第10話 王宮の中で

 カイ達は外に群がる獣人たちをエド達に任せ、サザンの城の前に来ていた。

 


「とても前時代的だとは思えない建物だな……」



 カイの正直な感想が口かられた。

 城下町の建物はどれもボロかったのだが、城だけは石膏せっこうを用いてしっかりと作られていた。



「もともとは他の国の真似まねだったニャ。だけどカルバと関係をもってから改築かいちくされたんだと思うニャ……」


「思う……?」



 クロの言葉にカイは首をかしげる。

 カイの疑問に答えたのは隣を走るラミアだった。



「サザンはカルバから技術と材料を仕入れた。それでも改築するにはもとの城を壊して、地盤じばんから見直す必要があったの。地盤が弱かったら築城ちくじょうしても壊れる恐れがあるからね」


「……ミャー達は城を建てている間の数年間はカルバに滞在たいざいしてたニャ」



 クロは城を見上げながら。



「きちんと見たのは今回が初めてニャ」


「仕方ないと言えば仕方がないわね。クロ達は城ができたすぐ後に事件に巻き込まれた。カイ、アナタなら分かるわよね?」


「…………」



 カイ達は城の表門から侵入した。

 中は外の世界とは打って変わって上品の塊のような場所だった。

 壁にかかった灯りが室内を照らし、目の前にある2階へと続く階段の途中には肖像画しょうぞうががかけられていた。

 その中には眼鏡をかけ、杖をもった男がいた。



「あれはお父様ニャ。あそこまでしぶい顔はしていなかったニャ……」


「王族あるあるよね。カルバにもお父様の絵があるけど、美化されすぎてて『誰?』って感じることもあったし」


「ラミア様、お言葉には気を付けてくださいね。ここがサザンだったから良いものを。カルバでそんな事をおっしゃったら、城の者にしかられますよ」



 ラミアの言葉にミネルバが呆れながらも、カイ達は迷わず道を進んでいく。

 カイ達が向かっている場所は獣人たちを操っているであろう中心地だった。



「この先に元凶が本当にいるの?」



 ラミアが少々息を切らしながら前を走るエレインに話しかける。

 エレインは息を切らさないで、視界を邪魔する前髪を無造作にどけてから答える。



「まだ魔法を覚えて日がっていないラミア様とクロ様には分からないかもしれませんが、私も含め兄さんとミネルバは分かっているはずです」


「ああ、魔法に理解が深まると、魔力の流れっていうのもなんとなくだが分かってくる。たぶんこの先を曲がってまっすぐ進んだ部屋だ!」


「そこって……」



 クロが一瞬だけ言葉に詰まる。



「クロ様!?」



 ミネルバの叫び声とともに、道の奥のほうから風を切り裂く音がかすかに聞こえる。

 いち早く反応したミネルバ達エルフが振り返り、その方向から迫るナイフをはじく。



「カイ様は先を行ってください! ここは私達エルフがおさえます」



 ミネルバの言葉にカイは何も言わずに頷き、先を急ぐのだった。

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