第235話

 すっぽんぽんの『僕』は仲裁するにできず、おろおろするばかり。

「え、えぇと……まずは落ち着こうよ、ふたりとも。姉妹みたいなものなんだし……」

「お兄ちゃんは黙っててっ!」

「おにぃは黙って!」

「……ハイ」

 妹には勝てない&逆らえない――そんな逃げ腰の本能が、我ながら情けない。

 キュートと美香留は舌戦を繰り広げつつ、『僕』の腕を引っ張った。

「お兄ちゃんと洗いっこなんて、お子様の美香留には無理だってば。いつもどんなふうにやってるか、知らないんでしょ? オトナの時間なのっ」

「ミカルちゃん、すぐ憶えるもん! 実戦がいっちばん練習になるんだから!」

(ひい~~~っ!)

 あれよあれよと『僕』は湯舟から引きずり出され、前屈みのまま蹲る。

 さっきまで美香留と危うくも甘いムードだったはずなのに。今や風神と雷神に挟撃される、不敬な罪人そのものだ。

 特大のソープマットが浴室の半分を占有する。

「お兄ちゃんはここに寝てっ。きゅーとが洗ってあげるから。ね?」

 妹は勢い任せにソープのボトルを開けると、その中身を自らスクール水着の胸元へ垂らした。それを両手で薄生地に満遍なく広げ、泡立てていく。

「ミ、ミカルちゃんだってぇ!」

 負けじと美香留もソープをぶちまけ、自分のスクール水着で泡を立てまくった。

「あ、あのぉ……キュートさん? 美香留さん……?」

 怖気づく『僕』のことなど意に介さず、ふたりが同時に迫ってくる。

(どどっ、どうしたら……あ~~~っ!)

 マウントを取られるまで十秒と掛からなかった。

 スクール水着越しの爆乳が、よっつも一遍に『僕』の上を転がり、柔らかく弾む。

「うんしょっ、とぉ……どーお? お兄ちゃん、気持ちいい?」 

 さらには、びしょ濡れのフトモモまで絡みついてきた。

 若干出遅れつつ、美香留も初めてなりに大胆なアプローチを掛けてくる。

「んはあっ? おにぃ、こんな感じ? もっとくっついても平気?」

「へ、平気じゃ……ちょっ? そこはだめだって!」

 右でも左でも魅惑のプロポーションがくねり、『僕』にスクール水着を擦りつけた。

 妹が相手――と頭ではわかっているつもりでも、胸の鼓動が跳ねあがる。鼻の奥が一気に熱くなり、身体の興奮を自覚させられる。

 妹たちも徐々に息を乱し始めた。

「ねえ? お兄ちゃんからもきゅーとのこと、ぁはあ、ぎゅってして?」

「抱っこするならミカルちゃんが先ぃ! おにぃ、早く早くぅ」

 羞恥と快楽の色を一緒くたに浮かべながら、上目遣いで『僕』を見詰める。

 アイマスクの中でキュートの瞳がぱっちりと瞬いた。

(うっ……)

 普段は素っ気ない美玖からは考えられない、一途なまなざし。

 美香留も純真無垢な瞳をじわりと潤わせる。

「お兄ちゃあん……」

「おにぃ……」

 その一方で、スクール水着のスタイルは隙だらけ。ふたりして濃厚な色気を溢れさせながら、子猫のようにじゃれついてくるのがたまらない。

 眼前で爆乳がひしゃげるたび、谷間から白い泡が零れた。

 妹たちを相手に『僕』は、期待めいた生唾を飲みくだすも、とにかく抵抗を選ぶ。

「ま、待って! わかったから……背中! 順番に背中を流してもらうから!」

 しかしふたりの身体を剥がそうと、手を伸ばしたのがいけなかった。

 抱き締められたと勘違いしたらしいキュートと美香留が、ますます『僕』にスクール水着を押しつけてくる。

「きゃっ? んもう、お兄ちゃんったら……やっぱりきゅーとがいいんだ?」

「おにぃってば、すごいとこ触ってるぅ……でもミカルちゃん、これ、好きかも……」

 腰を押さえたつもりが――お尻でした。

 妹たちは上へ上へと這いあがり、爆乳で『僕』の顔面を圧迫する。

 それでも身体を起こそうと、『僕』はまず膝を立てた。

 ところが、その膝に異様な感触。

「えはあっ?」

 美香留が心地よさそうに眉尻を下げ、喘ぎを散らす。

 不自然な腰の動きもそのせいだった。スクール水着のフロントデルタを『僕』の膝頭に擦りつけ、何やら夢中になっているのだから。

「ミカルちゃん、んはぁ、こんなの初めへぇ……! おにぃ、しゅごいの!」

 キュートもそれを真似て、『僕』の膝に跨り、スクール水着の股底を泡立てる。

「やぁん! お、お兄ちゃんの……あへぇ、当たっへるぅ……!」

「膝! それ膝だから! ねっ?」

 中央の『僕』は仰向けでM字開脚。

 その膝をサドルにして、ふたりの妹は競争に悶えた。

「お兄ちゃん、ほらぁ、きゅーとのほうが上手でしょ? こんなふうに、らっへえ」

「真似しないでよぉ、キュート! これはミカルちゃんが、へあっはぁ?」

 だんだん呂律もまわらなくなり、腰遣いばかり躍起になる。

 スクール水着越しの爆乳にあっぷあっぷしながら、『僕』は半ば朦朧とした。

(だ、だめなのに……あれ? なんで……だめなんだっけ……?)

 相手は妹だ。美香留も妹みたいなものだ。

 そんな一握りの抵抗が、かえって妹たちの感触を強烈に意識させる。

 ふくよかな爆乳と、むっちりとしたフトモモ。

 ソープを含んだスクール水着のヌルヌル感が、どんどん熱を帯びてくる。とりわけ両膝が熱く濡れるのは、気のせいでしょうか。

 真っ白な湯気の中、妹たちの悩ましい嬌声が反響する。

「「あはあああんっ!」」

「ちょっとぉ、Pクン? さっきから何騒いで――」

 そしてゲームオーバーの瞬間は突然、訪れた。

 仕切り戸を開け、里緒奈と菜々留、恋姫が同時に風呂場を覗き込む。

「……あ」

 キュートと美香留が肩越しに振り向き、動きを止めた。

 里緒奈たちもただ呆然とする。

「……………」

 爆発が発生する寸前の爆心地って、音がなくなるんだよねー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る