第167話
どうやら『僕』には星装少女としての力も残っているようで、体内では自浄作用が働いていた。暗黒の力もグラフのうえでは一応、安定しつつある。
「この調子で暗黒の力を順応させちゃえばいいのよ。幸い、効率のよさそうな手段も見つかったわ。……その手段ってのが、ちょっと……問題ではあるんだけどね」
何のことやら、とカラットやジュエルは顔を見合わせた。
「どうすればいいの?」
「ええっと、つまり……あれよ、あれ。……エッチなこと?」
当事者の『僕』はあんぐりと口を開く。
「……へ?」
メグメグは自棄にもなって、一気にまくし立てた。
「ダイヤがエッチな悪戯してるうちは、闇堕ちの波も穏やかなのっ! 特に射×したあとは暗黒の力が一気に減退するのも、確認できたわ」
「しゃっ……」
『僕』のプライバシーが赤裸々に暴露される。
けれども心当たりはあった。今までにも『僕』は闇堕ちの影響で過剰に興奮し、暴走している。その暴走も、射×することでひとまず落ち着いた。
俗にいう『賢者モード』だろう。
「とにかくダイヤのパワーでアントニウムを撃退ってのは、もう決まったことだから。カラットとジュエルはちゃんと相手したげるように」
「えええっ? ほっ、本気で言ってるの? メグメグ」
とんでもない命令にカラットはぎょっとする。
ジュエルのほうは戸惑いながらも、メグメグの言葉に頷いた。
「けど、確かに……私たちが発散させてあげないと、学院の生徒が……」
ユニゾンブライトも動揺を隠せない。
「そそ、そういえば、お前は男の子だったんじゃないか! 魔王の力でL女学院を我が物にしようなどと、し……信じられんやつだ」
「誤解だってば! あれは闇堕ちしたせいで、その……」
またモニターの映像が切り替わり、七課のミルミルが荒れる部下を宥めた。
『ブライトとチャームはアントニウムとの戦闘以外、関与しなくても構いませんわ。カラットとジュエルがその子を満足させてくれるはずですもの。……まあ? おふたりにそこまでの魅力があれば、というお話でしょうけど』
「ど、どういう意味よ? それ!」
ユニゾンカラットはまんまと挑発に乗せられ、意気込む。
「いいわよ。ダイヤのことは私とジュエルが責任を持って、暴走させないんだから!」
「えっ? カラット、私も一緒……なの?」
ジュエルは困惑する一方で、ユニゾンチャームはにやりと唇の端を曲げた。
「ええのかなあ? ブライト~。戦闘では役に立てず、ダイヤのお世話もせず……最強のユニゾンヴァルキリーゆぅても、大したことあらへんなあ~」
さしものブライトも痛いところを突かれて、一度は言葉を飲む。
「……ミルミル司令の指示だ! 私とチャームはその件に関与するつもりはない」
そして声を荒らげると、司令室を出て行ってしまった。
ブライトの頑なな態度にカラットたちはむっとする。
「な、何よ? さっきの……あんなふうに言わなくったって」
「気にすることないわ、カラット、ダイヤも。私たち六課の問題だもの」
おかげで、当事者の『僕』は六課と七課の間で肝を冷やす羽目になった。
(大変なことになっちゃったぞ……?)
未だに六課に対抗意識があるらしいミルミルの発言もまずかったが、面白半分にブライトを焚きつけたチャームも悪い。
そんなチャームがころっと責任を認める。
「あっちゃ~、今のは言いすぎてもうたかな? ごめんな、カラット、ジュエル。ブライトにはウチからフォローしとくから」
「え、ええ……」
チャームの瞳が『僕』にだけウインクで合図した。
「ダイヤも来てー。こんな調子じゃ、一緒に戦えへんやろ?」
「うん。僕も行くよ」
『僕』はチャームとともにダイヤを追いかけることに。
☆
暗黒城の牢獄にて、ユニゾンブライトはもう数時間も吊りあげられていた。
勇敢な星装少女とはいえ、パワーを吸収されては戦えない。虎の子の魔剣グランヴェリアも敵に奪われ、丸腰だった。
邪悪に染まりきったユニゾンダイヤが、ブライトの白いスクール水着に手を這わせる。
「手こずらせてくれたじゃないか、ユニゾンブライト。ふふ……」
「さ、触るな! 貴様を信じた私が馬鹿だった……見損なったぞ、ダイヤ」
たとえ敗北を喫しようと、心まで屈したつもりはない――ユニゾンブライトは強靭な精神力で奮い立ち、闇の星装少女を睨みつけた。
「ジュエルはどうした? ……まさか、貴様……」
「焦らないでよ。まずは君にお仕置きしないと……そうでしょ? チャームちゃん」
ところがダイヤの背後からユニゾンチャームが現れ、ブライトを驚愕させる。
「な……っ? チャーム、なぜお前が」
「まだ気付いてへんわけ? ウチはダイヤについたんや」
あるはずのない仲間の裏切り。その時、ブライトはすべてを悟った。
「ダイヤ……貴様、いつから闇堕ちを……?」
「さあ? 初めて会った時から、かもね」
ユニゾンブライトのスクール水着へダイヤが手を差し込む。
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