第2話 鬼滅の刃だったり、宇佐美りんだったり
学生であれ、社会人であれ、日々生きる中で時として生きにくさだったり、息苦しさだったり感じるものであろう。それは決して珍しいことでもなんでもない。最近、人気を博している「鬼滅の刃」においては、鬼殺隊にとって敵である鬼においても同情すべき過去を抱えているのである。
宇佐美りんの「推し、燃ゆ」はそんな現代の世相にふさわしい小説ではなかろうか。
極力、ネタバレは避けて語ることにする。
主人公のあかりは、高校生。とはいっても平凡に生活を送っているわけでは決してない。高校生活、家族関係、双方がぎくしゃくしているといった毎日である。そんな彼女の支えとなっているのが「推し」の上野真幸であった。
「趣味の一環としてとらえられがちで、誰々のファンなんだよね、と気軽に言う人も多いんですけど、部活に人生をかけている人がいるように、推すことを自分の〈背骨〉と考えている人がいる。その熱量を書きたいと思いました」(女性セブン 宇佐美りんのインタビューより)
上記の通り、あかりは推しに時間も金銭も惜しみなく注ぐ。けれども、本作は単純に推しを尊ぶだけの小説では、もちろんない。
背景には彼女の生きにくさが密接に関係しているのである。要領の悪さなどという言葉が生ぬるいほどに、学校でもアルバイト先でも窮している。おそらく、想像を絶するほどの苦しみと辛さを感じながら彼女は日々を生きているのである。そして、健康でありながら、ただ、単純に生きることですら危ぶんでいる。
この小説はフィクションでありながらフィクションではない。そんな錯覚に陥った。どうか無事でいてくださいだなんて、叫びたくなった次第である。
朝にきらめき、夕に茜空 風子 @yuu1204
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