第393話
「なんか、本当にそうかも……って気がしてきたわ。じゃあ、いっそ3人で一遍に迫っちゃうとか? それなら順番も気兼ねしなくていいじゃない?」
しかし里緒奈の提案に菜々留は乗ってこなかった。
「それは最後の手段にしましょう。むしろナナルはね、お兄たまが『一対一の交際』を念頭に置いてる今こそ、最大のチャンスだと思うの」
里緒奈と恋姫は声をはもらせる。
「「つまり?」」
「だから……ね? ギリギリのところで悩ませて、ヤキモキさせて……ナナルたちにもっと、ぞっこんにさせちゃおうって作戦」
恋姫が里緒奈の顔を平手で押しのけ、唸りをあげた。
「それよ! それだわ!」
「んばぶっ? ひょっと、れんきひゃん?」
里緒奈は歪んだフェイスラインを整えつつ、恋愛マイスターに質問する。
「一体、何が『それ』なわけ?」
「少女漫画でもお約束の展開でしょう? 相手のことで思い煩って、眠れない夜を過ごすことで……そう、恋する気持ちを醸成させていくの」
今度は里緒奈と菜々留が声を重ねた。
「「恋する……気持ち……」」
スクール水着越しに巨乳を押しつけながら、ソープをたっぷりと絡めてニギニギするのは、本当に『恋する気持ち』だろうか。違うんじゃないだろうか。
「ええっとぉ……要するに、まだお兄様には『枠』の件、内緒ってことね?」
「ええ。最後でいいのよ、そんなの」
とはいえ、恋姫の言い分にも一理あった。
彼のほうが『來る者は拒まず』のスタンスになってしまっては、勝利も虚しい。
その程度の関係では、人数が超過した場合、脱落の候補にもあがりかねないわけで。
「……うん。決めた」
里緒奈は腹を括り、ふたりの戦友に宣言する。
「リオナ、お兄様におっぱいを見せるわ!」
菜々留も、恋姫も驚愕し、まさかとばかりに声を震わせた。
「ほ、本気なの? 里緒奈ちゃん」
「そんなことしたら、お兄さんが、ぼ、暴走するかもしれないのに?」
「望むところよ!」
里緒奈は立ちあがり、こぶしを握り込む。
「お兄様におっぱいは絶対に効くはずよ。そう、絶対」
今日ほど『おっぱい』という言葉を大真面目に使ったことはなかった。
中学時代、数学の授業でπ(パイ)を習った時も、恥ずかしく思ったくらいだ。アップルパイにしろ、ジャン牌にしろ、『ぱい』というフレーズは羞恥心を刺激する。
しかし今、里緒奈は『おっぱい』の四文字に平伏さえする思いだった。
「お兄様って好きでしょ? おっぱい。お風呂でもリオナのおっぱい揉み始めたら、右も左も、10分は離そうとしないもの」
「あら、ナナルのおっぱいは15分よ?」
「レンキのおっぱいは20分だから。え……里緒奈、レンキの半分なの?」
「ごめん、ごめん。リオナのは30分だったわー」
と、女の戦いはほどほどにして。
「お兄様って、ぬいぐるみの時もそうじゃない? おっぱいかフトモモのどっちかで……お尻にはあまり興味がないってゆーの?」
「確かに……前にお兄さん、レンキに『フトモモで挟んで』って……あ」
恋姫がうっかり口を滑らせる。
すると菜々留も、
「スクール水着に差し込む時はお尻の谷間、じゃなくって?」
「ちょっと待って? リオナたちの間で、何かが食い違ってるみたいだわ。これ」
この件については、あとで彼をシバくことに。
とにもかくにも彼がおっぱい大好き星人なのは、今さら疑いようもなかった。生のおっぱいを見せれば、何かしらのアクションに出るだろう。
ただ、女の子として躊躇いもした。
菜々留も同じ発想に行き着いたらしい。
「本当にいいの? 里緒奈ちゃん。おっぱいを見せちゃったら、もう……触る・撫でる・揉むだけじゃなくなるのよ? じっくり観察だってされるでしょうし……ねえ?」
あえて恋姫がはっきりと言い切る。
「今までは首筋やフトモモで済んでた『舐める』とか『吸う』が、おっぱいに来る……ということね。さすがにそれは……その、勇み足が過ぎるような……」
「こっちだってナマでニギってるんだから、同じことでしょ」
猥談のつもりは毛頭ないのに、なぜだろう。
さっきからR15どころかR18のコードに引っ掛かりまくっている気がした。
それでも『おっぱい』には可能性がある。
だからこそ、里緒奈は決意を表明。
「舐められよーが吸われよーが、おっぱいよ! おっぱいは勝つ!」
「ねえ、里緒奈? あなたももう少し恋する気持ちを大事にしたほうが……」
「そんなこと言って、見せちゃうんでしょう? 恋姫ちゃんも」
彼の与り知らないところで、おっぱい同盟が発足した。
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