第184話

 だが、すでに『僕』は忍び寄る伏兵の存在に気付いていた。正面のブライトで『僕』を引きつけ、その間にチャームが背後を取る。

(な、なんやて?)

(そう来ると思ってたよ。いただき!)

 チャームの奇襲をかわしつつ、『僕』は両手でひとつずつ赤い玉を掴み取った。ついでに緑の玉を蹴り、ブライトやチャームから遠ざけておく。

(まだまだ!)

(え? ブライト、まさか……)

 しかしブライトは緑の玉に目もくれず、『僕』に追いすがってきた。チャームも反則上等で手を伸ばし、『僕』を引っ掴もうとする。

 回避すること自体は簡単だった。闇堕ちパワーで変身している『僕』に対し、ユニゾンブライトやユニゾンチャームのものは見せかけだけの変身に過ぎない。

(あと少しやったのに~)

(チャンスはある。次こそ決めるぞ)

 ただ、彼女らの闘争心には一瞬、怖気づいてしまった。

 向こう見ずな突撃とは考えにくい。そもそも『僕』を捕まえたところで、四葉たちに手段はないはずだった。依然として首輪も百パーセント『僕』の制御下にある。

(油断はしないほうがいいか)

 その後も玉入れゲームは白熱し、月組が星組を降した。

星組は紫苑(ブライト)と胡桃(チャーム)が『僕』に固執したせいで、ほとんど点数を上げていない。おかげで月組は手堅く差をつけることができた。

「お疲れ様ですぅ、王子様」

 サマーベッドで一服している間に、空組と花組の玉入れ対決も結果が出る。

四葉(カラット)と茉莉花(ジュエル)の不調が響いてか、花組は決定打を欠いた。暫定最下位となって、次のトレインレースを迎える。

 カラットが『僕』を呼んだ。

「ダイヤ! 今度は花組に混じってくれるんでしょ?」

「……そうだね。いいよ、それで」

やはり何か狙いがあってのことだろう。星装少女たちは決して屈さず、闇堕ちな『僕』に一矢報いようとしている。

(そうこなくっちゃ。付き合ってあげるよ、カラット、ジュエル)

トレインレースは五人で一組となり、電車ごっこの要領で競争するもの。『僕』は三番手に位置し、前をジュエル、後ろをカラットに挟まれる。

『僕』に腰を抱かれ、手前のジュエルがびくっと肩を震わせた。

「へ、変なところ触らないで? ダイヤ……」

「それって、どこのこと?」

構わず、『僕』はユニゾンジュエルのスクール水着に手を這わせる。さしもの星装少女もいかがわしい悪戯には委縮しつつ、敏感そうに色っぽい吐息を散らした。

(この調子なら何をされても……)

間もなくレース開始のピストルが鳴る。

花組の『僕』らもロープを掴んで、水面をかき分けた。ほかのチームも勢いよくスタートダッシュを切り、早くも一位争いにもつれ込む。

後ろのカラットが前へ前へと押してきた。

「行くわよ、ジュエル!」

「え、ええ!」

 しかし前のジュエルはタイミングをずらし、スムーズな前進を阻む。

 先頭と最後尾の仲間はそれに気付かず、苦悶した。

「なんか重いわよ? もっと押して!」

 カラットとジュエルの力はちょうど『僕』の位置で拮抗する。

(や……やばいぞ?)

 そのせいで『僕』のモモモがスクール水着越しに、ジュエルのお尻に挟まってしまったのだ。後ろに逃がそうにも、カラットがさらに押してくる。

「どうしたのかしら? ダ、イ、ヤ」

「んはあっ、ダイヤの……そ、そんなに擦りつけちゃ」

 今になって『僕』は彼女たちの意図を察した。

 メグメグも以前、闇堕ちのパワーは『僕』自身の射×で減退する、と話している。そのため『僕』もまめにヌき、突発的な闇堕ちを抑えていた。

 つまりヌかせることで、彼女らは『僕』の闇堕ちを相殺できる。

「覚悟はいいわね? ほら、ほらあっ!」

「あぅ? ま、待って……これ、ほんとに来ちゃうってば!」

「我慢しないで。私もっ、んあぁ、頑張るから……!」

 すでに『僕』のモモモは女の子だらけの水泳大会で興奮しきっていた。それが圧力のうねりに飲まれ、焦燥感とともに痺れつく。

 しかも『僕』の背中にはカラットのふくよかな巨乳が乗りあげた。手前のジュエルもしきりに腰をくねらせて、『僕』にお尻をぶつけてくる。

(ユニゾンカラットとユニゾンジュエルが……こんなの、気持ちよすぎて……!)

 大好きなアニメの星装少女たちと、風紀違反のスキンシップ。心にも身体にも直撃を受け、『僕』はレースを忘れてしまった。

 それでも抵抗のつもりで、ジュエルの巨乳を鷲掴みに。

「ひゃあっ? だ、だめったら……くふぅ!」

「そっちがその気なら、はあ、僕だって……こうだぞ? ジュエル」

 半透明のスクール水着越しに揉みしだき、柔らかさを堪能する。

 カラットも躍起になった。

「耐えるのよ、ジュエル! あと少しでダイヤも……」

「はあっ、早くして? ダイヤ、んっ、ヌキヌキしなさぁい!」

(ひい~~~っ!)

 だが幸いにして、先頭と最後尾のメンバーが奮闘し、花組をゴールへ導く。

大慌てで『僕』は挟み撃ちから脱出し、プールサイドへ上がった。

「はあ、はあ……まさかユニゾンヴァルキリーが、そんな手で来るなんてね……」

「勘付かれちゃったか……まあいいわ。騎馬戦で決着をつけてあげる」

 モモモの貞操を巡って、『僕』たちは火花を散らす。

 変身中のスクール水着はフィールドを張っているせいで、股間の膨張が圧迫され、苦しかった。一応、スクール水着の水抜き穴から逃がすことはできる。

 しかし露出はさすがに尻込みした。一線を超えたら最後、変態の二文字はユニゾンヴァルキリーではなく『僕』の称号となる。

(考えたな、カラット。……いや、ジュエルかチャームのアイデアかな?)

 だからといって席を外し、下手にヌいてしまっては、『僕』は闇堕ちの力を失うだろう。すべての魔法が切れ、主導権は星装少女たちに奪われる。

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