第250話

 結局、郁乃も依織も放課後までS女に入り浸り。

「KNIGHTSって忙しいんじゃないの? 学校とかどうしてるわけ?」

「ケイウォルス学院はそのあたり寛大だから。問題ない(キリッ)」

「威張って言うことじゃないでしょう? えぇと……依織、だったわね」

 昼過ぎに全員で『僕』を浮気者扱いしたせいか、SHINYと郁乃・依織の間には連帯感が芽生えつつあった。『僕』のハートは砕かれてしまったが。

「えっ? イクノちゃんだけ、にぃにぃとツーショットでピースしてないってこと?」

「お兄たまがよくナナルたちにダブルピースさせたがるのよ。うふふ」

 いつものぬいぐるみに戻ったことで、『僕』は体育教師の威厳を取り返す。

「さあさあ! 今日は部活だぞー」

「ハーイ!」

 予報の通り、午後には雨雲も遠ざかっていった。

 部員が着替えているうちに、『僕』はプールの準備に取り掛かる。

 転入希望を理由に、郁乃と依織もちゃっかりついてきた。

「にぃにぃの部活って、水泳部なんデスか?」

「そうだよ。僕の魔法で年中、練習できるようにしてるんだ」

「水泳はイオリも得意……」

「じゃあ依織ちゃんたちも一緒に泳ぐ? スクール水着なら予備があるからサ」

 ふたりの部外者は顔を見合わせて、頷きを交わす。

「六月に泳げるなんて、得した気分デス。依織ちゃん、泳ご~!」

「こっちの水着、貸してくれるなら。それで」

 早速『僕』はテレパシーで妹の美玖に指示を出した。

(美玖~。郁乃ちゃんたちも泳ぐから、スクール水着を出してあげてよ)

(はいはい。そう来ると思って、もう準備してるわ)

 郁乃たちも更衣室へ入り、待つこと数分。

 水泳部の面々が談笑しつつ、続々とプールサイドへ上がってきた。

「P先生! 今日もよろしくお願いしまーす!」

「頑張ろうネ! まずは準備体操だぞ」

 紺色のスクール水着(水泳部用)が現役女子高生の身体つきを引き締める。

(現役……女子高生……)

 脳内でエコーが響いたのは、気のせいだろう。

 なおスクール水着を着用する際、一般的にはサポーターも身につけるが、S女のスクール水着にそれはなかった。『僕』の魔法は規制も兼ねてるからね。

 そのため、お尻の食い込みもくっきりと。

 それこそ平泳ぎで脚を広げようものなら……おっと、妹が来たようだ。

 SHINYのメンバーが豊かな曲線でスクール水着を照り返らせる。

「ん~っ! 雨が止んでよかったわね」

「アイドル活動のためにも、体力をつけなくっちゃ。ねえ? 恋姫ちゃん」

「そのための水泳だってことは、レンキもわかってるんだけど……」

 美香留や美玖も準備体操でムチムチボディーをのけぞらせた。

「ミカルちゃん、おにぃに教えてもらおーっと」

「水球の練習なら捗ると思うわ」

 たわわな果実が……レッグホールの食い込みが、顧問の『僕』を惑わせる。水球で使うボールとは、おっぱいのことだろうか。

 本日のゲスト、郁乃と依織も同じ格好でプールサイドへ出てくる。

 水泳部の部員たちが浮足立った。

「うそっ? KNIGHTSの依織ちゃんじゃない?」

「郁乃ちゃん! ほら、郁乃ちゃんでしょ!」

 プールには水泳部しかいないから、認識阻害はいらないかなあ、と。

 アイドルが七人も並ぶと、さすがに壮観だ。

 コーチとして『僕』は飛び込み台の上に立ち、声を張る。

「郁乃ちゃんと依織ちゃんは部活体験ってことで。みんなは泳ぎまくろうネ!」

「ハイッ!」

 今日も充実のクラブ活動が始まった。

 『僕』は小さなぬいぐるみの身体を活かして、おもに皆の平泳ぎをサポート。フトモモの間に入り、真後ろから部員の浮き身を押してやる。

 スクール水着の股布に顔面を押しつけるのも、指導のため。

「もっと僕をフトモモで挟み込むようにして、動きをつけるんだぞー」

「……………」

 この練習方法は想像さえしていなかったらしい郁乃と依織は、唖然としている。

「リオナはもう慣れちゃったから、いいけど。次はリオナね?」

「あら、じゃあナナルは背泳ぎをお願いしようかしら」

 背泳ぎの際も、『僕』はまずフトモモの間へ。しかしバタ足を妨げないように、スクール水着のデルタに乗っかる。

 さらにその三角形を引っ掴むことで、フォームは完璧に。

 菜々留が背泳ぎで25メートルを泳ぎきったところで、恋姫がおずおずと手を挙げる。

「P君? つ、次はレンキも……でも普通で! 普通に手を引くとかで!」

「それじゃ練習にならないって言ったの、恋姫ちゃんじゃなかった?」

 実のところ、SHINYのメンバーには水泳を苦手とする理由があった。

 おっぱいが浮くからだ。それも左右ばらばらに浮力を得てしまうため、どうしてもフォームのバランスが乱れる。

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