第178話

 定期試験もつつがなく終了し(苦戦はしたが)、あとは夏休みを待つだけ。

 そのタイミングで大々的に催されるのが水泳大会だった。『僕』はプールの授業で指導補助を担当していることから、全学年の大会に席を設けられる。

 まずはC等部から。

「位置について! よーい、どん!」

「きゃ~!」

クロールや平泳ぎのレースは当然、どのクラスも体育会系のエースを投入し、凌ぎを削った。白熱のレースに歓声が巻き起こる。

 屋内プールでもガラス越しに夏の陽光に晒され、水面がきらきらと波を打った。

 試験明けの解放感もあって、女の子たちは和気藹々とはしゃぐ。

(びしょ濡れだなあ、みんな……)

 そんな中、『僕』は彼女らのスクール水着をじっくりと吟味していた。

 スクール水着はビキニのように曲線を強調しないため、かえって本来のボディラインがくっきりと浮かびあがる。スクール水着を制服にという奇抜な方針も、スタイルの維持には貢献しているらしい。

 胸はぺったんこでもお尻はぷにっとした女の子や、やや筋肉質で立体感のある女の子、脚のラインが綺麗な女の子など。眺めているだけで『僕』の男心は癒された。

 闇堕ちの影響だろうと構わない。『僕』はスクール水着に親しみを抱きつつある。

 サマーベッドで寛ぎながら大会を見守っていると、スクール水着仕様のメイドたちが世話を焼いてくれた。紺色のスクール水着と純白のエプロンのコーディネイトが、大胆なようで奥ゆかしい色気を醸し出す。

「王子様ぁ、もうじき出番でいらっしゃいますよぉ?」

「ありがとう。そろそろ行こうかな」

 C等部・三年の水泳大会では、三年空組の『僕』にも出番があった。

 くんずほぐれつのトレインレース(電車ごっこ)で、女の子たちと夏を満喫。

「空組だけずるーい! 王子様、星組にも混ざってえー?」

「次は月組よ? 王子様」

 プールの中でこそ、女の子たちは『僕』に熱烈なアプローチを仕掛けてくる。『僕』のほうも抵抗を諦め、両手の花をとっかえひっかえ。

(認識阻害で負担を掛けてるし、合わせないと……だもんね)

 おかげでモモモは元気いっぱいだった。

「王子様? 早く上がらないと次の競技、始まっちゃうわよ?」

「ええと……賢者に転職できたら、すぐ行くよ」

 女学院のプールは誘惑だらけ。


 K等部の大会も三年生、一年生の順で催される。

 ひとつ歳が違うだけで、女の子たちのアプローチはより過激になった。スクール水着仕様のメイドたちもサマーベッドへよじ登り、『僕』にすり寄ってくる。

「ち、ちょっと? くすぐったいって」

 しかも真正面からは別の女の子が、水着越しに『僕』のおへそをぺろぺろ。

「C等部生じゃ満足できないでしょ? 王子様ぁ」

「メイドの係は争奪戦だったのよ? ほんと果報者なんだからあ」

 休憩中にプールから出るのも、一度や二度ではなかった。

「こんな調子じゃ、また闇堕ちしちゃうぞ? しっかりヌいとかないと……はぁはぁ」

 おかげで今のところ、暗黒の力は安定している。

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