第4話 エレインの悩み
村の人達の
「れ、レオンはいるか!?」
「どうしたの、村長のオジサン?」
村長のオジサンは村のために一生懸命働いており、彼の許可もあって教会の広間でレオンは修行をすることができた。
その見返りとして、とある事でレオンに頼ることがある。
「村のはずれに魔物が出たのだ!? すまないが、
この村は森が近くにあったり、反対側の荒野には魔物が住んでいたりと、かなり危険な場所で、よくレオンに討伐依頼が来た。
「気を付けるんだ、レオン」
「無理はしないでね」
自宅から
レオンは剣の握られた手を大きく振りながら。
「大丈夫だって! いってくる!」
※
今、レオンは村のはずれの荒野に立っている。
目の前にはワイルドボアと言われる、大人より一回り大きな獣が
しかし、レオンは動じない。
腰から剣を抜くとワイルドボアは突進してくる。
「攻撃が単調なんだよな……」
レオンはワイルドボアの
「クッ!?」
あとは足を
レオンは剣を
「ふー、こんなものか……」
「馬鹿者!? 後ろじゃ!」
突然の
レオンが声のしたほうに振り向くとワイルドボアが
「ナッ!?」
レオンは
短い
すると、レオンに向かって
「
ガリッタがレオンを
ガリッタはレオンの
レオンは子供のように言い訳をする。
「だ、だって、あれじいちゃんの獲物じゃん。俺に向かってくるなんて思わなかったし……」
「ム……。確かにそうじゃが、お前が油断したのも事実じゃ」
ガリッタは右手でレオンに頭に
そんなやり取りを村の
そのとき、村のほうから汗をかきながら村人が走り寄ってきた。
「た、大変だッ! 森からでけえ
ワイルドボアをあらかた片付けた兵が
「じいちゃん!?」
胸を苦しそうに
「馬鹿者! お前が行かんでどうする!? この村じゃレオンが一番強い。ワシを放って行くのじゃ」
「で、でも……」
そこに衛兵が近づいてくる。
「レオン、君は行ってくれ。一応、兵の
「じ、じいちゃんのこと、頼みます」
レオンは苦しそうにしている祖父を置いて、
※
熊が襲っていたのは村で
熊のもとに行くと1人の少女が
黒のセミロングに、畑仕事でもしていたのか
「おい、エレイン! 何やっているんだ!? はやく逃げろッ!」
エレインはレオンの呼びかけが聞こえていないのか、口元をパクパクさせている。
「我が前に立ちふさがる障害を
エレインの
しかし、人間とは比べ物にならない力を持つ熊にとって、その風は気持ちの良いものでしかなかった。
まだ魔力の制御がうまく行かないエレインはすぐに息を切らしてしまう。
その光景を
(いや、たったあれだけの魔法で息が切れるのもおかしい。もしかして……)
風がやむと熊は2足で立ちエレインに
「に、兄さん……」
「何をしてるんだ!? どうして逃げなかったんだ!?」
「だ、だって、私も村の人の力になりたかったから……」
「はあ……。あとで親父たちに
しかし、目の前にいる熊はむくりと起き上がるとそれ以上動こうとはしなかった。
(敵意が全くない。どうしてだ……?)
「エレイン、動物と話せる魔法なんて便利な魔法を持っていたりはしないのか?」
「使えますが、まだ自分にしか付与することが……」
「それで構わない。できればこの熊と話し合ってほしい」
「わ、分かりました」
エレインは
両手を合わせ
「我に
エレインの身体が光りだす。
光が収まるとエレインは熊に
「あ、アナタはどうしてここに来たのですか?」
普通に人間の言葉を話しているようにしか聞こえないが、その言葉には若干の魔力が込められている。
熊もエレインに近づきながら返答する。
「グあああ」
エレインの耳はその言葉にピクリと反応する。
会話を終えると、エレインはレオンに耳打ちした。
「こ、このクマさんは友達が欲しくて森から出てきたそうです」
「は?」
レオンは最初耳を疑ったが、同時に敵意がない事にも納得できた。
「ええと、友達になってもいいが、村に手を出さないことが条件だな」
レオンは
目を
「兄さん、このクマさんは名前を欲しがっています」
熊から顔を無理やり離しながらレオンは叫んだ。
「性格が丸い熊だから、『
「安直すぎませんか? 一応伝えますが……」
頬ずりが
だが、熊はその名前を気に入ってしまったらしく、再度レオンにのっかり頬ずりをしてくる。
急な話の展開についていけないレオンの顔には熊の毛で切り傷がついていたのだった。
※
その日の夕方、熊丸のことを村長に話をつけ
ガリッタのほうはレオンがお見舞いに行ったところピンピンしていて、ワイルドボアとの戦闘のことでレオンは説教を受けた。
その帰り道、エレインはレオンの後ろからトボトボついてくる形で歩いていた。
「まあ、親父達に
「ち、ち、違いますよ。そんなことで落ち込んだりしませんよ。子供じゃありませんし」
「まだ、13の子供が何を言ってるんだ」
正直な指摘にエレインはムクれながら魔法を詠唱しようとする。
しかし、すぐに詠唱を止めてしまう。
レオンはエレインが何に
「もしかして魔法で熊、……熊丸に攻撃することを
「兄さんは何でもお見通しですね。……私は畑仕事をしている最中に熊丸が森の中から現れたことを聞いて、兄さんがいなくても私にもできることがあると思っていました」
エレインは自身の両手を見つめながら、声が
「なのに、熊丸を……殺すことを躊躇ってしまいました。下手をしたら兄さんまで……。もしかしたら、これから魔法を学んでも恐れが先行して足を引っ張ってしまうかもしれません」
エレインは自身の魔力が強大であることを知っているがために、生き物がどれだけあっさり魔法で死んでしまうのか分かってしまうのかもしれない。
そこからくる不安をレオンも持っているから、足がすくんでしまうことはよくある。
「生き物を殺すことは生半可な物じゃないからな。今では簡単に倒せるようになったけど、一時期ワイルドボアの突進で足をやられて、トラウマになったことがあるんだ」
「確かにありましたね、そんなこと……」
エレインは苦笑する。
あの時は、痛い、痛い、とのた打ち回ったのに医者に
「あまり笑うなよ、俺だってあれから戦うことの恐ろしさを知ったんだからな。まあ、それで人が
レオンは
「足を引っ張るなんて言ってるけど、エレインのおかげで熊丸と
エレインはレオンの考えを聞くとクスリと笑って感謝の言葉を告げる。
「ありがとうございます、兄さん。そう言ってくれて、なんか
「だけど、1人で熊丸と
笑顔から一転して、死んだような眼をレオンに向けるエレイン。
「兄さんのバカ! 思い出したくないことを……さっきの感動を返してくださいッ!」
エレインは両親の説教を受けた後も、しばらくレオンとは口をきかなかったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます