第255話
今度こそSHINYのメンバーが声を弾ませる。
「これよ、これ! かっわい~!」
里緒奈は満足そうに微笑むと、片足立ちでくるっと一回転した。
恋姫もばつが悪そうに衣装の出来を認める。
「ま、まあ? P君にしてはまともな衣装……ですけど?」
おかげで『僕』も残りHPを心配せず、プロデューサーらしく振舞えた。
「でしょ? 定番は定番で押さえておかないとネ」
本命のステージ衣装はブラウスとミニスカートをリボンで飾った、いかにもアイドルらしいコーディネイトだ。
菜々留がニーソックスを片方ずつしっかりと伸ばす。
「スカートは短すぎる気もするわね。でもナナルは好きよ、これ」
「ミカルちゃんも! ねえねえ、おにぃ? 可愛い?」
ボーイッシュな美香留も可憐なアイドルに変身を遂げ、はにかんだ。
「もちろんだよ。……うんうん、アイドルの衣装はやっぱりスカートだなあ」
ミニスカートとニーソックスに間にある絶対領域こと、肉感的なフトモモが『僕』の目を釘付けにする。
いつもプールで『僕』の顔を挟んでいる、魅惑のフトモモだ。
パンツが見えそうで見えない絶妙なスカート丈も、『僕』をそわそわさせる。
ブラウスも巨乳で押しあげられ、豊かな曲線を誇った。ブラウスを脱げばチュニックだけの軽装となり、解放感もアピールできる。
「ちょっと脱いでみよっか。……と、あくまで衣装の確認だからね?」
「だったら、そのカメラは何なんです?」
里緒奈たちがブラウスを脱いだところで、やっと妹の美玖も観念しつつ合流した。
「どうしてミクがキュートの代わりに衣装合わせを……はあ」
そんな彼女に、菜々留が宥めるように言い聞かせる。
「美玖ちゃんはキュートちゃんと身体つきが似てるもの。だから美玖ちゃんに合わせておけば、キュートちゃんがいきなり着ても大丈夫……でしょう?」
(そりゃ美玖とキュートは同一人物だし……やっぱり菜々留ちゃん、キュートの正体に勘付いてるんじゃないの?)
そう『僕』は不安に駆られるも、当の美玖は不承不承に頷いた。
「わかったわよ。みんなにだけ恥ずかしい格好させるわけにもいかないもの」
「それってぇ、一度でも逃げたひとが言えることぉ?」
物言いをつけたがる美香留を、隣の里緒奈がこっそりと肘で小突く。
(だめだめ、美香留ちゃん。美玖ちゃんはお兄様と違って、プライドは高い割にガラスハートの持ち主なのよ。だから……)
(あー。なるほど)
「僕には丸聞こえなんだけど? 異議ありまくりなんですけど?」
相変わらずプロデューサーの立場が弱い今日この頃だ。まったく誰のせいなんだか。
恋姫がまたブラウスを羽織って、胸元のリボンを整える。
「……うん、レンキは気に入ったわ。P君もやればできるじゃないですか」
里緒奈や菜々留も楽しげに口を揃えた。
「ほんと、ほんと。さっきのアレは何だったわけ?」
「Pくんの趣味でしょう? でもファンのみんなが喜んでくれるなら……ね?」
「あの格好の抱き枕とか、作らないでくださいね? P君」
……抱き枕の企画は秘密裏に進めるしかないようだ。今回も。
美香留が壁に向かって、自らスカートを捲ったりする。
「てか、おにぃ? なんでパンツもコレって決まってるの? 別に見せないのに?」
「色が透けたり、食み出したりしないように、だよ。何か気になる?」
「だからぁ、それはブラの話じゃん? ミカルちゃんが聞いてるのは、パンツのことで」
里緒奈たちがテーブルごと『僕』を包囲した。
「Pクン? 正直に答えてくんない?」
「パンチラを強要するつもりですか? またセクハラなんですか?」
「お仕事にかこつけて、とうとうナナルたちに自分好みのパンツまで……あらあら」
雑談がどう転がっても、こうなるんだよなあ……『僕』の場合は。
「だ、大丈夫! パンツが見えても、ちゃんと魔法で不自然な光を差し込むから」
「ブルーレイだと外れるやつじゃないのよ! 兄さんっ!」
「美玖ちゃんはコスプレ以外でステージに出ないんだから、いいじゃん……」
こんな妹だけど、『僕』は知っている。
毎日のようにユニゾンジュエルの衣装を着て、悦に浸っていることを。
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