間章 嫉妬の魔女

プロローグ 嫉妬の魔女

 私は今まで嫉妬しっとばかりしてきた。

 皮肉ひにくにもそのおかげで誰にも手に入れられなかった強大な魔力を手に入れることもできたわけだが。

 


「……いたい……」



 今、キリア城の中にある自室のベッドにかされていた。

 いたる所に痛々いたいたしい傷がある。

 はたから見たら虐待ぎゃくたいを受けた子供のようにうつるだろうか?

 しかし、私はそんな子供ですらうらやましいと感じてしまう。

 それだけ自分の負った傷は深かった。

 サザンの1件から1か月が過ぎようとしていたが、いまだに本調子ほんちょうしではなくベッドで寝てることが多かった。



「ティアラ、今いいか?」



 部屋の外から聞き覚えのある声がした。



「……大丈夫……」



 短くそう答えた後、とびらがゆっくりと開く。

 そこには私と同じように全身の至る所に傷を負ったキリアの団長が立っていた。

 彼も以前の戦いで重傷じゅうしょうった。

 しかし、その傷も早くにえ、今はささえがあればある程度ていど動くことができていた。



「……何か……用……?」


「特に用はないけど傷の具合ぐあいはどうかなって」


「……平気……」



 最近、彼は先日の戦いで傷を負った者の見舞いに奔走ほんそうしているらしい。

 カイの後ろからは私よりも一回ひとまわり小さい少女が食事を持って入ってきた。



「ティアラちゃん、昼食を持ってきましたよ。食べられますか?」



 キリア城でメイド長をつとめるなぞ幼女ようじょ・スーさんがトレーにのった昼食を持ってきてくれたようだ。

 彼女は私の近くにあったつくえの上にトレーをのっけて、そのまま部屋を後にした。

 部屋に残ったカイは一度私を見て安堵あんどの息をもらす。



「大丈夫そうで良かった。何かあったら遠慮えんりょなく言ってくれ」


「……見張みはり……」


「大丈夫だ。傷のえた兵にやってもらっている。今はしっかり休んでくれ」



 カイはそれだけ言うとすぐに部屋を出ていった。

 彼も多忙たぼうだ。一日中書類と向き合ってる日も多く、その合間あいまってこうして見舞みまいに来ている。



「……おなか……へった……」



 おなかが鳴ったのを聞いて、私はトレーをとった。

 パンに温かいスープにサラダ。

 栄養満点えいようまんてんの食事をとりながら。



「……料理出来て……いいな……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る