第21話 温泉宿

「うぉぁぁぁ…寒いぃぃぃ…」


「我慢しろ…もうすぐだからな…」


防寒対策せずに来た結果がこれだよ。マジやばい!


「ビャッコぉぉぉ…暖められないぃぃぃ…?」


「温泉宿に着けば…暖まれるぞ…」


「今できないぃぃぃ…?」


「…無理だな」


「ダメかぁぁぁ…」


「全く…カエデ、くっつくぞ」


腕をグイッと引っ張られる。


「うわっ…」


「どうだ?少しは暖かいか?」


「うん…ありがとぉぉぉ…」


確かに体温はいい…


「…体温高めるなら走ってはダメなのか?」


「走ったら逆に寒くなるよぉぉぉ…」


走ったら汗をかくけどその汗によって寒くなるからね。注意。


「…前もこんな感じだったな…」


「そうだねぇぇぇ…こんなに寒くは無いけどぉぉぉ…」


ビャッちゃんとつがいになる日、温泉宿にいたなぁ…あのときはビャッちゃんがすごい嬉しくて泣き崩れた結果、目が腫れたって言うことになっちゃったからねぇ…


「そういえば最近絵を描いてないが…大丈夫なのか?」


「大丈夫大丈夫ぅぅぅ…でもそんな話よりもうすぐで着くよぉぉぉ…」


もう目前。挨拶して泊まらせて貰わないと!


…でも気づけばもう4時30分か…



「ごめんなさぁぁぁいぃぃぃ!」


「はーい!あ、ビャッコ様とカエデ!こんな遅くにわざわざ…」


「泊まらせてもらってもいい?」


「いいわよ?あ、でも今日はたくさんフレンズがいるわ」


「へぇ、誰が?」


「アミメキリンとミライとアリツカゲラ、つまりロッジの3人はいるわね?そしてカエデのおじいちゃんおばあちゃんの雪乃さんと理玖さんが…そしてハンターの三人のヒグマ、キンシコウ、リカオンがいるわよ?」


僕たちとギンギツネさんとキタキツネさん合わせて…12人か…多いな!


「まあ、好きな部屋使うといいわよ?」


「はーい!さ、いこっか?」


「あぁ」



部屋に向かう途中…


「おーい!おじいちゃーん!おばあちゃーん!」


「ん?」


「あっ!カエデ君〜!久しぶりですねぇ〜!」


「久しぶりー!」


「ビャッコ様もぉ〜!この目で見られて嬉しいですよぉ〜!」


「あ、あぁ」


やっぱ戸惑ってるよ。だっておばあちゃんは色々なことに積極的なんだもんね。

ていうか…この前お父さんがつぶやいてたけど老けないよね?これもサンドスターの力なのかな?


「そうそう、噂で聞いたぞ?つがいになったんだってな?」


「それ言ってくださいよぉ〜!」


「あはは!ごめんって!」


「双子もいるぞ?」


「双子ですかぁ〜!そりゃ楽しみですねぇ〜!」


「どうだ?カエデは幸せか?」


「そりゃもちろん!」


「じゃあ、ビャッコ様は?」


「私か?私ももちろん幸せだぞ!」


「ならよし!」


…「ならよし!」それっぽいセリフ…お父さんも言ってたような…


「私が予想するに…多分カエデ君みたいに元気が良くてビャッコ様みたいに威厳がある子供が産まれると思いますねぇ〜!」


「そうか?俺は逆だが…」


「なに予想してるのさ!?」


「だって楽しみじゃないですかぁ〜!レオ君の家だともう私たちはひいおばあちゃんとひいおじいちゃんの立場になるんですよぉ〜!」


なんの関係が…


「…俺たちが死ぬ時にはいくつ「ひい」がつくんだろうな?」


「もう50歳は行ってますからねぇ〜…せいぜい生きれてあと30〜40年ですかねぇ…」


「あ…寿命…」


すっかり忘れてた。僕たちは永遠の命があるから寿命なんかじゃ死なないけどみんなは…生き切ったら死ぬんだ…お父さんもお母さんも…レオもイナも…フレンズさんも…


「ん?何かあったか?」


「僕たち…実は死なないの」


「「死なない!?」」


「そうだ。私たちは永遠にパークを見守り続けると決めたんだ。カエデも神の夫、神の眷属としてみんなといっしょにパークを見守り続けると決めた」


「そうですか…でもぉ〜!私たちはみんなが幸せならそれでOKですよぉ〜!みんなが幸せなら笑顔で、安心して死ねますからねぇ〜!」


「そうだな!…そうだ!カエデ!」


「ん?」


「話が急に変わるが飲んでもらいたいものがあるんだ!」


「飲んでもらいたいもの?」


「そうだ!健康に健康を重ねた最強の野菜ジュースだ!」


…野菜ジュースか。自分で作ってしょっちゅう飲んでたけど…


「これだ!」


…おどろおどろしい色してるけど…大丈夫なの?


「えっと…何を混ぜたの?」


「10種の野菜、モロヘイヤ、しそ、パセリ、よもぎ、大根の葉、ほうれん草、ブロッコリー、ケール、春菊、小松菜だが?」


…野菜の中でも栄養価が高い野菜を混ぜただけのものじゃないですか!?

だからか!こんなにおどろおどろしい色してるのは!


「…まあ一応もらうよ。ちなみに調味料は?」


「効率よく、1日分の栄養を摂取するために塩分、糖分どっちも含んでいるぞ!」


よかったよ。これで何も入ってないは悲しいから…!


「へぇ…じゃあ、いただきます」


「…どうだ?美味しいか?」


「…ねぇ」


「どうした?」


「なんでこんなに美味しいのさ…!え?入ってるの野菜と調味料だけでしょ?」


「蜂蜜を入れてある」


「それだけで美味しくなるの!?」


「なる」


「…これは夢か何かかな…?」


「ところがどっこい、夢じゃない!現実だ…!そうだ、ビャッコ様も飲むか?」


「ならありがたく」


…ビャッちゃん、すごい恐れてる顔してるよ。覚悟したように唾飲んでるのがはっきりわかる。


「…考えたら味なんか考えずに栄養を求めすぎた混ぜ物が美味しくなるなんて奇跡だな!」


「そうですねぇ〜!」


「…確かに割と美味しいな…」


「よかった…これで美味しく無かったら何か裁かれそうだったから怖かったぞ!」


「いやそんなに私は怖くないぞ…?」


「そうだよ!ビャッコは優しいんだからね!広い心を持って色々なことを許したり僕を愛したりしてくれるんだからね!」


「ちょっ!?カエデ!?褒めすぎだ…!」


「ラブラブですねぇ〜!」


「いいんじゃないか?その愛さえあれば永遠に生きていく中でその愛は大事だぞ?これなら永遠に別れずに生きていけるんじゃないか?」


…そうでありたい。嫌いにならずにお互いに永遠に愛し合える環境が一番いい…


「お、噂をすれば…」


「カエデさんとビャッコさんではないですかー」


「連盟の集まり以来ですね!」


ハンターのみんなが来たよ。


「お久ー!」


「確かに久しぶりだな…」


「半強制的に連盟に入れられたと聞いたが…大丈夫だったか?」


「まあ…そうだな」


「そっちは?暇じゃない?」


「…暇だな。正直」


「セルリアンがいなくなったことで私たちの負担は無くなりましたが…仕事が無くなって…」


「どうせ暇ならみんなでどこかに行こうって話になって今日ここに来たんです!」


「あぁ…なるほど」


「まあ今日は雲行き的に雨が降りそうだったからな。ちょうどよかった。そっちは?ただ泊まりに来ただけか?」


「いや、デート」


「前からオレンジさんもデートに行くとか言ってましたが、デートってなんですか?」


「簡単に言えばつがいが旅行すること…かな?」


「なんだ、割と単純じゃないか」


「でもね?今回は妊娠祝いでもあるんだよ?」


「妊娠って…なんですか?」


「ん?オレンジから聞いてないのか?お腹の中に子供ができることだぞ?」


「子供か!?」


「そう!双子!」


「双子ですかぁ…双子って聞いたことはあるんですけど、性格とか似るんでしたっけ…?」


いやなんで知ってるのさ…


「そうだよ?オスが産まれたら…メスが産まれたらって考えると毎日が楽しいよ…」


「確かに楽しいが私のことも考えてほしい」


「もちろんだって!どうせ死なないんだからね!」


そんなふうに話してると、やっぱり予想してた通り…


「あー!聞いた通りだわー!」


「カエデさーん!」


「ビャッコ様ァァァ!カエデさァァァん!」


…このぶっ壊れ具合、ミライさんしかいない。


「お、久しぶり!」


「久しぶりですー!最近ロッジに来ないのでどうしたのかと思ってたんですよ!」


「あはは!ごめんって!でもねぇ?」


「あぁ。私たちはその…新婚っていうらしいから…色々準備してたんだぞ」


「新婚って…ミライ、わかるかしら?」


「そうですね!結婚したばかりのこと、つまりつがいになったばかりのことを言います!まあその様子だと妊娠しているようですが…ですよね?」


「あぁ。双子だ」


「双子なんですか!?」


「双子…あのときを思い出すわね…」


「あぁ、オオカミさんに向けて「三つ子ならかのー!」と言ってたあのときですか?」


え、キリンさんってお母さんに向けてそんなこと言ってたんだね?

ていうか双子と三つ子の関係ある?


「なにそれ知らないんだけど」


「そりゃあそうですよ!まだオレンジさんも来ていないときの思い出ですから!」


「そんな前!?」


それは予想外すぎる…てっきりお父さんとお母さんの子供が双子かと予想したキリンさんが発した言葉かと思った…


「…そういえば、ロッジの経営とか名探偵への道はどうなったの?」


「全然大丈夫ですよ!最近は色々なフレンズさんも来ますがみんな手伝ってくれるので!」


「私はミライが手伝ってくれるからかなり順調よ!」


「かなり成長してきてますよ!伸び代、ありますよ!」


「そっか!それはよかった!…アリツさん、お父さんとお母さんが使ってたあの部屋はいまどうしてる…?」


お父さんとお母さんがしっとりの部屋でしてたのもアリツさんからバッチリ聞いてる。聞く意味あったのか()


「はい!それは…」


「私たちが代わりに使ってるんですよぉ〜!」


「まああの部屋は音があまり漏れないからするのに最適な場所、だからな」


へぇ…50歳になってもやる気力はあるんだ。


「な、なるほど?」


「まあそんなところだ。ともかく、こんなところで立ち話を永遠と続けるわけにもいかない。そろそろ自室に戻るとするか」


「そうだね!また後で!」


「またな」


自室決めてなかった…早く決めて荷物置かないとね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る