第11話 夢
「…アリツカゲラ、すまないが厨房を使わせてもらっても構わないだろうか?」
「はい!どうぞ!」
「ありがとう」
カエデのためにも…何か作ってやらないとな!
…
確かカエデが言ってたな…体調が悪い時は「おかゆ」というやつを作るんだったな…だがこの体調が悪いとどう違うかがわからない…とりあえず作るか。
「アリツカゲラー、米ってあるかー?」
「はーい!ありますよー!炊飯器が数台あるのでそこから使って構いませんよー!」
「ありがとなー!」
さて…おかゆ、作るぞ!
「まずはほうれん草を切って…それを米と一緒に煮る…だったな…」
簡単だな!…だがなぜこんな料理が体調が良くない時にいいんだ…
「こんなもんか…?完成だ!」
あとはカエデが起きてくれるのを待つだけだな…あとどれくらいだ?
…
「…カエデ…大丈夫か…?」
「…」
「…早く起きないと、おかゆ、冷めるぞ?」
「…」
「…はぁ…」
…熱くなりすぎた私も反省しなければな…
「ん…」
「!?カエデ!?」
…なんだ、寝てるのか。とにかく意識が出てきてくれたのはよかった!…もう少し寝かせてやらないとな…
「…ふふ、可愛いやつだな?私のことを散々可愛いって言ってるが、カエデも十分可愛いぞ♪」
「すぅ…すぅ…」
可愛いやつめ…!
「ん…ビャッちゃん…好き…」
「!?」
カエデ…いつもこんな寝言言ってるのか…!
「ビャッちゃん…ダメだって…ほら…ハクロウも…」
…なんの夢を見てるんだ…?
…
それからはしばらくの間ずっと寝言を聞いていた。おかげでおかゆ…冷めたな!
「ん…あ…おはよ…」
「あぁ、おはよう!言っとくがもうお昼超えてるからな?」
「嘘!?」
「ほら、おかゆだ」
「あ…そっか、この腕で気絶してたんだ。でもなんでおかゆ?」
「体調が悪い時に食べるってカエデから聞いたからな」
「うーん…あのね?おかゆを食べるのはお腹を壊したりした時であって怪我をした時に食べる物じゃないよ?」
「そうか…やっぱそうだよな…」
「あ、もらうよ?」
「あぁ」
カエデ…常温になってもちゃんと食べてくれるんだな…
「…冷めてるからアレだけど…でも美味しいよ!」
「そうか!それはよかった!だがカエデ、随分と寝言を喋ってたがどんな夢を見てたんだ?」
「え!?寝言言ってた!?…どんな夢か…?それはね…ビャッコと過ごしてる夢なんだけど…子供がいたんだよ…白い狼と紺色の虎がさ…?」
「…それって…!」
「そう、多分、僕たちの子供なんだと思う!」
「じゃあカエデが寝言で言っていたハクロウは…」
「ん?そんなこと言ってた?でも…子供の名前かもね?」
「子供ができるかどうか心配なのにカエデの夢だとできているのか…!ちなみに紺色の虎の方の名前がなんだったか、覚えてるか?」
「いや…?そこは覚えてないかな…?」
「そうか…でもこれで子供ができる確信は大きくなったな」
「そうだね!あ、ごちそうさま!いいおかゆだったよ?」
「そりゃよかった!」
「さて、僕もここでグズグズしている暇はないんだよね?」
「いや待て、今のカエデはまともに歩けない。それは自分でも理解しているはずだろ?」
「…そうだね?足も怪我してるし…」
「私がおんぶしていく」
「え!?それはそれでなんか悪い気がする…」
「なんだ…私におんぶされたくないのか…?」
「いや、そういうわけじゃない!」
「じゃあ…行くぞ」
「…自分がやりたいだけじゃない?」
「えっ!?そんなはず!?」
「ほら、顔に出てる。すっごいやりたそうだったもん」
「…やっても…いいか…?」
「いいよ?お願いするね?」
…
ふぅ…ビャッちゃんの乗り心地…いいなぁ!
「アリツカゲラー、そろそろ私たちは行かせてもらうぞ」
「あっ、はい!カエデさんは大丈夫ですか?」
「気分よし!怪我悪し!」
「ですよね…あ、オレンジさんとオオカミさんに「元気ですよ」って伝えておいてくれると助かるんですけど…あ、近いうちならいつでもいいですけど…」
「任されたよ!怪我が治ったら行くよ!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、僕たちはそろそろ行こうか!」
「あぁ。ありがとう」
「ありがとうございましたー!」
…
「ビャッコー」
「ん?なんだ?」
眠い…非常に眠い!
「もう少し…寝てもいいかな…?ビャッコの背中で…」
「あぁ、いいぞ?着いたあたりで起こすからな?」
「ありがとね!じゃあお休みー…」
…
夢を見た。
長い長い夢を見た。
しかも、今度は随分とリアルな夢。
『ビャッコ、おはよう?』
『あぁ、おはよう』
『んー…!おはよー!』
『おっ、ハクロウも!おはよう!』
『おーい、ミトラー!朝だよー!』
『ん…おはよう…』
『さ、みんな?準備して!歯を磨いて、朝ごはん食べて、今日も1日元気に過ごすよ!』
…
『〜♪』
『お父さん、俺、何か手伝うことあるかな?』
『あ、じゃあパンをトースターで焼いてほしいな?』
『あぁ、わかった!』
『お父さーん!みんな連れてきたよー!』
『エプロン姿、似合っておるぞ?』
『ありがと!さ、みんな座って待ってて!』
『あ!セイリュウちゃん!おはよー!』
『あら、おはよう?あなたが今日も元気でよかったわよ?』
『あはっ!俺はみんなが元気なら俺自身も元気になるんだって!』
『なら私も元気じゃないといけないわね?ふふっ、元気なハクロウを見てるとなんだか私も元気になってくるのよね♪』
『今日の朝ごはんはなんだ?』
『今日の朝ごはんはサンドウィッチ!』
『本当!?』
『うん!もちろんみんなが好きな具材にするから楽しみにしててよー?』
『あれ?お父さんが作るサンドウィッチって…』
『あまり食べたことがないよね?お父さんはサンドウィッチをたまにしか作らないからねー?』
『そうだぞ?お父さんのサンドウィッチは私、お母さんであってもあまり食べたことがないからな?』
『ふっふーん…実は子供ができるまで作りたくても耐えてたんだー!お父さんの得意料理をしっかり味わってねー?』
『楽しみにしてるから!』
…
『…よし…!完成!』
『…!?具材が…詰まってる…!?』
『うん!豪快にフランスパンにいろいろな具材を詰めた!これが本当に朝ごはんでいいのか!怪しいぞ!』
『わー!?何これ!?』
『これぞ、お父さんの自信作!さ、食べるよ!』
…
『おぉ!?今日は豪勢じゃな!?』
『さすがに朝にこれは…』
『大丈夫!朝でも食べられるようにヘルシーにしてあるから!』
『セイリュウちゃん!隣いいかな?』
『えぇ、いいわよ?それよりなんでハクロウは私の隣にいたがるのかしら?』
『なんかね…?安心するんだ…』
『そうなのかしら?私は知らないわよ…?まあそれでハクロウがいいならいいと思うけど…』
『さ、食べるよ!』
『ちょっと待ってくれないか?』
『ん?マンティコアはどうしたの?』
『いやな?飲み物は無いのか?って』
『…!そうだ!ごめん!すぐに用意する!』
『いつも思うけど…お父さんってドジだよね?』
『アァァ!子供にドジって言われたァァァ!』
『…早く用意するぞ?』
…
『『『『『『『いただきます!』』』』』』
『…うまい…!朝でもいけるな!』
『えぇ!割といけるわね!』
『どうやって作ったんだ?』
『ちょっとした秘訣があるんだけどね?これをすごい使ったからね!』
『オリーブオイル…』
『これを使えば大体のサラダは美味しくなるよ?』
『そうなのか?』
『うん!僕が作るサラダだってたまには入れてるからね?』
『確かにかかってたな!』
『サラダにかけると美味しいってさっきは言ったけどもちろんサラダに限らずに色々なものにかけて食べることも可能だよ?』
『そうか!試してみる価値はあるな!』
『…うーん…もうちょっと改良できたかな…?』
『これよりもっと美味しくできるのか!?』
『うん!このパンにね…くを…さんで…お』
カエデー!起きろー!
…
「…んあ?」
「着いたぞー?」
「あ…あぁ!ありがとう!随分と長い夢を見たな…」
現在家のベッド。
「ん?どんな夢を見たんだ?」
「またあの未来の夢を見てたんだけど…子供は2人の可能性が高いのよ」
「2人、か?」
「うん、その名前が「ハクロウ」と「ミトラ」」
「そんな名前をつけているのか…」
「まあ未来なんてまだまだ変えられるからね!僕たちなりの生活をして行こうよ!」
「あぁ!そうだな!それと、色々なところ寄ったからもう夜近いぞ?」
「…確かにお腹すいてるね!」
「夜ご飯、作るか?」
「…うん!お願いするよ!」
…
…ビャッちゃんだけで作る夕ご飯ってあまり食べたことがないね!楽しみ!
「できたぞ?」
「ありがと!ってあれ?1人分?」
「…その腕で食べられるか?」
「…確かに」
「私が食べさせてあげるからな?」
「えっ…!?いや、まあ介護は必要か。じゃあお願いするね?」
「任せておけ!食べやすいものを作ってきたからな?」
ご飯…ほうれん草のお浸し…ハッシュドポテト…どれも美味しそう!
「ほら、何から食べたい?」
「ハッシュドポテト、もらっていいかな?」
「あぁ、いいぞ?他のが食べたくなったら言ってくれ。ほら、あーん」
「…んー…美味しい!」
「ならよかった!実はちょっと不安だったんだ」
「そっか!」
「…カエデ、動けないだろう?」
「うん、動けないね?無理に動くと怪我が悪化する」
「最低限のことはするが…治るまで、カエデとこの部屋にずっといてもいいか?」
「…いいよ!当たり前だよ!」
「ありがとな!」
この後、ずっと食べさせてもらって、ビャッちゃんの夕ご飯を食べている様子も見させてもらった。やっぱり可愛い!
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