第14話 エクスプロージョン

 カイは、サイラス王・ガレスの槍に押され始めていた。ガレスの突きが速すぎて、かわすのがやっとだった。

 さらに、いくらかわしても、次の突きがすぐ目の前にせまってきている。



「その程度かよッ、キリアの王子の実力は!?」



 ガレスは調子づいてきている。

 負けてしまうと感じたカイは意を決して、突きをかわすのではなく、剣で軌道きどうをそらしながらガレスのふところにとびこむ。



「フッ、ようやくふみ込んでくれたな……、『紅炎プロミネンス』」



 ガレスの身体が急に発熱した。

 まるでガレス自体が爆発したかのような衝撃しょうげきとともに、カイは後ろに飛ばされる。

 魔甲まこうで守りを固めてなければ、カイの全身はすみとなっていたであろう。

 実際、魔甲まこうのおおえなかった剣は溶けていた。

 ガレスは、全身が火傷したカイを見て、不気味な笑みを浮かべる。



「ギャハハハハッ、苦しかったか? 熱かっただろ? これは『紅炎プロミネンス』って言うんだぜ。まさかこれをえきるとは予想外だ。読んでいたのか?」



 ガレスの言う通りだった。近づこうと思えば何度でも近づけた。

 しかし、相手がさそっているのではと疑いたくなるような甘い突きが、鋭い突きの中に散りばめられていた。



律義りちぎに説明してくれて感謝しているが、これでオマエもおくは出し尽くしただろ。それに今の攻撃でオマエは魔力をかなり消費したはずだ」



 カイは使えなくなった剣を捨て、もう1本の剣をこしから抜いた。

 しかし、ガレスには余裕があった。



「奥の手っていうのわよぉ、最後の一撃を決める隠し技だぜ。今のが奥の手だと思っているなら、勘違かんちがいもいいところだなァ。あと、まだ魔力は残ってるぜ。もともとは今ので貴様を倒して残った魔力でキリア兵とカルバ兵を『爆炎エクスプロージョン』で跡形あとかたもなく消す予定だったが」



 カイは剣をかまえながらガレスの様子をうかがう。



(まだ、あるのか。それとも精神的なプレッシャーをかけるためか?)


「だが貴様には最高火力をもって消しとばさないといけないようだなァッ!!」



 ガレスの槍の先から火球がカイに向かって放たれた。

 しかも、1つや2つではない。

 10個はくだらない。

 カイは警戒を一気に強める。



紅蓮ぐれんの炎をもって対象を消しとばせ、『爆炎エクスプロージョン』ッ!」



 ガレスの詠唱えいしょうにあわせて、辺り一帯が、きらめきとともに吹き飛ばされたのだった。

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