第6話 大規模な復興作業 パート1
「それで俺はなにをすればいいんだ?」
翌日、レオンは、カイと名前を改め今後の活動をエドにきいた。
「知らん。あの王子は王らしいことを特にやってるのを見たことはないからな」
「仮にもこの国の兵士だろ。質問を変える。見たところ、この国は、衣、食、住のすべてが不足しているということで間違いないな?」
「そうだ。気候条件が悪くて作物の育たない。服を作るための材料や職人もいない。城下に立っているような家も、かなり古くからあって天井がない家なんて至る所にある」
「そういえば城に食料はあるのか?」
レオンがキリアに来たばかりのころ、エドは食材を部屋にまで運んでくれていた。
かなり新線だった記憶があった。
「あの王子の親父さん、つまりギフテル帝国の王が、王子に送ってきた物だ」
「じゃあ、この国の人たちはどこから食料を?」
「外で狩りをする奴らもいるけど、国民の大半は食にありつけない状態だ」
それはカイも城下で見た。
死んだ野獣の肉を取り合う人間の姿を思い出し、吐き気を覚えるがなんとかこらえる。
「それならば、まずは食をどうにかしないとな」
※
カイはその日、
日差しが強すぎるわけでもなく近くには川がながれているから、水さえ引いてこれれば、農業は出来そうだった。
「ここらへんに野獣の生息地はないか?」
「この先行ったところに一般人があまり近寄らない平原にいるが、そこから食用肉でもとってくるつもりか?」
「そうだ、まずは食料をどうにかするぞ。城にも少しはあるんだろ?」
「ああ、だが人数分は……」
「切り詰めれば少しはもつだろ。それと国民が
「半年か、けっこう長いな」
「これでもギリギリだ。作物が今から半年で育つかどうか」
カイの指示を聞きながら、エドが不意につぶやいた。
「それにしても、オマエにとっては、この国はカタキだっていうのに、ここまでやる気とはな」
「別にこの国の人たちが
「そうか」
※
その日の、午後。
「おお、こいつらはワイルドボアだぜ。群れでこられると
カイはエドにつれられて野獣がいるといわれている平原にきた。
今、彼らの目の前にいるのは、体長が自分たちより少し大きいイノシシ5頭だ。
そのなかの1頭が突進してくる。
カイはかわすと、横っ腹に剣をつきさし、両足で踏ん張る。
あとは突進の勢いで勝手にワイルドボアは
ルイアーナ村にいた頃、よく野獣狩りを頼まれていたので
「まずは一匹」
「さすがだな。まるで職人芸だ。俺も負けちゃいられない」
エドは対抗心を燃やしたのか、詠唱を始める。
「剣よ、我の願いにこたえ、その身を大きくし、敵の
すると、エドの大剣が一回り大きくなり、それを力任せに横にふった。
そんな適当な攻撃もリーチが長くなったので、ワイルドボア4頭をいっきに倒した。
その攻撃から生じた風が砂ぼこりを引き起こす。
カイはせき込みながら、
「おい、あまり肉を傷つけるような攻撃はやめろ。それに大胆な技を使ってほかの生き物を
レオンの忠告は遅かった。
大地をゆらす音が足から伝わってきた。むこうから
ワイルドボアの大群だった。
しかも、その先頭にいたのは通常のワイルドボアよりも圧倒的に大きい。
群れの中で争って出来たであろう傷だらけの身体は、
カイもよく
「キングボアだな。エド、あの中央にいる巨大なボアをしとめるぞ」
「ほかのは?」
「無駄に多く倒しても仕方ないだろ。あの1匹を倒せば、群れが俺らを攻撃してくることはないと思う」
「了解だぜ」
エドは、大剣の先端をキングボアに向けた。
同じ魔法『
カイは舌を巻く。
(すごい魔法だな。それに、あの大剣を持ち続けているアイツも異常だな)
突進の勢いを使って、キングボアの頭に突き刺さった剣は一瞬で串刺しにしてしまった。
残りのボアはキングがやられたことで、
そのままエドは巨大な剣を力一杯、地面と
「ま、ざっとこんなもんだろ。もどれ」
エドは大剣をもとの長さに戻す。
キングボアの死体が重い音を立てながら、地面に落ちる。
カイの身体全体を、ズシン、と衝撃が駆ける。
「すごいな」
「一応これでも兵士だからな」
「兵士ってのは、全員こんなに強いのか?」
「どうだろうな? キリアには俺ほどの奴はいないが、ギフテルにいけば俺以上の奴もいるぞ」
強くなることに以前から好きだったカイはエドの言葉に少々興奮してしまう。
「オレが見てきたなかだと、王子は同年代より頭一つとびぬけてるぜ」
「その王子ってのやめないか? 呼ばれてて変な気分になる」
「……じゃあ、『団長』ってのはどうだ」
団長という単語にカッコよさを感じてしまうカイは、にやけそうな顔を必死に抑える。
「……王子よりはいいかもな」
「決まりだな。それで、このキングボア、どうやって持って帰る?」
「さっきの魔法でこれを串刺しにして、エドが
「マジかよ、けっこう重いんだぜ、あの剣」
エドは文句をいいながらも、とらえた獲物を串刺しにして城に持って帰ったのだった。
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