第2話 少年の葛藤
レオンは与えられた部屋に1か月ほど
一日中外を
「やっぱりこの国は
窓からはキリア全体が見渡せる。
視界一杯に広がる『ゴミダメ』のような風景。
活気の『か』の字すらないほど
「…………」
キリアに連れてこられてから、冷静になったレオンは失った物の多さに気分が沈む。
祖父、父、母、村の人達。
城下の光景を見ていると失った物は戻ってこないことをレオンは
レオンは在りし日の思い出に
※
ある日、レオンはふと外に出ることにした。
「……城の外に出るくらいなら大丈夫なんだよな」
『
一度キリアを飛び出そうとしたとき、
「久しぶりの外か……」
城の外をしばらく歩く。
頭上は
歩いてすぐに外出したことを後悔し始め、
「すみませんッ!!」
「ふっざけんなよ!? このガキが俺様に石を投げてきたんだろうがッ!!」
以前、エドに石を投げつけた少年がいかつい男に石をぶつけてしまい、少年の母親が男に謝っていたようだ。
エドのときは
男は真っ赤な血もあいまってか、今にもあの少年に剣を抜こうとしているようにレオンには見えた。
すると少年が
「その食べ物は父ちゃんが外から持ってきた物だぞッ!」
「ウッセエええ! お前らみたいな
少年が
おそらくあの少年の言っていることは本当のことなのだろう。
少年の叫びに、周囲の人間がならず者に
しかし、その弱々しい叫びも男が剣の
「ど、どうか命だけはァ!」
「そのガキを
母親の
「死ねッ、クソガキ!」
風を切りながら母親もろとも少年を
「オマエのほうが、よっぽどクソだ」
レオンは我慢できずに彼らの間に入る。
そのまま男の剣を自身の身体で受ける。
その
破片で切った頬の痛みに男は悲痛の声を上げた。
「イッテッえエエええええエエッ!? なんなんだテメエエえええ!」
男は怒りでさらに顔を赤らめレオンに
その手首をレオンは掴み背負い投げをする。
勢いもあって男は見事に背中から地面に叩きつけられ気絶した。
レオンは男が奪ったであろうウサギを少年に渡そうとする。
「はい、君のだろ……う」
レオンの手にあったウサギを少年は
母親のほうはレオンに『すみません』と一言だけ口にして、少年の後を追いかけるのだった。
あの少年がレオンに向けた目には敵意しかなかった。
まるで周りにいる奴らは全員敵だ、と言わんばかりに鋭く冷たかった。
レオンは気絶した男を放置してその場を後にした。
※
そのあとレオンはキリアの端に足を運んだ。
「ここからしかキリアを出られないんだよな……」
キリアは国全体が
しかし、門から出る人も、入ってくる人も、生気はなく死人のような顔つきをしていた。
なかには門近くで
レオンは心配になって近づく。
「大丈夫か……ウッ!?」
レオンが倒れ伏している男の顔を上にすると、気持ち悪さのあまりそこで
その男は既に死んでおり、
男の破れた服からは
「ボウズ、そこに近づいちゃいかんよ。病気がうつるぞい」
レオンに話しかけてきたのは白髪が伸び散らかった老人で
「ここで死ぬ奴らは外の野獣の強さに心折れた者たちじゃ。むしろこの国の中にいたほうがよっぽど安全じゃ」
「だけど何を
「ほれ、少々刺激が強いが」
老人の指したほうにレオンは目を向けた。
野獣の
そこから肉を
良い肉を取り合っている人間が争い、負けた者は地面に倒れ伏し空腹のあまり動けず苦しみの声をただただ上げていた。
そんな
「城の近くはマシじゃが、ここは
「だけど、これから……どうするんだ?」
「潔く死ぬか、生きるために争うかじゃな」
「オジサンも?」
老人はレオンの質問に首を横に振る。
「今のワシではアイツらにも勝てやしない」
「……」
老人はぎこちなく笑う。
老人も食料をめぐって争ったのか、歯が欠け、白髪がむしられた部分もある。
老人は城のほうを眺め。
「いったいこの国の王は何をしておられるのか?」
レオンはその言葉に胸が
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