第3話 つがい

「ふぅ…気持ちよかったね!」


「あぁ…風邪はどうだ?」


「治ったよ!心配してくれてありがと!」


「あ、出たね」


おっ、キタキツネさんか!何かあったのかな?


「ギンギツネが湯の華がどうなってるか見にいくらしいから出てきたら部屋に案内してって言ってたから案内するよ」


「ありがと!」


「はぁ…げぇむ途中だったのにな…」


「…なんかごめんね?」


「いいよ。後でギンギツネにおやつお願いするから」


…そういえばお父さんが出張でお菓子の作り方を教えに行ってたね…



「ここに用意したからね。ゆっくり休んで」


「ごめんね!ありがと!」


部屋には僕が持っていた荷物が隅に置かれ、2人分の布団が敷かれている。


「…さて、何しようか!」


「そうだな…絵は描かないのか?」


「いや、描くけど…夜景を描きたいんだよね…?夜が大好きだからさ…!」


「そうなのか?」


「うん!よく走り回ってるよ!」


絵を描き続けてなまった体は夜中にこっそり起きて走り回ってる時があるよ!…よく自我を失うけど()


「これまた特殊な趣味を持ってるな…」


「走ってみる?楽しいよ?」


「いや、遠慮しておく」


「そっか!じゃあ…何しようか?」


やることが見つからない!


「…そうだ、カエデ、一ついいか?」


「ん?」


「いつも和服を着ているから…タイリクオオカミそのものの服をカエデが着ているのを見たことがないんだ。だから…いいか?」


…そう考えてみれば和服がいつもの服だからあまりそっちを着たことがないんだ…


「うん!いいよ?プラズムで簡単に作れるからね!じゃあ服を…」


「待て待て待て!?私の前で脱ぐのか!?」


「え?大事なところは隠してるからいいじゃん」


「だからってメスの前で突然服を脱ぎ始めるオスがいるのか!?」


「…それもそうだね…じゃあ後ろ向いてて?」


「あぁ…」


いや…ごめん!


「さて…タイリクオオカミの服だね?…出てきて!」


こうして念じるのも久しぶりだね…小さい頃大きくなって服が小さくなったら服脱いで新しく作り出すってことよくしてたなぁ…



「よし!できたよ!」


このお母さん似の服!お父さん似のズボン!久しぶりすぎる!


「ん?見てもいいのか?」


「うん!」


ビャッちゃん…どんな反応するかな?


「…おぉ…やっぱり見慣れてるな…」


「あ、そんな反応するのね」


「ん?なんだ?もっと驚くかと思ったか?」


「うん。そりゃそうでしょ」


「はっ!残念だったな!私はこの姿は結構見覚えがあるぞ?まあカエデが着てるのを見たのは初めてだが…」


「あ、お父さん!?」


「そうだ!オレンジがよくその服を着ているのを見たことがあってな!」


「そっか…」


「…だがな?カエデ…その…カッコいいぞ…?///」


「ほんと?ありがと!」


「はぁ…はぁ…いるかしら…?」


「あ!ギンギツネさん!」


なんでそんなに息が荒っぽいの?


「部屋、ありがとね!それとなんでそんなに息が荒っぽいの?」


「湯の華がいつもより多かったわ…!」


「あぁ…」


「疲れているところすまない、ひとつ聞きたいんだが…」


「どうしたの…かしら…?」


「カエデが着ている和服はここ、温泉宿から譲ってもらった…そうだな?」


「えぇ…」


「…私にも譲ってくれないか…?」


!?ビャッちゃんが…和服!?


「えぇ…いいわよ…!でもその前に休ませてほしいわ…!」


「わかってる」


「ありがとう…!あとお願いがある…」


「え?」


「おやつを作ってほしいのよ…!キタキツネがねだって…」


「あー…あのことか。ビャッちゃん?作りに行こうか!」


「え?あ…あぁ…」



☆レッツ・クッキングターイム☆


いろいろ生地を作ったりジャムを練り込んだりしなきゃいけないけど時間短縮のため、完成したのがこちらです(もちろん最初から作ったよ?)


「さ、クッキーを焼いていこうか!生地作り、ありがとね!」


「どれくらい焼けばいいんだ?」


「オーブンに書いてあるでしょ?」


ちゃーんと書いてある!これはお父さんが書いた感じかな?


「やり方がわからない…任せてもいいか?」


「うん!でもさ…?つがいになってからお菓子とか作るなら教えるけど?」


「…今日はやめておこう」


「おっけ!任せてよ!」


オーブンでしばらく焼こうか!



☆チ-ン☆


「よしっ!焼けた!運ぶよ!」


「あぁ!」



「おーい!できたよ!」


「あぁ…!ありがとう…!」


「ありがとね」


「私ももらっていいかしら…?」


「うん!みんなで食べるように多く焼いたからさ!」


「だけどよくできてるね。ギンギツネが作るやつより美味しそう」


「ひどいわね…!?でも確かに美味しそう…」


「お父さんから散々教えてもらったからね!お菓子作りには自信があるよ!」


「…今度教えてくれないか?」


「うん!任せて!」


なんか…教えること多いよね?



「さて、好きなものを選ぶといいわよ?」


…まあね?食べ終わって和服を探してるんだけど…


「やっぱビャッちゃんって言ったら…」


「白…だな?」


当たり前だよね?白虎だもんね。


「白?あるわよ?そこで着替えるといいわよ?」


「…カエデ?」


「…えっ」


…なんかさ、いかにもついてきてって目をしてるんだけど…まあついていくか…


「よくわかったな…」


「つがいになるならビャッちゃんの気持ちくらいわからないとね?さ、着方がわからないんだね?」


「あぁ…」


「じゃあ裸になって?」


「はだっ!?///」


だって…ねぇ?下に着るものも専用の服だし…ね?


「解説すると下に別で専用の服を着なきゃいけなくてね?」


「そういうことか…なら…///」


…ビャッちゃん…平気で脱いじゃうんだね…?


「ちょっとその下着を探してくるからさ、待ってて?」


「わかった…///」



「…いなくなってるし…」


まあ…忙しいのかな?


「さて、前探した時はここかな…?あったあった…」



「ビャッちゃーん。見つかっt」


「えっ///」


…そこには裸のビャッちゃん。…嘘ォォ!?まだつがいにもなってないのに…!///


「…///」ガタガタ


「そ、その…あまり見ないでくれ…つがいでもないのにいきなり見られるのは…///」


…動けない…怒られるかもしれない恐怖で動けない…でも綺麗…///


「…///」ガタガタ


「…私が後ろを向けばいいのか…?なんかすまないな…///」


「…///」ガタガタ


「…カエデ…?」


「…!あ、あぁ…ごめんね…?///」


「その…すまなかったな…///」


「いや…僕が悪いよ…///」


「…聞いてもいいか…?///」


「何…?///」


「私の体…綺麗だったか…?///」


「すごいエッチかった…///」


「全く…こういう時に限ってカエデは変なことを…///」


「…後ろ向いた…?///」


「あぁ…ひとつ聞いてもいいか…?///」


「ん…?///」


「…寝るとき…体の触り合い…できないか…?///」


えっ。…こういう関係だからしたいけど…さすがに…


「…それはこの関係になったばっかだし…つがいになってからにしよ…?でも僕がビャッちゃんのことが好きになりつつあるのは変わらないからね…///」


「それは嬉しいことを聞いたな…///」


「さ…後ろ向くよ…///」


こんなビャッちゃん…初めて見たんだけど…


「じゃあ着させていくよ…///」


「頼むぞ…///」


その寒そうな体に和服を着させるための準備をしていく。


…ダメだ…好きで好きで…もう一週間とかどうでもよくなってきた…まさかこんなに早く好きになるなんて思ってなかった…


…もういい…一週間なんて気にしていられるか…!こんなに早く好きになったってことはそれだけビャッちゃんが努力してくれたってことだ…!ならそれに答えてやらないと!


「…ビャッちゃん…」


「ん…どうした…///」


「…責任とって…?」


「…どうした…///」


「…努力してくれてありがとう…」


「…///」


「こっち向いて…?恥ずかしいとか無しでさ…」


「…わかった…///」


僕が好きであって…これからつがいになる…ビャッちゃん…いや、ビャッコがそこにいる。僕の顔をしっかり見つめてくれる。そんなビャッコが…彼女自身の努力で…僕がビャッコのことを好きにしようとしてくれたんだ…これからはその恩返しだ…!


「ビャッちゃん…いや、ビャッコ…?」


「えっ…どうした…?急に呼び捨てで…///」


「もう一週間とか無し…!早い気もするけど…つがいになろうよ!」


「えっ…!?」


「ビャッコ…君の努力のおかげで…僕はビャッコのことが好きになれた!だから…その恩返しをさせて!」


「…ほ…本当に…いい…の…か…?」ウルウル


「うん…だから…さ?今は…思いっきり抱きついたり…何したっていいんだよ…?」


「あぁ…!ありがどう…!好ぎだ…!大好ぎだぁぁ…!」


「そんなに泣き崩れるほど…?でも…さ?こうやってつがいになったんだからさ…?ね!」


「!?」


こうして僕はビャッコの唇を無理やり奪う。長く、深く奪う。


「…んんっ…」


「…ふぅ…晴れて僕たちは…つがいになったよ…?こうやってつがいになったんだから…僕自身ビャッコを逃さないし…僕も逃げない。だから…これから…深く愛し合お?」


「あぁ…!もう…にがざない…!どごにもいがぜない…!」


「…好き…!」


「わだじも…だいずぎだぁぁぁ…!」


ビャッコが心から言っているのが伝わる。


「泣き止むまで…抱きついてるよ…ほら、ハンカチだよ…」


「ありがどう…」


涙でくしゃくしゃになったビャッコの顔をハンカチで拭く。拭くと顔が真っ赤に染まって恥ずかしそうにしているビャッコが僕の目に映る。


「…グス…本当に私たちは…つがいになったのか…?こんなに早く…?」


「うん…ていうかね…?実はビャッコが言い出す前からちょっとは気になってたんだよね?」


「そうなのか…?」


「でも四神だからって諦めそうだったところでビャッコが告白してくれたんだ…だから今の僕とビャッコの関係がある…。もしビャッコが言ってくれなかったら僕は他のフレンズさんとつがいになってたよ…」


「そうだな…」


「これからは…どうするのかな…?」


「とりあえず今日はここに泊まって…明日のうちにオレンジとオオカミとかに連絡してから…2人きりで暮らそう…。住む場所は私の場所が十分空いているからな…?」


「うん…でもプラムさんとかに家具を具現化してもらわなきゃね…?」


「なら今のベッドよりもう少し大きいベッドにして一緒に寝れるようにしなきゃな…頼みがある…」


「どうしたのかな…?」


「朝起きる時は必ずキスと…寝るときもキス…お願いできるか…?」


「…うん…任せて…?」


こうして僕たちはつがいになりました。

…早いなんて言う人がいるかもしれない。でもそれが僕たちの生き方。だから…批判しないで…。

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