第4話 新たな同居人
ある日の夕方。
やはりレオンはやることもなく、部屋の中を掃除していた。
すると、ドアがノックされる。
突然のことでレオンの身体が
外からはエドの声が聞こえる。
彼はレオンをこの国に連れてきた
「……どうぞ」
「よう、元気にしてたか?」
エドはここ1、2週間ほどカイの前に姿を見せていなかった。
(また王になれって
とレオンは思い身体がこわばる。
エドの後ろで
(まさか、自分のように
レオンはエドを
「この子は?」
瞳のほうは髪よりも薄く
エドに娘がいるなんてレオンは聞いたことはなかった。
「ああ、こいつはミーシャ。俺の友人の娘さんだ。ミーシャ、コイツはカイ、この国の王だ」
レオンは否定しようとするが面倒くさかったので開きかけた口を閉じた。
代わりに疑問に感じたことを
「友人って?」
「戦死したんだ。この子はそいつに
(友人が戦死……、もしかして、ルイアーナが
レオンの背中に寒気が走る。
「安心しろ。オマエじゃない」
レオンの考えていることがわかったのか、エドがつけくわえてきた。
「そ、そうか。で、この子を……どうする?」
「一時的にここで
レオンとしては、与えられた部屋があまりにも広すぎるため、かなり居心地が悪かった。
それに、この少女を見ていると妹のエレインを
「別にいいが……」
レオンがそう返答すると、エドは部屋を出て行こうとする。
その背中はどこか小さく見えた。
レオンはエドから視線を外し、部屋に入ってきた少女に視線を移した。
ミーシャと呼ばれた女の子は薄汚れた服を着ており、髪はぼさぼさだった。
(掃除をした後で入ろうと思ったんだが……)
カイはため息をつきながらも、簡易風呂にミーシャを入れ新しい服にきがえさせた。
「ご飯でも食べるか?」
ミーシャは何も言わずにコクコクとうなずいた。
レオンはすぐさま準備して、料理がテーブルのうえにならべる。
「……いただきます」
ミーシャは小さくそうつぶやくと、
「……お……いしい」
そのまま一生懸命食べていくと、突然ミーシャの
「ど、どうした、なにかまずかったか?」
「ち、ちがう。ただ泣きたくなっただけ……」
少女の涙に
食べ終わって涙をふいてから、ミーシャはゆっくりと口を開いた。
「私のお父さんは、……あのオジサンに殺された」
「あのオジサンってエドのことか?」
うなずいた少女にレオンは言葉を失った。
(つまりエドに殺されたのに、ミーシャの父親は彼にこの子をたくしたのか? 意味がわからない)
とレオンは頭を悩ませたが、ミーシャは
「村のみんなで
(村のみんなで引っ越し? 村をでて難民になったということだろうか? エドがそのときに、この子に会ったのか……)
「私、オジサンにお父さんの剣を渡されて、俺を殺してくれって頼まれて。だけどできなかった……」
ミーシャはうつむいてしまう。
レオンはミーシャに近づいて、背中を
涙をこらえようと必死だった背中が
「ウゥ……、ゥッ……、」
食事の手が止まりミーシャの栗色の
※
ミーシャはしばらくしてから
かなり
レオンは部屋にあるベッドに寝かせた。
「もうひとつベッドも必要だな。今はそれどころじゃないが」
レオンは部屋をでて、エドを探した。
どうしてもミーシャの話の内容が気になってしまったのだ。
エドは城下町を一望できる巨大なベランダで外を
「俺はな、昔カルバで騎士をやっていたんだ」
「だけどギフテルとの最初の戦争。あまりに激しくて戦場一帯に死体の山が
レオンが
今まで一人でため込んできたであろう不満をぶちまけるように。
「元王子は
「もしかして、それで、そんなことで
「ああ」
王子カイはすでに死んだ。
盗賊の連中も。
レオンは行き場のない怒りをなんとかおさえる。
「それがミーシャとなんの関係がある?」
「ルイアーナを襲う前にある村を襲った。そのとき運悪くカルバの騎士とはちあわせしちまった。そのなかに友人、ミーシャの親父がいたんだ」
「それで、その人を殺してしまったのか……」
「そのときアイツは俺に『
レオンは質問を続ける。
「ミーシャの居場所を知っていたのは、カルバの騎士だったからか?」
「もともとミーシャのことは、あの子が
レオンは、ミーシャに殺せと頼んだエドの真意を聞いた。
「俺にもわからねえんだ。ただミーシャの絶望した顔を見たら自分の首を
レオンは故郷で起きた襲撃を思い出しながら強く言う。
「実際に盗賊の奴らを斬っても俺の気持ちは晴れなかった。怒りはそんな簡単に収まる物じゃない」
「体験談を聞かされちゃ、何も言い返せないな」
エドはそれ以上何も話そうとせず、レオンはその場を後にした。
※
部屋に戻るとミーシャは眠り続けていた。
しかし、すごく苦しそうに左手を何もいない天井に向けて伸ばしている。
「パパ、行かないで……」
ミーシャの左手が震え、
まるでミーシャは、レオン自身の
家族を失い、居場所を失い、何をこれからすればいいかも分かっていない彼女がレオンと重なった。
「……大丈夫。ここにいるから」
レオンは手に力を込める。
安心したかのように、ミーシャの身体全体から力が抜けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます