第174話
やがてゲーム開始の時間となる。
『それではドキドキ☆スクール水着でサバイバルゲーム、スタート!』
あえて『僕』は少数の精鋭を連れ、K等部のグラウンドへと打って出た。
『僕』の姿を見つけ、敵チームの女の子たちが声をあげる。
「いたわ! 王子様!」
早くも『僕』の作戦通りの展開となった。
リーダーの『僕』が前進と後退を繰り返すことで、敵チームに揺さぶりを掛ける。そして『僕』を追いかけてきた分は、待ち伏せ戦法で迎撃。
「今よ、みんな! ええーい!」
「しまった? 退却よ、たいきゃ……ひゃあっ!」
勇み足を踏んでしまったK等部の面々は、四方から射撃を浴びる羽目になった。
こちらの作戦が功を奏し、K等部生にリタイアが続出する。
「やるやないの、そっちも」
ところが敵チームのリーダー、胡桃も早々と姿を現した。ターゲットを前にして、こちらのメンバーは一斉に前のめりになる。
「胡桃先輩だわ! あのひとさえやっつければ、私たちの……」
「ま、待つんだ!」
作戦を立てるのは敵も同じこと――それを直感した時には、遅かった。
「撃てーッ!」
「き……きゃあああっ?」
前方の仲間から怒涛の射撃に晒される。
敵チームは水鉄砲を全開にして、射撃をまったく躊躇わなかった。タンクの中身をみるみる減らしながらも、勢い任せに戦線を押し込んでくる。
「第二隊、前へ!」
号令を発しているのは紫苑だろう。
(そ、そうか! 敵は胡桃ちゃんだけじゃないんだ)
敵チームは弾切れとなった第一隊を下げ、タンクが満タンの第二隊を前に出す。
いわゆる『長篠の合戦』で有名な三段構えの布陣だった。後方に水場を置いて、射撃を継続しつつ補充もこなす。
「さすがに一筋縄じゃいかないか……後退して、立てなおそう!」
足並みを乱されないうちに、『僕』たちはC等部の本舎まで引き返した。紫苑のほうも深追いはしてこず、睨みあいに陥る。
「こっちも補充しまくって、火力を維持するのはどう?」
「補充を意識しすぎても、まずいんじゃない?」
じきに胡桃や紫苑は次の手を打つはず。うかうかしてはいられなかった。
だがゲームとは別に、むらむらとした感情が込みあげてくる。
(僕も水鉄砲で女の子のスクール水着に、びゅって……)
スクール水着は濡れてこそ。濡らしてこそ。
「守りに入ったら、もう防ぎきれないよ。ガンガン攻めよう!」
情欲まみれの提案とはいえ、C等部の皆は気持ちをひとつにしてくれた。
「それよ、それ! 一点突破ってやつ?」
「私も正しい作戦だと思うわ」
悔しいが、K等部生のほうが一枚も二枚も上手なのは否めない。
しかし総合的な攻撃力は互角のはずだった。下手に策を弄するよりも、真っ向勝負に持ち込む――そこに『僕』は光明を見い出す。
また『僕』の中で悪魔が囁いた。
「……みんな、スクール水着じゃなくって足を狙うんだ」
「え? 靴を?」
「ううん。まあ騙されたと思って」
恐るべき作戦を閃く。
再び『僕』たちは歩を進め、K等部生のチームと相対した。物陰を駆使して、サバイバルゲームならではの攻防を繰り広げる。
「向こうもなかなか出てこな……あっ、王子様?」
「任せてっ!」
敵の射撃が途切れた隙を狙い、『僕』は地面を転がるように走り抜けた。ひっきりなしの射撃は正確無比に敵のフトモモやくるぶしを濡らす。
スクール水着を狙えたにもかかわらず。
「きゃっ! んもう、やられ……?」
「や、やだ! これ……」
女の子たちは次々とスクール水着のデルタを押さえ、顔を赤らめた。
暑い中で冷たい水による、下半身への奇襲。その刺激は『僕』の魔法で増幅され、彼女らに一種の悪寒――性急なトイレへの欲求をもたらす。
無理に我慢するせいで、彼女らは動くに動けなくなった。
悠々と『僕』は近づき、スクール水着のクロッチに水鉄砲を添えて、発射。
「隙だらけだぞ? どうしたのかなあ~」
「くふうっ?」
トイレを我慢している最中に、よりによって股座を濡らされ、女の子たちはリタイアどころでもなくなる。かくしてK等部のフォーメーションは乱れ始めた。
「お、お花摘みに行かせて~!」
「どうしたの? ちょっと、何が……きゃあっ?」
一方、C等部は破竹の勢いで進軍を続ける。
「足を狙うのよ、みんな!」
「とどめはこうでしょ? 王子様」
K等部生は水鉄砲を構えてもいられず、必死にスクール水着のデルタを押さえた。
容赦なしに『僕』たちは敵のお尻に水鉄砲を差し込む。
「あの子たち、変なとこばかり狙ってくるわよ? 気を付けて!」
「行け行け~!」
反撃による消耗もあったが、『僕』たちは敵チームの本陣にどんどん迫った。
ついに紫苑の部隊が出張ってくる。
「思った以上にやるじゃないか。まさか……(魔法を)使ったんじゃないだろうな?」
図星を突かれてしまった。しかし彼女を倒すための作戦はすでにある。
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