第4話 開かれた国交
今日は、朝からキリアはテンヤワンヤだった。
カルバでは事件を引き起こした犯人がサイラスであり、キリアはラミア達を保護していたという事実が広まっていた。
それを受けて、一時的だが、カルバとの交流が始まったのだ。
カイがキリアの見回りをしながら、馬車の
「カイ!」
「ミーシャじゃないか、もしかして、オマエも帰るのか?」
ミーシャの父、ダグラス=レレイはカルバの騎士で2年前にエドとの戦闘で命を落としていた。
ミーシャは少し
「どうした?」
「実はね、故郷にお父さんのお墓があるの。あの村を離れてから一度も行ってなかったから、2年ぶりに掃除に行こうかなって」
「いいことじゃないか、だったらそんな顔するなよ。親父さんが悲しむぞ」
「……キリアもわたしにとって第2の故郷なの。だから、ここを出てくのが寂しいんだ」
「そんなこと考えていたのか。安心しろ。またここに戻ってくるだろ」
「……うん」
ミーシャの顔はやはりまだ晴れ晴れとはしなかった。
カイは会話を盛り上げようと話しかける。
「そ、そういえばミーシャの故郷はカルバの近くだったよな」
「うん、だけど、それがどうかしたの?」
カイはもともと明日用事があるので出かけるつもりだった。
(ミーシャはアイツのことを知っている数少ない存在だし大丈夫か……)
「なあ、ミーシャ。出発を明日に
「え、え、なんで? どうして?」
「いや、明日、俺も丁度行くところがあったから。一緒にどうかなって?」
ミーシャの暗く沈んでいた顔は一転して
「いいの!? 明日、本当に一緒に来てくれるの!? ヤッターッ!!」
(やっぱり一人が寂しかったのか)
カイはそんなことを考えながら、予定を伝えた。
「ああ、明日ここに集合でいいか?」
※
翌日、カイはラミアとクロを連れて、昨日と同じ場所に向かっていた。
クロも白色の髪を茶髪に変え肌の色を白くし、尻尾と耳も隠した。
また、平民に見える服装だった。
2人に外を歩かせるときは目立たないように、一般人と同じ格好をしてもらったのだ。
ラミアは自身の着ていた服の胸元を押さえて文句を言った。
「なんか、サイズが少し小さいような気がするんですけど?」
「仕方ないニャ! ラミアの無駄にでかい胸がおさまる服なんてそうそう用意できないニャッ!」
「なんですって!? ……というか、クロ、もしかして自分の胸の大きさを気にしているのかしら?」
「ニャッ!? そ、そんなわけないにゃ!!」
2人の言い争いはしばらく続いたが、不意にラミアがカイに話しかける。
「というか、私たちにこんな格好させる理由はわかっているつもりよ、カイ。だけどね」
ラミアが不服そうな顔をしているのは、とても普通の反応。
なにせ。
「アンタが目立ったら、意味ないじゃないッ!!」
カイは軽装を身に着け最低限の武器しか持ち合わせていなかったが、顔が国民に知られている以上人が寄って来ないわけがなかった。
人混みの中でラミアが文句を言った。
「なんでこんな人通りの多い道を通るわけ!? 城から直接馬車に乗れないの!?」
「無理だ。城下町の道はそこそこ広いが、普段の交通量も多くて馬が通れても馬車は通れない。だから馬車停留場に向かっているんだ」
人波をかきわけていくが、目的地に向かっているのかさえカイ達には分からないのだった。
※
やっと、目的地の馬車の停留所についたが、約束から1時間ほど遅れてしまった。
そこには、
「遅れるのはわかるけど、どうして、この子達も一緒なわけ?」
「ああ、昨日言った用事が彼女たちだからだよ」
「へー、ふーん。…………期待して損した」
「なんか言ったか?」
「なんでもないッ」
ミーシャは怒っていたが、ラミアとクロは冷たい視線をむけてきた。
そしてカイを
「アンタ、もうすこし、女心を学んだほうがいいわ」
「同感ニャ……」
※
そんなこんなで。
馬車に乗り込むと、前方と後方に2人用の椅子が配置され、向かい合うようになっていた。
ミーシャとクロが前方の椅子に座り、。ラミアとカイがその向かいに座っていた。
馬車が出発しても、中は沈黙が支配していた。
それを見かねて最初に口を開いたのは、
「か、カイ。ミャーたちはどこに向かってるにゃ?」
「あ、ああ。カルバだ」
「か、カルバ!? ミャーたちが入ったら、国中大騒ぎにゃ!?」
「一応、先方には許可をもらっているから、大騒ぎにはなるだろうけど問題は起きないと思う」
そこで、ラミアが会話に加わる。
「カルバに着いたら、この変身魔法、解いてもいいわよね?」
「ああ、もちろん」
ラミアはふとミーシャに見られていることに気付き、声をかけた。
「ええと、アナタ。名前なんて言うの?」
ラミアの質問に
「……ミーシャ。ミーシャ=レレイ」
するとラミアは目を見開き、ミーシャに問いつめた。
「も、もしかして、ダグラス=レレイの娘さん?」
「……うん」
ラミアは急に押し黙ってしまう。
ミーシャにとってラミアは、亡き父の仕えていた王族の一人である。
同じようにラミアにとってミーシャは、死なせてしまったダグラス=レレイの娘なのだから。
「……そう」
ミーシャの自己紹介の後、馬車内の空気が一気に重くなった。
喋らないミーシャとラミアを尻目に、カイとクロは会話を盛り上げようとしたが、その空気を入れ替えることはできなかった。
そんなギスギスした雰囲気が2日続きミーシャの目的地に着いたのだった。
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