第171話

 体育倉庫の扉が閉ざされる。

 放課後、『僕』はK等部にて拉致されてしまった。

「あ、あのぉ……四葉ちゃん? 僕、これから調理部に……」

 『僕』を跳び箱の上に座らせ、四葉と茉莉花はチア部のスタイルで並び立つ。

「ヌいてから行けばいいじゃないの。ねえ? 茉莉花」

「うん。私たちも頑張って、そ、その気……に? させてあげるから」

 ふたりとも純白のスクール水着にミニスカート、あとはシューズだけ。アニメさながらのプロポーションをくねらせながら、左右対称にポンポンを揺らす。

「始めるわよ。ゴー・ファイ・ウィン!」

「ゴー・ファイ・ウィン!」

 むっちりとしたフトモモがミニスカートを押しあげた。

 軽快なポンポンに合わせて、巨乳も弾む。

(――ッ!)

 まさしく『僕』のためのチアだった。スクール水着のクロッチを見せつけては、ふたり一緒に息を荒らげる。しかも甘い声でオニャニャーの催促まで。

「んはあっ、レッツ・ゴー! ヌキヌキ!」

「ファイ・オー! ヌキヌキ!」

 スクール水着の女の子に『ヌキヌキ』などと応援されてはたまらない。チアガールの扇情的なダンスに釘付けになりながらも、『僕』は必死にモモモを押さえ込む。

「ほらほら、どうしたの? オカズにするんじゃないの?」

「そ、そんなこと言われても……ちょっと待って?」

 むらむらと獣欲が込みあげてきた。

 このままではむしろ闇堕ちする――それを直感し、『僕』は体育倉庫を飛び出す。

「あっ? 王子くん……」

「ごめん! ちゃんとひとりでヌくから!」

 その夜はもちろん自分の部屋で、レッツ・ゴー・ヌキヌキ。


 ところがセルフはぁはぁの真最中に出動の要請が入った。

「こ、このタイミングで?」

『僕』はスクール水着(女子用)に着替え、ユニゾンダイヤに変身する。

 また闇堕ちバージョンになってしまったものの、パワーは十二分に漲っていた。飛行も可能となり、U市の夜空を高速で突っ切っていく。

次元サークルの出現ポイントへ、ほかの星装少女たちも駆けつけた。

「街のほうは私とカラットで守るわ。ダイヤはアントニウムを」

「うん。頼んだよ、みんな」

 これまでとは役割が逆転し、『僕』は攻撃に、カラットやジュエルは防御にまわる。ユニゾンブライトも首輪のせいで力を発揮できず、眉を顰めた。

「グランヴェリアのエネルギーまで……いつになったら外れるんだ? この首輪は」

 一方、ユニゾンチャームは首輪がないおかげで平然としている。

「うちに任せとき。来たで、ダイヤ!」

「僕から攻めるよ! チャームちゃんは死角にまわって、コアを!」

 開きつつある次元サークルを見据え、『僕』とチャームは同時に動き出した。

 前回と同じ戦法では、また読まれてしまう恐れがある。そこで今回は先に『僕』が仕掛け、アントニウムを揺さぶる。

「ミョルニール! 行けっ、コルドゲヘナ!」

 青白い冷気を集め、『僕』のハンマーは氷塊と化した。

 その一撃がアントニウムの左半身を瞬く間に氷漬けにする。

「氷の力? あれがダイヤの……」

「だんだんわかってきたぞ。チャームちゃん、今だ!」

 間髪入れず、無数の弾丸がアントニウムの右半身を巻き込んだ。

「ウチのレゾナンスキューブを甘く見んといてや? プリズムバレッジ!」

 ユニゾンチャームの操るいくつもの球体が、全方位に魔弾をばらまく。さらに『僕』がミョルニールを叩き込むと、さしものアントニウムも悶絶した。

 一発の大きさは『僕』、手数の多さはチャーム。コンビネーションの相性がよく、あとは勢い任せに押していける。

「コルドゲヘナ!」

「これで終いや! プリズムバレッジ!」

 ふたり掛かりの猛攻を受け、ついにアントニウムは消滅した。

次元サークルも閉じ、街は夜の静寂を取り戻す。

「ダイヤ、ダイヤっ!」

「あ、うん」

 『僕』とチャームはハイタッチで勝利の喜びを分かちあった。

しかしカラットやジュエルは不満の色を浮かべる。

「確かに街は守れたけど……出番がないっていうのも、ねえ?」

「ダイヤの力も成長してるみたいね。星装少女として……もしくは……」

 ブライトは早々と踵を返した。

「アントニウムは殲滅できたんだ。基地へ戻ろう」

 それをチャームが茶化す。

「ごめんなー? ウチとダイヤ、相性抜群で」

 その言葉にはカラットもむっとした。

「あなたは首輪がないから戦えるってだけでしょ? チャーム」

「そーいうんやないで。ウチ、最近はちょくちょくダイヤと一緒に遊んでるし~」

 実のところ、相性のよさはバトルスタイルに限らない。

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