたものが溢れ出て、レイの身体を覆いつくしていく。

「兄さま……!? 待って! それをやったら兄さまは二度と正気ではいられなくなるの!」

「え? えっ!?」

 事態を飲み込めないマナ。だが、マナの目の前にいるレイは、黒いドロドロとしたものに既に覆われている。

「兄さま……兄さまぁ……うわぁあああああああん!」

 レイのその姿を見て、ミルは泣きわめく。事態を飲み込めないマナはミルの顔をじっと見た。

「ひっぐ……。あれは……魔王魔法レイネル。これを使えば、兄さまはもう、もう……、二度とあの剣を手にすることなんてできないの……っ!」

「えっ……」

「兄さまは……文字通り魔王になるの……」

「なっ……!?」

 例え剣が抜けなくても、例えマナに違うと言われても、それでも自分は勇者だと信じ、そうであろうとする。それがレイだった。

 だが、そんな彼が本当にその道を諦め、魔王としての自分を受け入れる。

 それは、これまでのレイの行動からはにわかに考え難いものだった。

「うそ……でしょ……」

 少なくともそう思っていたマナにとっては、目の前の事実に対して、戦慄するには十分すぎるものだ。

 

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