第1話 目が覚めると……
「こ……こは?」
レオンはゆっくりと目をあける。
(灰色の
だんだん視界と意識がはっきりしてきて、
「なんだ、これ?」
そのとき部屋の
見た目は
「おお、起きたか、どうだ調子は?」
「……最悪の気分だ。なんで俺は拘束されてる?」
力を入れたりしても、拘束具はビクともしない。
「力任せに解こうとしても、無理、無理。それ、クズ王子が
レオンは男に質問を投げかけた。
「……それで何の用だ? 俺はあの男にトドメをさせたのか? なんでこんなところに縛り付けられているんだ? それに、オマエは誰だ?」
「いっきに質問するなよ。ええと、まずは俺の名前か。俺はエド。キリアの兵士だ」
「キ、キリア?」
エドと呼ばれた男の話だと、戦争しているギフテル帝国の支配下にある小国らしい。
「で、次はオマエの、そっくりさんについてな。アイツは、このキリアの王子・カイだ。そんであの村を攻めたとき、オマエに殺されたよ」
エドはそう言っているが、レオンはそこら辺の記憶が
その王子の首に剣を当てたとこまではレオンもはっきりしている。
「で、最後だが、オマエにはキリアの王になってほしい。そのために俺があの村から運んできて、暴れないように
「……意味がわからない。なんで俺がこの国の王になれ、って話になる?」
「まあ、おいおい話してやるから」
そう言って、エドは拘束具をとった。
話からレオンの目の前にいるエドは村人全員の
レオンは上手に動かせない身体に力を入れて、
「な、んで、動かない!?」
攻撃する姿勢を
さらに力を込めようとすると、気絶しかねないほどの激痛が全身を襲う。
「そうだった。オマエが
『契約の書』、相手の血をしみこませた
レオンに走った激痛は書かれた内容を守らなかった場合の
続いてエドは3本の指を立てた。
「オマエが守らないといけないことは3つだ。1つはエド、つまり俺を攻撃しちゃダメだ。2つ目はキリアの王・カイになることを拒否してはならない。最後に、オマエが俺のこれから出す指示に
(なるほど拒否権がないとはそういうことか……)
とレオンも納得する。
殺気のこもった視線をエドに向けるレオン。
「で、拘束をといて、どこに連れていくつもりだ?」
「一応、
当然、この指示にも従わないといけない。
拒否しようとするとレオンは激痛に襲われる。
抵抗を
壁は傷み、外から差し込む光が
エドが説明を始める。
「キリアの城の中だ」
「城?
「こう見えても、まだマシなほうだぜ」
エドとレオンは城の外に出た。
そこには城なんかより比べ物にならないほど、荒れ果てていた。
家屋と呼べる物はなく、地面の上で倒れ伏している者たち。ハエにたかられている者もいた。
「な、なんなんだ、ここは!?」
「キリアはギフテル帝国とカルバの国境に位置してる。
「つまり、この人たちは
エドはため息をつきながら言った。
まるで、オマエも分かっているだろう、とでも言いたげに。
「あの王子はそんなこと、しちゃくれない。面倒くさいことは丸投げして城のなかで
「だったら、オマエが王の代わりをやればいいじゃないか?」
「俺には務まらないな、なんせ……」
エドが何か言いかけたとき、その頭に石があたった。
しかし何事もなかったかのように、石が投げつけられたほうを見ると。
ガリガリに
すぐさま、それを見た母親らしき人が少年に謝らせた。
「申し訳ありません、申し訳ありません、うちの息子が。罰なら私がうけるので、どうかこの子だけは……」
普通の謝罪とは違う。
母親のそれは
「さっさとガキをつれて失せろ」
エドはそう言って、母親や少年に見向きもせず先を進んだ。
少年と母親が見えなくなると、レオンのほうに振り替える。
石の当たった
どことなく
「俺はあの王子に仕えていたせいで、色々な仕事を押し付けられたあげく失敗するこ
とが多くてな。ここの人たちから、けっこう
「でも、それだったら俺がやっても変わらないだろ。そのカイっていう王子と同じ顔だから」
「さっきも言ったが、あの王子はこの国のことは丸投げしていたから、国民はアイツの顔さえ知らない。それにオマエほど条件に合った人間は他にいない」
「?」
「あの王子はギフテル帝国の王の息子でな、俺は王様に顔知られているから、表立って王はできねえんだ」
「……なるほど」
エドは、調子のよさそうな声から一変して、真面目な声で。
「それで、決心はついたか?」
エドは何があってもレオンに王になってもらいたいらしい。
だけど一つ重要なことがあった。
「そのまえに一ついいか?」
エドは無言で
「オマエは、あの盗賊が村に攻めてくるのを止められなかったのか?」
「ああ」
「なんでだッ!?」
「……今のオマエと同じだ。『契約の書』による
この『契約の書』の効力は、レオン自身が身をもって経験した。
怒りは収まらなかったが、納得はできる。
「ならもうひとつ、村に女の子を連れたクマを見なかったか?」
「ああ、いたな」
「アイツらに何かしたのかァッ!?」
エドの
「そう興奮すんなって、安心しろ。クマは、女の子と森の中に逃げてったぜ。もしかして知り合いか?」
「親友と妹だ」
「俺が心配すんのも、お
「……うまくいけば
「そうか」
確かにキリアが引き起こしておいて、エレイン達の心配をするなんて
それだけはなんとなくレオンにも伝わった。
「……」
レオンは今後のことを考え、しばらく口を閉じる。
(今は、エレインも心配だが『契約の書』のせいで逃げることすらできるか
レオンが
「やってくれるか?」
「……」
「まあ、良い答えを期待している」
答えが出ずにいるレオンにエドはそれ以上頼んでこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます