第165話

 『僕』が着せた、とは考えが及ばないようだった。

(さっきの魔法だ……じゃあ、僕が無理やり?)

 闇堕ちの力が彼女らのスクール水着だけ変身させたらしい。スペアであれL女学院のスクール水着でさえあれば、ユニゾンヴァルキリーに変身はできる。

「みっ、みんな! 今は授業中だよ」

「はぁーい」

 女子は練習に戻るも、ちらちらと四葉たちの様子を窺っていた。

「さてはキミ、魔法で……」

「さ、さあ僕らも! 平泳ぎのフォームを確認するから、そっちに掴まって」

 ふたりに追及されないうちに、『僕』も指導にまわる。

 四葉と茉莉花は恥ずかしがりながらも、プールの端に掴まった。そして後ろの『僕』に向け、おずおずと脚を広げていく。

「あ……あんまり見ないで? 変なとこ……」

 茉莉花が『変なとこ』と遠まわしに主張するのは、スクール水着のクロッチ。白い股布は乙女の聖域こそ幅広に覆っているものの、フトモモの付け根は丸見えだった。

 それでも授業は授業、ぎこちなく平泳ぎの動きを始める。

(――ッ!)

 『僕』の中でまた獣が吼えた。

無意識のうちに『僕』は四葉の股座に顔を埋め、お尻を引っ掴む。

「ちょっと? やだっ、キミ……離れなさいったら!」

「手伝ってあげてるんだよ。ほら、ちゃんと平泳ぎしないと……むぐっ、んむう」

「~~~っ!」

 さしもの四葉も狼狽し、赤面してしまった。しかし『僕』の予告めいた警告に恐れを成したのか、懸命に平泳ぎのフォームに勤しむ。

「あ、あとで憶えてなさいよ? このぉ……あっ、あふ?」

 むっちりとしたフトモモが『僕』の顔を挟むように按摩した。

(たまんないよ、これ……もう我慢なんて!)

 それだけに留まらず、『僕』は水中で四葉の巨乳へ手を忍ばせる。

「ひゃあん! こらっ、やりすぎ……授業中でしょ!」

 まさかの三点責めにさしもの四葉も色悶え、いやいやとスクール水着の身体をのたうたせた。そのマゾヒスティックな抵抗ぶりに、かえって『僕』の嗜虐心は触発される。

「次は茉莉花ちゃんだぞっ!」

「ま、待って! ちゃんとしてるでしょ? 平泳ぎ……あっあぁ?」

 茉莉花は必死に平泳ぎをアピールするも、『僕』は止まらなかった。容赦なしに彼女の股座にも顔を押しつけ、スクール水着のヒップラインを掴む。

 そして柔らかいフトモモを顔面で堪能したら、手をもっと前のほうへ。

「へぇあっ? こんなの、恥ずか……やっ、んぁあ!」

 茉莉花はプールの端に掴まってもいられず、水面に浮いた。『僕』の顔と両手で浮き身を支えられ、動くに動けない。

 ほかの女子は『僕』らのスキンシップを目撃し、いきり立った。

「あ~! やっぱり四葉さん、王子様をたぶらかす気満々じゃないの!」

「違うってば! 被害者は私……ちょっ、こっち来ないで?」

 四葉も茉莉花もお姉さんぶっていられず、『僕』の悪戯に色っぽい声で喘ぐ。

 だが――『僕』の暴走はここまでだった。『僕』のスクール水着が闇堕ちの魔力を受けてか、圧力を波打たせる。

(うっ? あ……だだっ、だめだめ!)

 それを感覚した時には、もう遅かった。女子がいっぱいのプールの真中で、『僕』はエクスプロードをかましてしまう。

幸いにして、爆発は自分のスクール水着の中。

「ア、アアア……」

 悪戯の手を止め、『僕』は真っ青の表情で縮こまった。

突然の『僕』の不自然な時間停止に、四葉と茉莉花は首を傾げる。

「……どうしたの? キミ」

「えぇと、その……で、出ちゃったみたいで……」

 へっぴり腰の姿勢で股を押さえつつ、『僕』はすごすごとプールサイドまで後退した。

 むしろ恋人のお姉様たちのほうが、魔王みたいに酷薄な笑みを浮かべる。

「そぉーなのー? ふぅん、プールの中で……私のスクール水着をオカズにして?」

「プールを汚しちゃったってこと? なら、お掃除しなくちゃ……」

「あっ、ああ……ア~~~ッ!」

 因果応報の報いを受ける時が来た。

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