第13話 会いに行こう。怪我してても。

決心した。僕は…



不死身…ヴァイスが言ってたな…


『不死身とは、永遠に死なないことなのです。僕的には絶対に不死身にはなりたくないのですよ!…え?なんでかって…?だって…死なないんですよ?死のうと思っても死ねないのです。みんながいなくなったとしても、死ねないのです。そんなの…僕は見たくないのです』


確かにこんなことを言ってた。そしてユルが…


『命のこと、ニンゲンは死ぬと他の生物に別の意思で生まれ変わる、と言う説があるのです。まあそれがどうなのかはわからないのですがね!ははっ!』


…もしそうだとしても、もう一度生まれ変わったビャッちゃんに会えるなんて絶対ないと思う。そして…お父さんが昔にこんなこと言ってた。


『いやー、こう見えてもお父さん、二回死んでるんだよ?1回目も2回目もどうなるかハラハラしたけど…おかげで今、こうやって幸せな生活ができてる!でもいつでもこんな奇跡が起こるとは限らないし、カエデにもこういうことが起きるのかどうかもわからない。だからさ?今を楽しも!自分の趣味を追い続けるのもよし!自分の好きになったフレンズさんと愛し合うのもよし!仲良いフレンズさんと一生友達でいるのもよし!自分自身が楽しめる生活は自分で作るんだよ!自分の永遠のパートナーとなるフレンズさんを見つけたらその時は…、探してよ?』


お互いが幸せになれる方法…不死身…!


僕は…本当に決心する。不死身になってやろうじゃないか…!


でも…今は寝る!



「ふぁ…?」


「あ…おはよう」


なーにか感触すると思ったらビャッちゃんに撫でられてた僕です。


「…あ、朝ごはん作ってくるからな!待ってろ!」


「あ!待って!」


「?どうした?」


忘れないうちに言わないとね!


「昨日言ってたこと…考えさせてもらったよ!」


「おっ!で、どうなんだ?」


「…僕もなるよ!不死身にね!」


「…!本当か…!」


ビャッちゃんの顔が一気に晴れる。今までに数回くらいしか見てきてないビャッちゃんの最高の笑顔。可愛すぎる!だからその笑顔、一生逃したくない!


「うん!だからね?こっち来て?」


「ん?」


ビャッちゃんが僕に触れるくらいに近づくと、僕はビャッちゃんの顎を片手で支える。


「…僕は死にたくない。絵という趣味を追い求めて…ビャッコと永遠に幸せに生きたい!だから…僕はみんなと一緒にパークを見守って、ビャッコと永遠に幸せに生きる!」


「…本当…だな?」


「二言無し!この決意は本物だよ!」


「…ありがとう…!」


「おっと!泣くのは、禁止だよ?」


「あぁ…わかっている!」


…めっちゃ涙目。泣かないでって言ったのに…


「…ほら、そうやってすぐに…」


「だって…だって…!嬉じいがらなぁ…」


「ふふ、ビャッコ、そうやって嬉しいというものを感情を表に出すのはとてもいいことだよ…?でもそんなに泣くと脱水症状になる…こっちも怪我してるのにビャッコも何かあって動かなくなったら困るからさ?そこは妻として、しっかりしてほしいな?」


「それが…カエデにとって私の一番直してほしいところか…?」


「うん…そこがなければ本当に完璧!僕の妻として…誇らしいよ!」


「わかった!すぐに直そう!」


でも…僕の欠点ってなんだろ。


「…でもさ、ビャッコにとって僕の欠点って何?」


「そうだな…何でもかんでも自分でなんとかしすぎってところだな?自分だけじゃない。私もいるんだからな?四神だからってなんでもできるわけじゃないが…家事、仕事、趣味…もし困ったらなんでも言ってくれ?私が手伝うからな?」


「…うん!じゃあこっちきて?」


「ん?どうした?」


約束のキス。してあげよっか!ビャッちゃんはちょっとしたことでキス魔になるからね!定期的にしてあげないと!


「ほら…キス、するよ!」


「え!?」


「ほら!昨日したみたいに!熱く!お互いの心が絡まり合うキスをしよう!」


「あ、あぁ…!」



まあお察しの通り、軽くのつもりだったけどお互いに離さなかったから(主にビャッちゃん)5分くらいずっと。酸欠になるかと思った!


「…今のキスにはなんの心が…」


「約束。お互いの欠点を直しあって、指摘しあって、これからの生活を充実したものにするっていう約束!」


「そうか…!なら5分もやる必要あったか?」


「ビャッコが僕自身が離れていくのを拒んだからでしょ?」


「あっ…その…すまなかったな…?」


「ううん、大丈夫!ビャッコがしたいなら僕は止めないし受け入れるよ!それに、つがいなんでしょ?子供ができるまでは可能な限り2人で思いっきり愛し合おうよ?」


「そうか!なら…」


…またですか。ビャッちゃんがめっちゃ求めてる顔してるよ。





そこからまたしばらくして、キスを終えて、準備して、ビャッちゃんにおんぶしてもらいながら頂上に行ったよ!


「みんな!おはよ!」


「カエデ!大丈夫なのか!?」


「うん、この通り、だいじょばないよ!」


「だよな…じゃが、なぜここに?」


「詳しくは…頼むよ?」


「あぁ!そのな?前にフェニに頼んで不死身になるって話をしたじゃないか?」


「えぇ、したわね?」


「カエデも賛成してくれたぞ!」


「おお…ほんとか?わしらはもうとうの昔に決めてたことだが」


「うん!ほんとだよ!ビャッコが永遠の命を手に取るなら僕も手に取るよ!ビャッコが最悪の未来を見るなら僕も一緒に見る!そしてその心に寄り添う!」


「…じゃあ行くわよ?」


「「「ロッジに!」」」



「…で、なんでカエデは怪我人なのにそこまでして追い詰めてるんだ…?」


みんなで問い詰めてます。はい。


「いやあのね?僕たちを不死身にしてほしいんだけど…」


「あのな…?不死身にはそんなに簡単になれるものではないからな?まあ俺にとっては簡単なことだが…その真意を聞こう。なぜ不死身になりたい?」


「みんなでパークを一生見守りたいんじゃ」


「カエデもつがいとかそういうのは関係なしに神の眷属として、パークを見守りたい、そう言ってたわ。ね?カエデ?」


「えっ、あ、うん…」


なんか利用されたんだけど。まあいいや!


「…わかった。ちょっと待ってろ?…いや!カエデ!」


「はい?」


「不老にもさせてやるからな!」


…マジか!



「できたぞー!」


「…?なんじゃこれは?」


「不死身になるためのジュースだ!苦いかもしれないがな!」

(本当は俺の血が6割程度入ってるなんて死んでも言えないな…)


「…カエデは1つおおいみたいだけど?」


「さっき言ったろ?不老にもするって」


「あぁ…」


「じゃあ、早速もらうよ?」


…うー、なんかまずい…


「なんじゃこれ…」


「まずい…」


「甘くしたはずなんだが…」


「これ…血だね…」


「むぅ、まあ我慢してくれ?これしか不死身になる方法がないんだ」


「わかった…」



「まずかった…」


「そりゃあ、他人の血だから…」


当たり前だよ!


「さて、カエデ?」


「もう一つ…」


「いや!これは美味しい!保証する!」


「う、うん…?」


まあ…飲ませてもらうか!


「…あっ、美味しい…」


「本当か!?」


「うん!…どうやって作ったの?」


「オレンジジュースに特製の粉を混ぜただけだ!」


「うっ!?」


なんか変!だからフェニックスさんって!


「どうした!?」


「体に変化…!?」


「あ、言ってなかったな!この不老の薬はカエデ、お前が1番美しい時の姿になる!」


「…なんか気持ちが悪いんだけど!?」


「耐えてくれ!」


「ちょっ、まっ」



「…ふぇ?」


…なんかさ…視界が…低いんだけど?


「…!?」


「ありゃ…失敗だな…」


「カエデー!?なんか可愛いな!?」


「あの…どうなってる?」


「物すっごい小さくなってるぞ!私の腹あたりの身長だぞ!」


「…は?」


嘘でしょ。


「あっ、これ1日で治るからな!そして、カエデ!気付いてるか?」


「え?…あっ!」


「治ってるだろ!」


「本当だ!」


手と足が治ってる!


「よっしゃー!」


「やったな!」


「さて、俺の出番は終わりだな?彼女たちの話も聞いてやってくれ?」


「?」


彼女たち?誰だ?


「カエデ!?どうしたのかしら!?」


「体が小さいぜー!」


「わー、かわいー」


おっと、ペパプの皆さんでしたか。そして…


「ペパプだと!?」


騒ぐゲンブさん。…意外。


「カエデ…小さくなりすぎよ!」


「え、あっ、1日で治るんで大丈夫かと…」


「ならよかったわ!私たちのお願いを聞いてほしいの!」


「…お願い?」


「私たち、今度ライブをやるんです!でも…」


「新曲の調整が間に合わなさそうなんです…」


「…つまり?」


「時間を稼いで欲しいんだわ!パークで有名になっているつがいの関係を作っているフレンズ同士ならなんとかって思って今、お願いしてるんだわ!」


「え?でも私たちがつがいになったことなんてまだほんの一部しか話してないはずだぞ?」


「実はもうパーク中に広まってるわよ?絵師として有名なカエデがつがいになったって話、誰が広めたかはわからないけど多分もうほとんどのフレンズの中で噂になってるんじゃないかしら?」


「…マジか。でもどうやって時間稼ぐの?」


「実は…これを見てほしいんです」


「…本」


「これ、教授に聞いたら「社交ダンス」というものらしくて…」


…前に聞いたことがあるぞ…?


「これ、良さそうだと思って、踊ってもらいたいんですけど…」


「私たちに?」


「はい…四神のビャッコ様にお願いするのがなんか気まずいんですけど…」


「私はいいぞ?」


「僕も!今は小さいけど1日で治るし!」


「本当か!ありがとな!」


「じゃあ明日からみんなで練習するわよ!」





帰宅途中…


「…カエデ…」


「今可愛いって思ったでしょ」


「あぁ…悪いか?」


「いやまあ確かに背が小さくなったから服の袖とかすごい余ってるけど!」


もうしょうがないから引きずってるけど!



「「ただいまー!」」


「いやー、どうする?多分食べる量も減ってるよ?今日もいろいろやってもらうよ?」


「一緒にできることは一緒にやるぞ!」


「うん!いやー…子供の気持ちになりそうだよ!」


「小さいカエデも好きだぞ?」


「ありがとね?…このような生活が永遠に続くのか…」


「私は嬉しいぞ?…決して嫌いになるようなことはしないようにするぞ!」


「うん!」


今日一日、ちっちゃい生活が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る